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4.4.6 設計部門の体質強化

設計図面や仕様書には、各種資機材の原価を左右する情報や、工期・工数に関わる重要な情報が織り込まれている。現業部門の外注依存度が高いのは、それなりの効果を得られているが、設計部の外注も現業を上回る高い比率を示している点に注目したい。

多くの製造業が特に重視する、コスト・品質・納期の3大要素に設計は密接に関与しており、かなり重要な情報が織り込まれているはずである。高速化、大型化の傾向にある高度化船、多様化する船主の要求に的確に旦つ効率的に対応していく上においても、今後、設計の重要性はますます大きくなってくるであろう。

各企業において設計外注の度合いは様々であるが、設計会社に製造原価のことまで要求することは難しく、造船所でなければ意識できないこの様な事項について細かく分析してみる必要があるのではないだろうか。現業の作業効率の改善を凌ぐコストダウンの要素を多分に包含しておりこれらの改善に着目し設計段階で改善を図ることは思わぬ効果をもたらすものである。これらのキーとなる部分の設計は少なくとも内製化を図るべきである。と同時に自社設計部門の技術のスキルアップを図っていく必要がある。

競争力の鍵を握るのは設計の技術力に依るところが多い。

新規に新造船を受注しても過去の実績船をモデルシップとして設計している場合が多いため、経営者は意外と設計部門の技術力の強化に対しては目が行き届いていない。

むしろ、中小の造船所や舶用メーカは大手のように多くの部門を持っていないため設計部門の作業は多岐にわたることになる。体質強化と作業効率化のためにもCAD化の推進は一考されるべき課題であると思われる。

中小規模の造船所とはいえども、比較的に多くの手持ち建造船を抱えている造船所は設計要員もそれ相応の陣容を配備されており、設計の効率化と技術情報の有効活用を図るためCADも積極的に導入されている。

一方で、設計には技術上のトラブルのみならず、納期遅延やコストアップの要因となるような潜在的なリスクが含まれることもあることを忘れてはならない。

規制緩和がさらに進行しますます競争の度合いを高める中、船主の多様な要求に的確にかつスピーディーに対応できる設計技術力と新分野・新事業開発資金力のある企業が生き残り、そうでない所はおのずと競争力を喪失していくことになろう。

外航・近海船においても、船員の人件費を削減すれば輸送コストで競争力がつくことになり船員が操作しやすいシンプルな操縦性に対する要望があるが、内航船における高度な自動化船というのは、建造コストが高い、従って運航コストが高い、また、操作が不慣れであるなど今一歩船主に対して信頼性を得るには至っていない点が検討課題として残されている。

造船所の方も船主や荷主力からいわれるとおりの船を設計するだけではなく海運業界や物流業界の状況をもっと熟知しこれらの業界と一体となって経済性の高い船舶の開発をしていかなければならない。

 

 

 

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