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(FIG.-28)

私たちは、今年さらに詳しい調査をこの地域で行う予定なのです。陸上のコーラウ火山と海底部分の岩石の相違を説明するために、いまのところ2つの作業仮説(working hypothesis))を持ってます。

これまでオアフ島のコーラウ火山の崩壊で出来たと考えられてきましたが、崩壊したのが実は1つの火山ではなく、その向こうに完全に失われてしまった火山が隠れていた。それは現在でいえば丁度マウナロワ火山の様な化学組成を持っている、そういう知られていないハワイの火山が別に在ったのだと、それが崩壊したというのが1つの仮説です。

 

それからこれはもっとおもしろい仮説ですけれど、実はハワイの火山と言うのは成長の間に例えばロイヒ火山に似たものからキラウエア火山の様な化学組成に変わって、さらにマウナロア火山の様な化学組成に変わって、場合によってはコウラウのような特別の化学組成に進化をしているとそういう事がもしかしたらあるかもしれない。アメリカではハワイ島のヒロでハワイ火山の深部ボーリングをやっています。将にこういうことが、有るかどうかを検証したいと言う事でやっていた訳ですが、我々はコウラウ火山というものに着目して、しかも、その深いところの地質調査をすることに拠って、それとは独立に、こういうハワイ火山の成長進化を検証出来る可能性ができたということで、これは非常におもしろい事になってきたというふうに思います。

 

(FIG.-29)

で、今のことを地図の上に纏めて見ますと、現在我々の採った岩石というのは、この程度の非常に狭い範囲に限られています。その中でも隣の火山から明らかに来たらしい岩石のブロックと、それから、こちらから来た岩石がどうもあるらしい。この部分は殆ど陸上と同じだけれども、これから向こうはどうも現在の陸上とはかなり違う、それがどう違うかを今年調べる訳です。それでさらに、これが崩壊したのが何時かというのが大きな問題です。今までは、コーラウ火山が活動していた約250万年前に一気に崩壊したという考え方だったのですが、どうも隣のもっと新しい150万年位前に活動していたモロカイ島の火山と、その流れの分布から見ると、コーラウ火山の崩壊の方がより新しい可能性が出てきました。大崩壊もし50万年前に起こった現象だとすれば、これからも起こる可能性もある訳ですから、いつ、どういうメカニズムでこういう大規模な山体崩壊が起こるか、ということを調べることは、人類の生存にとっても非常に重要な問題かもしれません。

 

(FIG.‐30)

ハワイの楯状火山にはプレートの上に最初に造られた火山、ロイヒという海山がありました。ロイヒはアルカリ玄武岩から出来ている、その後キラウエアとかマウナロアの様なソレアイト(tholeiite)の様な火山が出来る、ところが、ソレアイト(tholeiite)の火山毎には、キラウエアとかマウナロアとかそれぞれの特徴があって、それは火山の成長の間、保たれるというのが標準的なモデルだったのです。もしかするとそうでないということが、我々の研究から今後分かってくるかもしれません。

 

(FIGP‐31)

この様に非常に大規模な山体崩壊によって、深さ5000mまで露出した火山の切断面を詳しく調査することによってハワイ型の火山というものの、成長のモデルを詳しく造ることが出来るという可能性が出てきました。

で、そう言うことが出来ますと、最初の話の我々の興味に戻るのですけれど、マントルプルームというのは、一体どの様に火山を造って行くのか、ハワイの下では一体どういうものが、どういう順序で溶けているのかあるいは、マントルプルームの温度というのは一体どういうHistoryを辿っているかを次々と解明できる非常に貴重な資料になると思われます。それで、これはUSGSのJGムアーという人がこれまで調べてきた地図ですけれども、我々がこの間調べたのは、このオアフ島の崩壊したものです。もちろん、ムアーさんは古いもの程先に崩壊したという仮説で、こういう順序を書いていますけれど、もしかすると、そうでないかも知れないと言うことが、今、明らかになりつつあります。この様にハワイの火山というのは至る所で大規模な山体崩壊を起こしている。これがいつどういうメカニズムで起こるか、と言うことを調べて行くことは今後の海洋底調査の重要な一つの調査項目になるのではないかと思われます。

 

 

 

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