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5.3.2 企業体質の改善

需要の喚起

現在のように中小造船各社で内航船市場でのパイを奪い合うのはもはや限界に来ており、業界として常に需要を待つ体質から需要を喚起する体質へ改善する必要がある。例えば海外での市場性の調査などが考えられ、対象として多島海の島々からなるフィリピン、インドネシアなどでの海運の状況、船舶の使用状況、必要とする船舶の規模、グレード、各国の物流システムと船の役割などを調査し、売り込みの方策としてどのような船なら海運業から買って貰えるのか、あるいはどの様な物流システムを構築すればどのような船が売れるのかなど、多岐に渡る調査を必要とするものと考える。さらにこのような調査を踏まえ、例えば日本の内航船クラスのグレードが高過ぎて売り物として成り立たない場合には、よりプリミティブな船舶を必要としている可能性もあり、その可能性がある場合には試設計も厭わないくらいの造船業界の活力も必要である。

また海外への進出には人件費の安価な国々からの競争もありうるが、外へ出ていって勝にはどのような方策があるのか、現在の船からも試算をする必要もある。

● 規制の緩和・撤廃

造船に関する規制の緩和ないし撤廃は、旧制度に起因する製造業者の不公平感の是正、あるいは近年の物流システムの変化から必要とする船舶の製造の障害の緩和、また次世代の物流システムをガイドするものなどがある場合には、国益の確保から迅速な処置が望まれる場合がある。

また、将来、需要の喚起に繋がる場合には、現行法・規制に留まらず、造船、海運を含めた法制度の見直しもやむなしといった覚悟で次世代の物流システム変革に向け対応する必要もある。

● 経営者意識の転換

長い景気の低迷に、あまりに現実の前途に悲観的になり過ぎ、また悩みが経営者自身の悩みに留まっているという弊害も出ている。

各社の利害関係を越え、意見交換から信頼関係を深め、この景気の悪いときこそ技術の向上、非効率の排除につとめるべきである。また一社でできない新市場の開拓などは、共同してあたるなど、新たな発想転換も必要である。

さらに一般に中小企業経営者のもつ良い点の一つである意思決定の早さがあげられるが、その長所を十分に発揮すべきである。

 

 

 

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