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なお、電子式船荷証券につき、抽象的な規定を置く立法例は徐々にできています。英国のCarriage of Goods by Sea Act 1992が、政令により同法を電子式船荷証券にも延長適用することを定め得る旨の規定をおいている(S. 1(5))こと、後述の米国のCarriage of Goods by Sea Bill 1999(これはまだ法案ですが)が電子式船荷証券はそれにつき当事者の合意したルールにより規律されるべき旨の規定をおいていること (Sec. 2(5)(C))がその例です。

3.第二は、電子式船荷証券で表象される「運送契約」を規律する条約・法令の存否についてです。

現在、船荷証券で表象される「運送契約」すなわち、いわゆる個品運送契約を規律する国際契約としては、いわゆるHague Rules、Hague Visby Rules、Hamburg Rulesの三者がありますが、前二者は、その規律対象を明確に船荷証券(及びその他の権原証券)で表象される運送契約としています(Art. I(b))。従って、電子式船荷証券で表象される運送契約の場合は、電子式船荷証券が船荷証券そのものではない以上、その規律の対象外となります。これに対し、Hamburg Rulesの場合、その規律対象たる運送契約の定義が船荷証券と結び付けられていないので(Art. 1, para. 6) 、電子式船荷証券による運送契約にもそのまま適用されると考えられます。

国内法に目を移しますと、日本の国際海上物品運送法は、規律対象が「国際海上物品運送」全般としているため(第1条)、電子式船荷証券で表象される運送契約にも当然適用があります。さらに同法では、免責事由の制限等の同法の強行法規性(第15条第1項)が傭船契約の場合8には、排除されて特約自由とされていますが(第16条)、電子式船荷証券で表象される運送契約はこの場合にはあたりませんから、同法の原則たる免責事由の制限等の強行法規性も排除されません。

また、現在米国議会で審議中の法案であるCarriage of Goods by Sea Bill 1999は、従前のHague Rulesの国内法化立法であるCarriage of Goods by Sea Act 1936の改正案であり、その責任原則は、Hague Visby Rules、Hamburg Rulesの折衷のようなものですが、そこでは電子式船荷証券(で表象される運送契約)にも同様に適用される旨を明示しています(Sec. 2(5)(A))。但し、たとえ電子式船荷証券で表象される「運送契約」を規律する条約・法令が見当たらない場合であっても9、実務上は大きな困難はないと考えられます。というのは、第一に、電子式船荷証券の場合でも、そこに規定ないし摂取される運送人作成の運送約款が当然存在する筈ですが(Q4-11-1参照)、運送人が、電子式船荷証券であることをいいことに、Hague RulesやHague Visby Rulesの責任原則とかけ離れた約款を作成・適用を図れば、荷主側に全く支持される筈がなく、そのような事態は、あまり考えられず、逆に、紙の船荷証券と同様に明確にHague RulesやHague Visby Rules準拠である旨謳う場合が普通であろうと思われるからです。

 

8 正確には「船舶の全部又は一部を運送契約の目的とする場合」

9 Hague Rules、Hague Visby Rules体制の下では、そのような国がむしろ大半と思われますが。

 

第二に、さらに進んで、当該電子式船荷証券システム参加者間の包括的契約自体において、(当該システムの下で発行される電子式船荷証券に基づく)運送契約については、書面の船荷証券が発行されていれば強行的に適用されたであろう国際条約または国内法に従う旨規定してしまうことも考えられます。

因みに、1]前記CMI Rules for Electronic Bills of Lading (Art. 6)、及び、2]前記Bolero B/LのRulebook(3.2.(4))においては、何れも第二の趣旨の規定を有しています。他方、3]前記TEDIプロジェクトの場合、その法的な枠組を規定するTEDI共通規約も作成途上ですので、まだ何とも言えません。

 

 

 

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