(3) 我が国におけるPFIの検討状況
我が国においてPFIが議論の俎上にのぼったのは、96年の財政構造改革における歳出削減策に係る海外調査報告が嚆矢である。英国における財政再建施策の一環としてPFIを取り上げたのに続き、97年同年11月に閣議策定された「21世紀を切りひらく緊急経済対策」において、PFI手法の導入のガイドラインが示され、中部国際空港建設におけるPFI手法の活用の検討が盛り込まれることとなった。その後、数次の政府経済対策においても、PFI構想の実施に向けた取組みが盛り込まれ、98年4月には、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(いわゆるPFI法案)が策定され、国会に提出されると、建設省や通産省においても関連するガイドライン等の研究が行われるようになった(図11)。
(4) 日本版PFI法の概要
本法の目的は、従来、国、地方公共団体が行ってきた公共施設等の企画・建設・維持・管理・運営を民間に委ねる方式を導入して、効率的な社会資本整備を図ろうとするものである。対象とする施設については、国・地方公共団体等の行う公共的施設等を網羅的に対象としており、その中で、民間の資金・経営能力・技術的能力を活用することにより、効率的に実施されるものを「特定事業」として位置付けている。また、公共側の事業の実施主体としては、公共施設等の管理者である大臣又は特殊法人及び地方公共団体の長となっている。更に、具体的な法律上の手続きとしては、まず、国(内閣総理大臣)が、関係行政機関の長及び総理府内に設置される「民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)」と協議の上、基本方針を策定し、各事業主体(国・地方公共団体)は、基本方針に基づいて、特定事業の実施方針の策定・特定事業の選定・民間事業者の公募等を行うことになる。(図12)
(5) PFI方式採用の考え方
以上、英国におけるPFIの導入経緯及び我が国におけるPFIの導入に関する議論の現状について述べてきたが、視点を変えて、一体どういった事業の実施にPFI方式が適するかとの観点からみると、上記に述べたことから、PFIは、公共事業のうち、民間事業者でも供給することが可能なサービスであって、事業の成果をある程度数値化することにより、事前の契約によって、事業実施に伴うリスクを明確に分担することができるものが主な対象となることが分かる。つまり、PFI方式はこれらの要件を全て満たしている事業の実施における一つの選択肢であって、実際にPFI方式の採用を検討する際には、対象事業の趣旨や事業の契約化の可能性、更には契約手続き等に係るコストなどを総合的に勘案し、従来の公共事業方式等とよく比較検討を行った上で、判断すべきである。例えば事業費に比べて入札や契約作成コストが非常に大きい事業や契約時の単価設定が不適切である事業など、事業内容によっては、PFI方式によって、かえって事業実施に係るコストが高くなる場合もあり得るということを念頭におく必要がある。