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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/05/03 毎日新聞朝刊
[特集]憲法50年・憲法観をきく(その1)
後藤田正晴
 
 日本国憲法施行50年にあたり、異なる立場で戦後政治に携わってきた3氏に憲法観を聞いた。後藤田正晴氏(元副総理・法相)は護憲、石原慎太郎氏(作家、元運輸相)は改憲を主張する。菅直人氏(民主党代表、前厚相)は基本的に護憲の立場だが、「解釈の面で『国民主権』が実現されていない」と告発する。いずれも毎日新聞の記者がインタビューし、談話にまとめた。
 
◇国民が育て上げた憲法−−日本の旗は軍縮
 日本の憲法というのは占領軍の草案から出発している。一口で言うと、生まれが必ずしも良くないんです。その憲法が50年間、何らの改正も加えられないで、その間にこの憲法を基本にした日本の復興、繁栄、安定、平和を維持することができたということは、やはり育ちがそれなりに良かったんではないかな。
 なぜ育ちが良かったかというと、この憲法の中に、人類が向かうべき理想的な、光るものがあった。それゆえにこそ、今日ここまで、なんら変更を加えることなしに定着して日本の繁栄を培ってきた。ぼくはそう思うんですよ。
 国民主権、民主主義、平和主義、基本的人権の尊重。こういった普遍的な理想というものを、この憲法は持っておる。それゆえに、50年、改正を加えられることなく育つことができたなあという思いがしますね。
 ところが今、問題として言われているのは、主として9条の関係が中心です。たとえば集団的自衛権の行使であるとか、(それを)憲法の拡大解釈によってやろうとしておる、といったような空気が最近出ていることは、成文憲法ですから解釈は柔軟にやっていいんだけれども、そういう解釈はあの憲法の上からは出てこないんではないか。
 もし、それがどうしても国民の幸せを守るために、集団的自衛権に踏み出す必要があるということを国民の多くが認める、といったようなことであるならば、それは憲法を改正してからでなければやってはいけないことだと思いますね。
 問題は、この時期に改正をすることの可否ということになりますが、私は時期が尚早であると思います。今、その問題を取り上げても国民が認めないだろう。しかも、国論を二分する恐れがある。
 日本の憲法は日本人の幸せのためにあるんだから外国に配慮する必要はない、といったような議論もあり得るけれども、日本の国民の幸せを守る以上は、日本はアジア各国との間で、お互いに思い合う気持ちを享受して、平和に共生するということが大事ではないのかな。そうなってくると、過去の日本がアジアに侵略した、その被害者が近隣各国に生存しているという事実を重く見なければいけないのではないか。
 今、憲法改正をやるということになってくると、アジアから孤立する恐れがある。そうなると、日本の国民にとって不幸な結果を招来するのではないかな。もう少し時間の経過を待つべきである。
 その間に9条を改正しなければ日本が生きていけないような事態が発生するような緊急性があるかというと、私は予想できない。こういう理由から、第9条について拡大解釈をしたり、ましてや憲法改正ということはやらん方がよろしいと考えるわけです。
 「国のあるべき姿として、海外に出て武力行使をしなければ普通の国ではないんだ」という見方があるけれども、日本としては「海外へ出ての武力行使はどの国もやらない」という方向へ向けて努力をするのが当然の話でしょう。
 そうなれば、すべての国が平和を守るということになるんじゃないですかね。つまり「軍事力というものを持たなければ国家としてはおかしい」ということ自体、各国がこれから向かうべき道とは違っておるんではないか。
 日本の平和は軍事力で守るのではなくて、やはりアジア各国と平和と安全保障の対話を進め、その枠組みづくりに向かうべきではないのかな。安保条約は仮想敵国というものを前提にした同盟条約です。しかし、冷戦後の世界情勢の中でここまでくれば、2国間の友好・平和条約に切り替える方向で努力すべき時ではないか。
 冷戦後の世界が軍縮に向かっているのは間違いない。大きな戦争はありません。後は国境紛争とか宗教紛争、民族紛争といった問題が起きているけれども、全体としては治まる方向にある。ソ連が健在だった時と比べて、どっちが安全かといえば、今の方だというのは、だれが見たってはっきりしてますよ。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の問題にしても、かつては(背後に)中国、ソ連がいたけれども、今は孤立してますから。二千数百万の国民がいて、エネルギーもなければ、食う物もない。この国が、どうして世界を相手にやるんだい、ということですよ。
 日本の一部の人が、なんで日本の危機だ、危機だと叫ぶのか、ぼくには分からない。前の方がよっぽど危機だったと思うんだよ。やっぱり、この時期にね、わざわざ憲法直して軍事力で対応していくというようなことは間違いだと思う。
 もう、軍事同盟の時代は過ぎとるんではないかという気がします。軍備について、日本の旗はどこかということなら、それはやっぱり軍縮と核廃絶ですよ。これは世界に向けて、日本の旗として掲げて進めばよろしい。もちろん、それは理想論であって、すぐにそうなるということではありませんがね。(談)
 
◇後藤田 正晴(ごとうだ まさはる)
1914年生まれ。
東京大学法学部卒業。
内務省入省、警察庁長官、自治大臣・北海道開発庁長官、内閣官房長官、法務大臣、副総理を歴任。


 
 
 
 
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