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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/05/03 毎日新聞朝刊
[特集]憲法50年・憲法観をきく(その2)
菅直人
 
◇血が通わぬ「国民主権」−−強い民主主義を
 憲法の解釈がゆがめられていると感じています。特に、国会と内閣の関係ですね。65条に「行政権は内閣に属する」とあるでしょう。これに三権分立論を組み合わせると、「国会は、行政に対してモノを言うな」となってくる。モノを言うとしても、非常に限定的にしか言えないわけですよ。
 日本の政府は、実はひとつじゃない、役所の数だけ政府がある。人事は自己完結型だし、予算も省庁ごとの積み上げ方式で決まる。完全な縦割りです。ある省を、よその省がコントロールしようといっても無理。本来、内閣がトータル(総合的)にコントロールすべきなんですが、内閣自体が縦割りになっていて、政治家は大臣になったとたん、役人にマインドコントロールされちゃう。「役所の代弁をするのが大臣だ」とか、「よその役所のことなんか言っちゃいけない」とかね。
 結局、自己完結型の省庁が、政治のコントロールを全部ハネのけて「統帥権独立」型の構造になっている、というのが私の見方です。大日本帝国憲法には「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」(11条)という規定があった。旧軍部は陸士(陸軍士官学校)や海兵(海軍兵学校)で養成されたエリート専門家集団です。「統帥権の独立」をタテに外務省や政党の干渉を拒み、情報も自前で入手したんですが、都合のいい情報しか表に出さなかった。それで「満州(現中国東北部)はいま、こういう状況だから」と独走し、内閣を動かしてしまう。
 この構造は、実は戦後の行政にもあてはまる。今日でも、役所は都合の悪い情報を外に出しません。住専(住宅金融専門会社)の時なんか典型的だけど、大蔵省は都合のいい情報しか出さないで「こうやるしか、ありません」と言う。それで内閣を動かし、国会を動かしちゃう。実質的に政治のコントロールを受けないわけですから、旧軍部と同じですよね。
 一方、憲法41条には「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」と書いてある。この「最高機関」の意味を司法試験を受けた人なんかに聞くと、実質的な意味を伴わない飾りなんだと言うんですね。学問上は「美称説」というそうですが、しかし、この解釈は間違っていると思います。
 このことは米国と比べると、はっきりします。米国は大統領も国会議員も公選です。両方とも国民が直接選ぶわけで、機能は分立しているが、権限は同等だといえる。しかし、日本は議院内閣制です。国会には総理大臣を選ぶ権限があり、憲法66条には「内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負ふ」と書いてある。
 こういう仕組みですから、主権者である国民を代表できる機能というものは、国会にしかない。内閣も、最高裁も、ストレートに国民を代表することはできないはずです。
 にもかかわらず、現実には国会の優位が認められていない。憲法は国民が官僚を任免すると明記しているのに、実際は主客が転倒してしまっている。それも、これも、日本国憲法の構造を明治憲法の発想で解釈しているからじゃないですか。つまり、「主権在民」に血が通った憲法論ができていない。国民は選挙の時だけ主権者で、選挙が終わったとたん、行政法に支配されてしまう。
 こういう現状を改め、国民主権にふさわしい憲法解釈を確立して適切な運用を求めるというのが、私の基本的な立場です。
 9条の問題に触れておくと、私自身は、この憲法においても国の自衛権は認められるし、専守防衛の自衛隊も認められると考えます。ただし、PKO(国連平和維持活動)は専守防衛の概念に入らない。「専守防衛の自衛隊」とは違う概念が必要だと思いますから、やはり別組織にすべきでしょう。
 最近、中曽根(康弘・元首相)さんを中心に9条改憲を求める議論が浮上してますけれども、私は、改憲の必要性は近い将来を含めてない、と判断しています。ただ、いわゆる「不磨の大典」ということで指一本触れてはいけないんだという硬直性は、これはこれで問題なんじゃないか。
 日本国憲法は、まさに戦後50年間、一言一句変えていないわけです。明治憲法も制定以来、第2次大戦が終わるまで変えなかった。日本は自分の力で、憲法を時代に合わせて変えるという経験を持ってないんですね。だから、将来的には、冷静な判断で憲法を改正するのもいい。憲法を変えたからといっておかしくはならない、日本の民主主義は、そういう力を持つ必要があると思います。
 たとえば29条(「財産権は、これを侵してはならない」)。土地問題をやってると、まちづくりとの関係で財産権の問題にぶつかります。
 私は、せめて土地ぐらいは、憲法が個人の権利として擁護する「財産」から外すべきじゃないかと思うんです。地球の表面を「オレのもんだ」なんて言うのは、天地創造の主だけであって、人間としては「しばらく使わせてもらってます」というぐらいのところでいいんじゃないかという気がします。(談)
 
◇菅 直人(かん なおと)
1946年生まれ。
東京工業大学卒業。
衆議院議員。民主党代表。


 
 
 
 
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