はドイツで5個所の老人ホームの運営を始めた。またスペインではリハビリテイションセンター、ノルウェーのオスロにも事務所を開設するなどヨーロッパ各国で活動を展開してきた。グレステッド・ギーレライエ市では、1997年の段階で約100人の職員を雇用して市民へのサービスを提供している。主な業務内容は、
・ホームヘルパーによる日常生活介助、軽度の介護
・自治体のデイセンターへの送迎移送
・既存の大きな厨房を使い施設入所者の食事の調理、ならびに在宅の高齢者のための配食
・4カ所の老人ホームにおける掃除、衣服・シーツの洗濯
・施設内にある市民向けのカフェテリアの運営、などである。
グレステッド・ギーレライエ市では、高齢者福祉の分野だけでなく、コンピューター、保育園、学校、市役所など行政が保有する全ての施設の掃除、ゴミ処理、学校送迎バス、緑地管理などの分野でも行政サービスと民間サービスとの競争入札を行ったが、これらの分野では行政の方が勝っている。つまり同じサービスレベルなら行政サ―ビスのほうが、現在のところ民間より安くできるということだ。何でもかんでも民間移行というところが、プラグマティックなデンマーク人らしい。
グレステッド・ギーレライエ市の高齢者福祉分野では、こうした入札制度の導入によりサービスレベルを維持しながら18%の支出減を達成したと公表した。年度額として300万クローネ(約6000万円)の節約になるわけで、これが事実だとすれば同市にとってはかなりの経費節減を行ったと言える。ただ、キュレイトゥス・シニア社がデンマークの市場へ参入するために初期投資として安くあげている可能性も否めず、全体の解明にはもう少し時間が必要だろう。
同じ自由党系の自治体で、コペンハーゲン北西20kmに位置するファールム市(Farum、人口18,000人)は今のところ高齢者福祉は市直営で行っているが、下水処理、学校、保育園、老人ホームなどの施設を民間に売って現金化し、利用料を支払う方式を実践している。この自治体は市役所もリースだし、議場の家具もリースという徹底ぶりだ。自治体が無駄な資産を持つ必要はないという主張だ。市民生活の安全、快適、文化を維持するに足る運営費を市民から預かるだけでよいとしている。99年1月には、中学生の家庭に最新のコンピューターを無料配布してニュースになった。市の資産は、寝かしておくのではなく、現在並びに将来の市民のために活用してこそ意味があると、ピーター・ブリックストフト市長は述べている。
99年2月には、年金支払い、コンピューター管理、職員の給与支払いなどの事務を民間の会計会社に委託することにした。この場合、職員は市の職員のまま民間に出向という形を取っている。事務費の20%節約を目的にしているが、額にして200〜300万クローネ(4000〜6000万円)だという。全国の自治体が、このような節約をすれば100〜120億クローネ(2000〜2200億円)にもなり国民経済的に無視できない節約になると市長は主張している。地方自治が徹底していればこそ出来ることだが、公共性を維持しながら、民間をどこまで活用できるのかという新しいパラダイムを模索するこうした試みは、これからの地方行政のあり方を考える上で多くの示唆を与える。全国的な議論が展開されていることからも、社会実験の重要な試みと言えるだろう。