4-10.律する条約・法令等の有無
Q4-10-2:電子式船荷証券による運送契約の準拠法はどのように判断されますか。
1.そもそも、運送契約に限らず凡そ国際的契約の場合に、その準拠法をどのように判断するかということは各国の国際私法上の大問題ですが(ということは、実務的にはそれ自体しばしば前提問題として激しい争いの対象となりますが)、現実に締結される国際的契約の多くは、その問題(争い)を避けるため、準拠法を明文で指定しています。船荷証券で表象される運送契約でもそれは同様であり、多くの場合、裏面約款で運送人の本拠地国法が指定されています。
この理は、電子式船荷証券による運送契約の準拠法においても同様であると思われます。具体的には、Q4-11-1をご参照下さい。
2.なお、誤解のないように補足しますと、「運送契約」それ自体の準拠法と、電子式船荷証券を発行する前提となる、電子式船荷証券システムの設営・運営者及びそれへの参加者(船会社・荷主・金融機関等)との間の参加契約の準拠法は別次元の問題です。後者は、電子式船荷証券を実現するために、参加者相互間で船荷証券の発行者及び各所持人間とほぼ同様の法律関係を実現するために締結されるもの、換言すれば、電子式船荷証券の「船荷証券」的性質、すなわち、その発行・流通・回収をめぐる法律関係を規律する契約であり、電子式船荷証券で表象される「運送契約」を規律する契約ではないからです。
具体的に言えば、たとえば昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lでは、参加者に対して、そのRulebookへの署名を求めており、その準拠法は英国法とされていますが(2.5.(2))、これはあくまで後者の問題であり、そのシステムの中で発行される電子式船荷証券で表象される運送契約が全て英国法準拠となるということでは全然ありません。
また、現在通産省の予算事業として進行中の国産の電子式船荷証券プロジェクト10であるいわゆるTEDIプロジェクト11においても、TEDI共通規約に属する各規約で、何らかの準拠法の約定は当然おかれると予想されますが、これも後者の問題です。むしろ、TEDIプロジェクト(開発の暁にはTEDI B/L?)の中では、各運送人の約款の登録・更新もシステム内で行うことが予定されており、当該登録約款中の準拠法が、前者の問題つまりTEDI B/Lでカバーされる「運送契約」の準拠法ということになります。
10 正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト
11 「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト