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4. 海運界から見た技術開発の必要性
4.1 物流の動向
4.1.1 海上貨物と日中・日韓・日米間の貿易額
 世界の海上物流量(貨物量)は、過去36年間に約3.4倍に達し、2003年には約57億tonに達したと見られているため、36年間の年間平均上昇率は3.43%であったことになる。中でも3大乾貨物である、鉄鉱石、石炭、穀物の輸送量の増大は著しく、同年間に約4.5倍になった。世界の経済が順調に推移すれば、海上貨物量は更に伸びることが期待される。なお、日本の2003年の船舶による貿易量は、原材料を中心に輸入が8億1千万トン、工業製品を中心に輸出が1億7千万トン、合計9億8千万トンで、世界全体の約17%を占めている。
・・・表4-1参照
 最近は中国経済の急激な進展、特に2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博の開催に向けて日本から中国向けの鉄鋼(2003年の日本からの輸出は643万トン、4,505億円で対前年比28%増)、セメント、建設機械、プラスチック製品を中心とした貨物需要が増大している。また、中国から世界に向けての輸出が大幅に増加している。
 わが国と外国との貿易を見ると、過去10年間の貿易額(輸入+輸出)は、船舶、航空共日米間が停滞気味なのに対し、日中間は大幅に増加している。特に日中間の船舶による貿易額(輸出入額)の航空機貿易額に対する割合は、日米間が66%、日韓が62%なのに対し、75%と10年前の91%に比べれば低下しているものの船舶輸送に依存している割合が大きい。
・・・表4-2表4-4参照
 中国の急激な需要増大は、石炭(前年比の2倍以上)、鋼材、鉄鉱石の大幅な価格上昇をもたらし、建造船価にも大きな影響を与えつつある。今後の船舶需要及び船舶技術課題を検討するに当たっては、オリンピックと万博の後も中国経済は持続するものなのか、中国に続いて経済発展が期待されているインド向けの海上物流はどのように変化するのか、膨大な石油と天然ガスが眠るサハリンプロジェクトが軌道に乗り出す2007年以降のエネルギー輸送(近距離輸送)が、日本のエネルギー需給と輸送量にどのような変化をもたらすのか等身近な話題でも予測が難しいが、世界が豊かさを求めて貨物需要の増大を指向にしていることに加え、増大によってもたらされるマイナス面の対策を十分考慮する必要がある。
 
4.1.2 船舶貨物と航空貨物
 船舶貨物と航空貨物については、競争関係にあるとみられがちである。日本と世界の貿易量をみると金額ベースでも、重量ベースでも航空機貨物が増加する傾向はあるが、輸送される貨物の内容は、2003年の統計では、金額ベースでは航空機が31%、船舶が69%であるのに対して、重量ベースでは航空機が0.3%、船舶は99.7%で重量貨物は圧倒的に船舶に依存している。すなわち、航空機では、ton当たり1千万円前後(輸出:12百万円強、輸入は8百万強)の貨物が輸送されているのに対して船舶は7万円(輸出:22万円強、輸入は4万円弱)である。このため、kg幾らで輸送される航空機貨物の一部を船舶に取り戻したとしても輸送額のアップには繋がりにくいことが推察できる。
・・・表4-5参照
 ただし、生鮮食品等特定の貨物であればスピード、航路、陸とのアクセス、輸送量及び輸送コスト次第では航空機と競争できる可能性があるが、一定の建造需要が見込めなければ造船としての魅力は高くはないであろう。







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