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最近の造船産業構造の変化に対応した造船技術の共同研究と開発の仕組み及びそのあり方

 事業名 造船技術研究開発課題の調査
 団体名 日本造船研究協会 注目度注目度5


3. 今後必要とされる造船所の技術開発課題
3.1 現在までの技術開発
 わが国の造船業は、各社独自の差別化研究や基盤的共同研究から船舶の運航を取り巻く新しい分野までを含めた造研のSR研究の成果等により、輸送効率向上のための船舶大型化・高性能化、船舶の自動化・省力化等の改良技術、工程短縮等の生産技術等の分野において世界をリードし、経済性、信頼性、安全性の高い海上輸送の実現に貢献してきた。他方、LNG船等の専用船の開発など新しいコンセプトの創出においては、欧米諸国が主導的役割を果たしてきたことは間違いない。
 今までの技術開発課題の一例として、平成7年に発表された造研のSR21VISIONにおける、造船業をとりまく問題と研究の課題を振り返って見てみる。(下記)
 
問題 課題
○価格・技術両面での競争の激化

○安全・環境への対応


○進歩の著しい先端技術への対応
○物流改革ニーズ等への新規需要創出の対応

○技術陣スリム化の下での技術開発
(1)船舶のハイパフォーマンス化
  [船舶の品質・性能の高度化]
(2)造船キーテクノロジーの高度化
  [造船基盤技術の高度化]
(3)情報通信革命による技術の高度化
(4)革新的技術への挑戦
(5)ニューコンセプトの創出
  [新規需要の創出]
 
 ここにおいて、(1)〜(3)はいわゆる価格・品質・納期といった国際競争力の根源に係わる課題であり、現時点でも研究開発の重要な課題である。後者の(4)と(5)の革新的技術や新コンセプトはわが国造船業の苦手とするところである。その対応策の一つとして平成12年のニューSRプロジェクトで、「船舶技術の創造的展開に関する調査研究」としてシーズ発掘型のSR500シリーズを開始したが、長期的な戦略的展望を欠く等の理由により、現時点ではこれらの成果がさらに発展し実を結ぶまでには至っていない。今後の反省点であり、課題を残している。
3.2 今後必要とされる技術開発
(1)国際競争力の強化
 造船先進国となった日本の造船業が、躍進を果たした韓国と急激に躍進し始めた中国の造船業に対して、単一の国際マーケットで競争力を維持し続けるため、今後とも、技術開発を通じて船舶という商品の品質の向上と徹底したコストの低下を目指し、国際競争力を維持・向上させていくのが最重要課題であることは今さら言うまでもない。国際市場で戦う造船業にとって船舶の品質の維持向上とコストダウンは永遠の課題である。
 船舶は製品差別化の困難な成熟製品であるので、現在では既にこれらの技術開発テーマは枯渇しているのではないかとの意見もある。しかし、わが国造船業が今後とも国際競争力を維持して生き残っていくためにはまだまだ取組むべき技術課題は多く、これらに対する不断の努力が必要である。
 
 これらのテーマの例を以下に列記する。
 まず、船舶を購入し使用する立場に立つと、必要な研究には次の課題が上げられる。
・安心して使える安全な船舶の研究
・高い経済性を備えた船舶の研究
・地球環境保全を強く意識した船舶の研究
 
 一方、船舶を供給する立場から必要とする研究には次の課題が上げられる。
・生産・工程短縮技術
・設計・生産情報システム
・生産における省エネ・省人化技術
・物量の削減とコストダウン設計
 
 これらの技術開発は、基礎・基盤的研究、応用研究から、即成果を求める差別化を目指した実用化技術の開発まで幅広い。また、将来のための萌芽的な有望技術の開発を目指した長期的な研究も必要である。以上の様な研究開発は、各社の個別研究から、少数のアライアンスや複数社による共同研究まで課題に応じた仕組みが考えられる。
 
(2)LCV(Life Cycle Value)向上船の開発
 性能向上による効率化、燃料消費の削減や信頼性の向上など、船舶の誕生から廃船までの全使用期間にわたり生み出す価値とコストとの差、すなわち生涯価値(LCV)を向上させた船舶に関する研究開発を今後の研究開発課題の一つとして造船業界が発案している。初期船価による価格競争ではなく、LCVでの生涯性能の比較による製品差別化は、今後、製品競争力の鍵となる可能性がある。このテーマは、造工会長諮問機関の造船技術戦略会議による技術戦略プロジェクト「LCV向上船の開発」や、海事局の造船産業競争戦略会議の報告書による「最高度LCV外航船」として、具体的技術開発目標のひとつに提唱されている。
 なお、LCVについては、「船主に取って船舶は、建造後5年もすれば転売の対象となること及びこれまで、搭載されている大部分の舶用機器のギャランティは、船主に引き渡された後、1年間であることから、生涯価値を宣言したとき、どこがどのような体制と責任を持って生涯価値を保証するのかといった問題もある。そのためには、実施に移す前に十分なアナリシスを行って方向性を再確認すべきである」との意見もあるため、現在検討中である。
 
(3)新ビジネスモデルの創出
 成熟期に入った造船業では、現状のように既存の船舶という商品の設計・建造に留まっている限り、技術の優位性や付加価値の差別性をいくら追及しても、追いかけてくるライバルを突き放し続けることは難しく、いずれは価格だけの競争に行き着いてしまう。価格だけの競争では、最終的には日本造船業に勝ち目は無いといっても過言ではない。
 製品の低価格化や性能・信頼性向上、短納期を目指した継続した技術開発の努力はもとより必要だが、この状況から一歩踏み出すためには、新たなビジネスモデルを作り出していかなければならない時期に来ているのではないか。
 成熟した伝統のある造船業にとって、新たなビジネスモデルの創出は非常に難しいが、その可能性の例としては下記の様な項目が考えられるのではないかと思われる。
・エンジニアリングと建造の分業化(注1)
・共同設計(同じ様な船を各社別々に設計するのではなく、競合各社で共同設計する)
・研究開発の間接的業務のアウトソーシング(各社の縮小した研究開発資源を補完するため)
・海事クラスター、造船−運輸分野タイアップ等の新しいスキームによる新輸送形態の開発
・知的財産を武器にしたビジネス戦略
  (注1)エンジニアリングは、現場の最新建造情報のフィードバックがなければ弱体化する可能性が高いことに注意する必要がある。
 
 これらは、直接に技術開発と関連するものではないが、今後の技術開発の戦略の一つとして充分に考慮していく必要があると思われる。
 
(4)時代の要請
 地球環境問題に対する関心が高まる中、良き地球人の一員として、造船業は海運業と足並みを揃えて、環境に対する配慮を払っていかなければならない。輸送の効率化、環境負荷の低減、安全性の向上など時代の要請に応じた船舶を提案し、これを開発、供給するための研究も必要である。
 また、経済と海上物流の重心がアジアに傾き初めている時代をにらみ、太平洋西岸域の海上輸送システムの最適な姿を究明し、それに見合った機能を備えた船舶を供給するための研究開発が必要となろう。
 
(5)技術マネジメント
 海外に生産拠点を設けたり、主要部品(モジュールを含む)を国外から調達することで造船業の空洞化が進むことによる技術流出の問題をクリアにしながら、国内外の技術者を包含したかたちで高度な技術コンピタンスを維持向上する方策を考える必要がある。日本の造船業のもの作りが変わっていくということを前提に、もの作りの源泉となる技術マネジメントにも視点を向けていかなければならない。
 今までのような新技術のブレークスルー型から、技術特性を理解した上で、産業を取り巻く環境の変化を考慮した技術を構築し、それら技術を活用して従来の延長線上にない新たなビジネスを構築するという事業構想立案型への技術マネジメントの変革が必要となる。研究開発は将来への投資であり、中長期的な視野の拡大では疎かになりがちな回収効率を検討する仕組み作りが重要である。
 
(6)技術開発のための役割分担
 2010年需給ギャップ拡大・造船不況到来が予想されるなかで、事業存続のために大手造船所の専業化・再編の加速、中手造船所の建造船種拡大といった施策が打たれることが考えられる。これは「これまで住み分けてきた大手と中手が競合する、もしくは明確な区別がなくなる」ということを意味する。こうした環境下では、技術開発も従来のように「大手造船所の技術開発」といった括りでは論じられなくなる。
 造船産業競争戦略会議「我が国造船産業のビジョンと戦略」では、技術開発について以下の提言をしている。
(1)開発のポイント
・海上輸送の高度化と輸送に伴う環境負荷の低減
(2)研究開発基盤
・機能の再構築、国際的な枠組みづくり、産官学海事クラスターを主体とした研究開発アプローチの推進
(3)技術開発課題
(ア)MSV-2010(LCVを向上させた船舶)
(イ)技能IT化による生産技術の高度化、人材育成・技能伝承
 平成16年2月に海上技術安全研究所内に物流研究センターが設立されたが、このセンターは提言にある産官学海事クラスターを主体とした研究開発アプローチのひとつとも考えられる。提言の実行を多いに期待したい。
 ただし、2010年においても日本の強みが発揮できるように、きめこまかい身近な技術開発も忘れてはならない。
 
 技術開発のやり方には以下のようなパターンが考えられる。
(1)企業独自の技術開発
(ウ)性能改善/生産性向上等各企業が競争力維持向上のために独自に行うもの
(2)テーマ別JIP(Joint Industrial Project)による技術開発
(エ)例えば、
 各社が特化した船種に共通な環境関係の技術開発
 船社・造船所・舶用メーカでタイアップした技術開発
(3)アウトソーシング
(オ)技能者、生産設備、コンセプトデザイン、等
 アウトソーシングはこれまでの韓国方式である。アウトソーシング元は欧米であるが今後は日本の造船所のどこかがアウトソーシング元になるかも知れない。
 テーマ別JIPで重要なのは技術開発の企画と推進がうまくいくかどうかである。参加者も希望があれば大手/中手・国内外を問わない。参加企業のどこかが呼びかけて主体的に動くことも考えられるがテーマによっては研究開発機関が主体となって動く方が効率的と考えられる。
 これまで技術開発は国内大手/自前主義が中心であったが、上記のようなやり方により技術革新をはかり技術力を維持向上していかないと英国造船業の二の舞ともなりかねない。







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