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実は、電子式船荷証券の発行・流通・回収をめぐる法律関係を具体的に規律する国際条約、ないし国内法が今のところないのは、よく考えてみれば当然のことです。というのは、一口に「電子式船荷証券」といっても、今のところ、種々の方式が考えられその内容は一義的に決まるものではないので(つまり規律対象自体が具体的に固まっていないので)、規定の作りようがないからです。

昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lは、あくまで電子式船荷証券の先駆的一例であって、まだこれが唯一無二の方式と決まった訳では勿論ありません。まだ開発途上ですが、わが国でも、通産省の予算事業である国産の電子式船荷証券プロジェクト6として、いわゆるTEDIプロジェクト7が進行中です。

しかし他方、電子式船荷証券も世界的流通を予定する以上は、何らかの一定の規律が必要です。従って、紙の船荷証券のように「殆ど全ての国で、細かな内容の差こそあれ、その発行・流通・回収をめぐる法律関係を規律するものがあってそれに依拠できる」という状態にならない限りは、その発行のための実際的前提は、結局、その法律関係(電子式船荷証券の発行・流通・回収のシステム)を、船会社・荷主・金融機関等の参加者、そして電子式船荷証券のシステムの設営・運営者との間であらかじめ取り交わした包括的な契約で規律するということ(その合意に則って電子式船荷証券が発行されることにすること)になるでしょう。

その意味で、1]かつて1990年に、万国海法会(CMI)が抽象的な電子式船荷証券の発行・流通・回収のメカニズム(換言すれば電子式船荷証券における関係者の権利義務関係の抽象的モデル)としてCMI Rules for Electronic Bills of Ladingを制定し、それが、関係者が同規則の適用に合意した場合に適用するという建前をとっていること(S.1)、2]前記Bolero B/Lが、参加者にまずそのRulebookへの署名を求め、電子式船荷証券の発行・流通・回収をめぐる法律関係をそれにより規律するものとしていること(厳密に言いますと、Bolero B/Lでは、それへの参加者即ちBolero International Ltd.によるBolero B/Lというサービスを利用することを欲する船会社・荷主・金融機関等は、前提として、参加者の会員組織であり、かつ参加者全員を代表するBolero Association Ltd.との間でこのRulebookへの拘束に同意するという形態をとります。)、3]前記TEDIプロジェクトが、そこに適用される共通の規約としての「TEDI共通規約」を構想・策定中であること(現在のところ、それはTEDI Interchange Agreement、TEDI Repository Service Terms and Conditions、TEDI Electronic Signature Service Agreementの3種からなることが想定されているようです。)は、いずれも必然的であると思われます。

 

6 正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト

7 「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト

 

 

 

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