日本財団 図書館


従って、論理的に言えば、上記の契約において当該電子式船荷証券の「荷送人」は、紙の船荷証券における荷送人の義務と同様の義務を同様の時期まで負担する旨規定しておくのが、もっともあっさりした方法です。

4.では、電子式船荷証券のシステムにおいて、規定がない場合、2.で述べた従来の船荷証券における荷送人の上記各種の義務について定める条約・法令の規定はどのように適用されるでしょうか。

その場合は、当該条約・法令が、凡そ荷送人一般に対して適用可能な形で規定されているか、紙の船荷証券が出る場合の荷送人に対してのみ適用される形で規定されているかにより、電子式船荷証券への適用の有無を異にすることになります。

わが国の国際海上物品運送法は、船荷証券の有無を問わず、「国際海上物品運送」全てに適用されますから(第1条)、同法における荷送人の義務は電子式船荷証券における荷送人であっても、およそ荷送人である限り14適用されます。これに対し、Hague Rules、Hague Visby Rulesでは、荷送人の定義はないものの、他方その規律対象を船荷証券(及びその他の権原証券)で表象される運送契約としています(Art. I(b))から、結局これらは適用されないと考えられます。Hamburg Rulesでは、荷送人の定義として、運送人と運送契約を結ぶ者又は運送契約に関連して貨物を実際に運送人に引き渡す者とあり(Art. 1, para. 3)、かつ運送契約の定義でも船荷証券との関係は切断されていますので(Art. 1, para. 6)、結局、そこでの荷送人の責任についての規定は、電子式船荷証券が出ている場合でもそのまま適用されると考えられます。

5.但し、たとえ電子式船荷証券における荷送人の上記各種の義務について定める条約・法令の規定がない(従前の船荷証券における荷送人のこれらの義務について定める条約・法令の規定が電子式船荷証券に拡張適用されない)場合であっても15、実務上大きな困難はないと考えられます。

というのは、第一に、電子式船荷証券の場合でもそこに規定ないし摂取される運送人作成の運送約款が当然存在する筈ですが(Q4-11-1参照)、運送人が、電子式船荷証券であることをいいことに、Hague RulesやHague Visby Rulesの原則とかけ離れた約款を作成・適用を図れば、荷主側に全く支持される筈がなく、そのような事態は、あまり考えられず、逆に、紙の船荷証券と同様に明確にHague RulesやHague Visby Rules準拠である旨、謳う場合が普通であろうと思われるからです。

 

14 同法の荷送人の定義は「(国際海上物品)運送を委託する傭船者及び荷送人」というやや同義反復的なものです。第2条第3項

15 4.で触れたように、Hague Rules、Hague Visby Rules体制の下ではそのような国がむしろ大半と思われますが

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION