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4.4.5 マルチメディアを活用した教育システムの構築

一方では、高齢化に伴う技術・技能の喪失とこれらを継承する若手や中堅の雇用問題がある。造船業はその大半を技能職に依存している。技能工、特にぎょう鉄加工に従事してしている技能者には高齢者が多く後継者の育成が重要な課題となっている。

新規に若い人材を採用しても、造船のような熟練を要する仕事には若者はなかなか定着してくれないという問題がある。

後継者が育たない要因として、

1] 造船の技能者を育成する教育・訓練機関がないこと

2] 造船の技術や技能者の育成には長い年月がかかること

3] 熟練を要する作業には職人気質な者が多く教え方が不慣れであること

4] 年齢差による意見の不一致

などがあげられる。

大学における造船工学の教育内容が造船そのものだけではなく輸送工学や海洋工学といったシステム工学的な方面に範囲を拡げてきており、製造に関する技術・技能的な教育が淡白になってきている。製造にとっては重要であるこのような技術・技能の教育を補完し、育成する教育機関あるいは養成センターが必要となってきていると思われる。建築の業界では多岐にわたり資格制度がしっかりできているが、造船はほとんどが資格がない業界である。一定の教育機関などで所定の技量を修得したものには、少なくともそれに見合う賃金システムを社内制度として取り入れられれば技術・技能者の育成期間の短縮につながる。また個人の生涯教育と併せて企業そのものも技術・技能のポトムアップという効果を期待できることになる。

(第5章5.3.2企業体質の改善-人材確保・育成P-133参照)

今の若い人にこれをいくら求めても、かなりの無理があることを認識しておく必要があるのかもしれない。仕事を習得するのに時間がかかりすぎる。高齢化は加速的に進行していることを考えれば後継者が育成される前に熟練者がリタイヤということにもなりかねない。

最先端のマルチメディアを活用した教育カリキュラムで、短期間に技術者・技能者を養成できる教育システムの構築を提言する。

中小造船所においては、生産技術が重要視されていないところが多いと思われる。技術開発力が弱いという潜在的な原因の一つとなっている。例えば、自動車産業における金型の設計などは高度な生産技術者の仕事である。このような生産技術が備わってはじめて教育システムの構築も可能となってくる。

かつては技能の分野として位置づけされていた現図作業が、数値化されコンピュータ化された様に作業を細かく分析すれば他の技能の分野においてもシステム化が可能な部分があるはずである。コンピュータを活用したシュミレーションによる視覚的且つ対話的な予備訓練は教育の第一歩としてかなりの効果が期待できる。また、未経験者をいきなり現場へ配属し仕事の難しさに直面させるのではなくこの様な先端のマルチメディア技術を活用したシステムによる導入教育から始めることにより若者の興味を促すことにもなる。

 

 

 

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