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財政構造改革会議における公共投資に関する議論の主要な点は次のとおり。

 

○ まず、公共投資の在り方についてであるが、景気対策としての公共事業のあり方、公共投資額の諸外国との比較等について議論がなされ、最終的には、21世紀初頭に社会資本が概ね整備されることを目標とする計画の基本的な考え方は維持しつつも、財政の危機的状況等を踏まえ、集中改革期間中に、公共投資水準を景気対策前の水準に引き下げることを目指すものとされた。具体的には、計画期間を3年間延長し、これにより600兆円ベースで見て10年間で470兆円程度へと投資規模の実質的縮減を図るものとされ、またこれに伴い、公共投資基本計画とリンクした各種公共事業関係長期計画についても見直しがなされることとされている。なお、これを受けて、平成9年6月19日には、計画期間を従来の平成16年度から新たに平成19年度までに延長すること等を内容とする公共投資基本計画の改定が閣議了解されている。

○ 次に、厳しい財政状況下で、社会資本整備を着実に推進して行くには、限られた財源を有効に活用し、投資の効率化・重点化を図ることが非常に重要となるとの認識が示されたことが挙げられる。投資の効率化のためには、公共工事コストの縮減を図ることが課題の1つといえるが、この点については、平成9年4月には「公共工事コスト縮減対策閣僚会議」において「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」が決定され、これに基づき、各省庁が一致協力して総合的に公共工事コスト縮減の課題に取り組み、公共工事コストの少なくとも10%以上の縮減を目指すこととされた(図8)。

○ 更に、投資の効率化・重点化には、費用対効果分析の活用により投資の必要性、優先順位等について客観的な評価・分析がなされるべきことが、事業実施の際の留意点とされている。もっとも、異なる事業分野間での投資比較の方策、評価体制等、具体的な費用対効果分析の在り方については、今後、さらに検討を進めて行くべき部分も多いと考えられる。投資の重点化という点については、従来から公共投資予算の硬直性等について批判的意見も見られたところであったが、「財政構造改革の推進方策について」においては、投資の重点化について、集中改革期間中において経済構造改革関連の社会資本について物流の効率化対策に資するものを中心として重点整備するとともに、公共投資基本計画の考え方を踏まえ相対的に立ち後れている生活関連社会資本への重点化を図るものとされている。

○ また、投資を行う地域については、財政構造改革においては「国土の均衡ある発展と整備水準についての格差の是正という観点にも留意」することとされており、投資の重点化に当たってもかかる観点に留意することが重要と考えられる。

さらに、国と地方の役割分担については、平成8年12月の地方分権推進委員会第1次勧告等を踏まえ、「財政構造改革の推進方策について」においては、住民に身近な生活関連の社会資本等について、地域の判断にゆだねることにより地域ニーズを踏まえた効率的な整備が進められるよう、国の補助対象の縮減、採択基準の引き上げ等を図り、国の助成の対象としては広域的な事業、ナショナル・ミニマム確保のために必要不可欠な事業、ナショナル・プロジェクトに関連する事業等に限定すべきとされている。

なお、同会議における検討を踏まえて第141回国会において成立した「財政構造改革の推進に関する特別措置法」自体は、現在の経済情勢を踏まえ、凍結されている。

 

 

 

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