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● 造船業としてのアピールの必要性

造船業は、戦前からの世界に冠たる高度な技術を背景に、戦後は日本の産業発展に多大なる貢献をした産業であるという認識は、これから社会を担う世代には次第に薄れつつあり、むしろ汚れ仕事などのいわゆる3K、あるいは不況産業の代表のようなマイナスのイメージが強く、従来から造船業の有する重要性、例えば、物流の一翼をになう船の持つ社会基盤性、震災や紛争時などの非常時のライフラインなど、いわゆるプラスのイメージは伝わりにくい。まず、負のイメージを払拭し、造船業としてのプラスをアピールし続けることも必要である。これには、業界の協力や数社で纏まって当たるなど、また単発には留まらない持続性も必要である。

例えば、第3世界の国々から望まれる船を利用した図書館や水族館を建造し、各地域を巡回することなど、広く世界の教育活動に貢献することなどが考えられ、これらの活動を通して日本の造船業ひいては日本のアピールに繋がるものと思われる。

● 人材確保・育成

若い世代が危険、汚い、きついといういわゆる3Kを嫌うような傾向があり、このために造船業も若い人が集まらない環境にあると言われている。また採用された新人の定着率の悪さが指摘されこの根本原因の把握が求められる。

また、鐃鉄のように曲げ加工の技能を有する人材は、現在高齢化しており、特に曲げのきつい部分での技能者が定年を迎えつつある。この職種の人材の養成には10数年程度の年月を必要とするとも言われ、若い世代への技能継承は難しい状況にある。

従来のような徒弟制を基本とした一社で養成するには手法としても、時期としても限界に来ており、このための新たな方法が求められていると考えられる。

例えば、インターネットを利用した通年に渡る公開公募、人材の育成を業界全体の問題として捉え、造船関連団体や業界としての養成、あるいは技能専門学校のような教育システムを作る必要もある。また、キャリアを積めば給与に上乗せされるようなモチベーション(動機付け)が持てる技能として造船の各種技能を定着させる必要もあり、そのための技能認定制度のような技能評価、それに対応した基準給与システムの構築も一法であろう。

(第4章4.4.5マルチメディアを活用した教育システムの構築P-72参照)

以上のような問題解決法の一助として、情報ネットワークの利用が考えられ、これを後節(5.3.4)に述べる。

 

 

 

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