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第6章 まとめと今後の課題

 

6.1 追求される行政サービスの効率化

 

租税率の高いデンマークのような国では、行政の効率的運用が絶えず求められる。民間と十分競争し、競争入札でも勝てるぐらいの力量が求められる。果たしてそれは可能なのだろうか?。もし可能でないとすれば、納税者は納税する代わりに自ら民間のサービスを購入するようになるだろう。勿論民主的手続きを経てそのような制度に変わるに違いない。極めて極端な保守勢力は1970年代からそのような主張をしてきた。保守党や、自由党も、効率の悪い行政サービスは民間に移行すべきだと主張してきている。国民の多くがこうした政党を支持するようになれば、制度は変革される。2章で紹介したデンマーク大蔵省の調査で現在の公的サービスレベルはちょうど良いが55%、もっと税金が上がってもよいからもっと良いサービスレベルをもとめるが19%あった。公的サービスに一応満足している人たちが実に74%いた(表3-2参照)。
しかしながら同じ調査で、7割が公的サービスを民間との競争入札制度で決めるべきだとする結果が出ている。これをどう解釈すべきだろうか?。私の考えではこれは、同じ負担ならより高いレベルのサービスを提供できる事業体が運営すべきだとする考え方で、日本などで展開されてきた、民間の方が効率がよいからできるだけ公的サービスを民間に移譲すべきだとする粗雑な民活論的なものでは少なくともない。
なぜなら、74%は今の負担を厭っていないし、サービスレベルは現状維持か、負担が増えてもさらに向上を求めている。サービスレベルを下げた方がよいとしているのは僅か22%に過ぎない。これはイデオロギー的でなく、極めてプラグマティックなデンマーク人らしい態度だと言えるだろう。事業者が行政であろうが民間であろうが構わない。ようするに負担に見合ったサービス提供を納税者として、あるいは消費者として求めているのである。こういう成熟した国民に対応しなくてはならないデンマークの行政官には、事務職も現業職も民間並の人事管理、生産管理、そしてサービスの品質管理が求められている。職員は、それに対応できるように継続的に専門教育を受け、レベルの向上に努めている。
以前にも述べたが、自治体の場合、ホームヘルパーから部長職まですべて公募で行われている。市民の税金で雇用するのであるから、市民サービス向上のために最も優れた人材を雇用するのは当然なことだろう。年功序列で順繰りに係長から、課長や部長になるようなことはあり得ない。日本の行政は言葉では「血税」といっているが、実体はあまり市民のことは考えず、予算配分を見ても、市民福祉を考えた行政になっていないように思われる。定期異動などは、その典型で、これでは

 

 

 

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