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また、先に述べたが、PFIの最大のメリットとして、官民のリスク分担が、あらかじめ明確になっているという点が挙げられる。しかし、PFI方式を採用すること自体がリスク分担を明らかにしてくれる訳ではなく、安易な債務保証の設定等により契約内容がリスク分担を適切に行っていない、あるいは、契約内容(特に契約単価)が実態にそぐわない不適切なものであった場合には、逆に当事者に従来の方式よりもより大きな負担を強いる可能性がある。

PFI方式が我が国で制度化されれば、地方公共団体、特に公共投資に多額の資源を必要とする大都市にとっては喜ばしいことかもしれない。しかしながら、今後、PFI方式による公共施設整備を考える場合には、この方式の採用によって、従来の手法と比べて本当に効率的に整備できたのか、負担が減ったのかなどがチェックできるような仕組みづくりが必要となろう。英国における事例を踏まえれば、事業費が一定以上の規模でないと、PFI方式のメリットが活かされないとの指摘もあるところである。

また、PFI方式と、既存の法体系との整合性、例えば、行政財産の民間利用に対する法的制限、あるいは民間事業者による公共施設整備に対する財政上の制約等については、国における検討を待たなければならない。

最後に、我が国の社会システムとの整合性について指摘しておく必要がある。PFI方式は、英国において実績を上げているPFI方式は、事前の厳格な契約を前提とするシステムであり、欧米社会の契約文化を前提としたシステムではないかとの指摘がある。我が国における社会システムや文化が、仮にそうでないものを前提としたものであった場合には、PFI方式の実効性が損なわれる可能性もあるし、逆にPFIのような手法を確実に運営するためには、これまでの社会システムを変革していく必要があるかも知れない。

 

II 大都市のリノベーション

 

1 我が国都市部における公共投資の現状と問題点

 

(1) 大都市における公共投資の現状

 

戦後の経済発展に伴い、都市への人口集中、市街地の拡大などの都市化が急速に振興してきたが、近年の人口の都市部への流入状況を見てみると、その増加率は低下してきており、都市化が沈静化し、多くの人々が都市に定住し生活する傾向が見られ、都市部の拡大は沈静化してきているといえる(図13)。また、前掲の行政投資実績によれば、3大都市圏周辺の19都府県における平成7年度の行政投資総額は、約28兆5千億円にのぼっており、全体の56%を占めているが、建設省が調べたところによると、都市部における生活基盤施設の整備状況ひとつ取ってみても、一定の水準は整備されてきているものの、諸外国と比較して、十分に整備されているとは言えない状況にある(図14)。また、都市の中心部においては、人口の減少や、公共・公益施設の郊外立地の進展に加え、バブル経済の崩壊による都市部の市街地における低未利用地や工場跡地等の空閑地が発生しており、大都市部においては、市街地空間の有効利用が喫緊の課題となっている。

 

 

 

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