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3.3.2.4 使用したブロック
 試作した5種類の混合ブロック(図3.3〜図3.7)とJIS T 9251規格6)に準拠した点状ブロック、線状ブロックを使用した。なお、想定外の事態が生じた場合でも視覚的な情報が手掛かりになりにくいように、すべてのブロックをコンクリートの素材色のままとした。ブロックの写真を資料編2-4に付した。
 
3.3.2.5 ブロックの敷設
 3.3.2.10にて後述する2種類の実験(同定実験と一対比較実験)のために、同定実験フィールドと一対比較実験フィールドを設け、ブロックを敷設した。評価対象となるブロックは、その上を被験者が数歩に渡って歩くことが出来るように、縦に5枚(=1.5m長)並べて敷設し、その周囲には平板ブロックを敷き詰めた。実験フィールドの写真を資料編2-5に付した。
(1)同定実験フィールド(図3.15
 7箇所のブロック枠に5種類の混合ブロックと点状ブロック、線状ブロックを配置した。各ブロックの配置順序と識別線の向きは乱数を用いて決定した。
(2)一対比較実験フィールド(図3.16
 異なる混合ブロックから成るブロック対を10組作成し、それらを10個のブロック対に配置した。配置順序および識別線の向きは乱数を用いて決定した。
 
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図3.15 同定実験フィールド
 
図3.16 固定実験フィールド
 
3.3.2.6 靴
 被験者が普段、鉄道を利用する際によく使用している履き慣れたものを使用した。靴の写真を資料編2-6に付した。
 
3.3.2.7 触条件
 駅ホームでは白杖が使えない場面もあり得ることから、より危険な状況で検証するために、白杖を使用せず、足のみでブロックに触れさせた。
 
3.3.2.8 アイマスク
 被験者には全盲者と準盲者が混在していたため、被験者間で条件に差が生じないように、すべての被験者にアイマスクを使用した。
 
3.3.2.9 ブロックの踏み方
 左右いずれかの足を前に1歩踏み出せば当該ブロックを踏む位置に被験者を立たせた(図3.15および図3.16参照)。その際、1歩目で被験者が識別線を踏んでしまうことがないように、点状突起部分の中央線を被験者が跨ぐように立たせた(図3.17)。
 立ち止まってブロックを確かめる状況を前提としたため、足でブロックを探ることを許容し、この時に身体の向きを変えることも許容した。その代わりにブロックヘの進入方向は識別線に対して平行な向き(つまり識別線が左右のいずれかに現れる)のみとした。
 なお、ブロックに幅があるため、「前後左右によく動いて、ブロック全体にわたってくまなく確かめる」ように教示した。
 
図3.17 被験者の立ち位置
 
3.3.2.10 実験の構成および手順
 実験は以下の5項目で構成した。被験者への教示内容を資料編2-7に、実験風景を資料編2-8に付した。
(1)実験全般の説明および混合ブロックの説明
 最初に被験者に対して実験の概要を説明し、それに続いて混合ブロックの説明を行った。混合ブロックは誰も経験したことのない全く新しい物であるため、その形状と概念を確実に理解させるために、被験者を混合ブロック(単体)に手と足で触れさせながら説明を行った。ただし、ここで触れさせた混合ブロックは1種類のみとし、その種類は毎日ランダムに異ならせた。そして、被験者に、実験で用いる混合ブロックには複数の種類があること(ただし5種類であることは明示しない)、および、識別線の本数や間隔が一通りではないこと(ただし、本数や間隔の詳細は明示しない)を説明した。
(2)同定実験
 最初の実験は同定実験といい、同定実験フィールド(図3.15)で実施した。この実験は形状のわかりやすさの観点から混合ブロックの優劣を序列化することをねらいとした。被験者は5種類の混合ブロック、点状ブロック、線状ブロックのいずれかを踏み、ブロックの種別を「混合ブロック」か「点状ブロック」か「線状ブロック」かのいずれかで、出来るだけ早くかつ正確に、口頭で回答することを求められた。被験者の回答は実験者が筆記した。また、被験者がブロックを踏んでから回答するまでの所要時間を計測・記録した。
 各ブロック枠につきX方向とY方向の2種類の進入方向を設けた(図3.15)。そのため、被験者1人あたりの試行数は、7枠×2方向=14試行となった。ただし、最初の3名の被験者については、片方の進入方向しか実施しなかったため、試行数は半分の7試行であった。14回の試行を前半(第1試行〜第7試行)と後半(第8試行〜第14試行)に分け、前半と後半に進入方向条件(X方向、Y方向)のいずれかを割り振った。ブロック枠の出現順序はランダムとした。
(3)休憩
 同定実験の終了後、10分間の休憩を設けた。
(4)一対比較実験
 2番目の実験は一対比較実験といい、一対比較実験フィールド(図3.16)で実施した。この実験は内外方のわかりやすさの観点から混合ブロックの優劣を序列化することをねらいとした。被験者は、各ブロック対について、次の2つの課題を順次行うことを求められた。
(1)識別線検出課題
 被験者は2種類のブロックのそれぞれについて「識別線のついている側」を出来るだけ早くかつ正確に回答することを求められた。同定実験と同様の方法で時間を計測・記録した。
(2)一対比較課題
 被験者は2種類のブロックを順番に踏んだ後、「識別線のついている側がわかりやすいのはどちらのブロックであるか」を回答することを求められた。その際、いずれかのブロックを選択する回答に加え、「どちらも同じくらい」という回答も許容した。また、往復判断を許容し、時間の計測は行わなかった。
 10カ所の比較対について各1回ずつの試行とした。比較対の出現順序は被験者ごとにランダムに決定した。比較対の中の2つのブロックのうち、いずれのブロックから始めるかは、比較対ごとにランダムに決定した。各ブロック枠に対する進入方向(X方向、Y方向)は被験者ごとに、ランダムに決定した。
(5)感想等の聞き取り
 同定実験と対比較実験の終了後、実験結果を補足するために、感想等の聞き取りを行った。質問の内容は次の4項目とした。
(1)識別線の本数と間隔について
(a)「識別線のついている側のわかりやすさについて、《本数》の観点から詳しく教えてください。」
(b)「識別線のついている側のわかりやすさについて、《識別線どうしの間隔》および《識別線と点状突起の間隔》の観点から詳しく教えてください。」
(2)制限時間
 「今日の実験では制限時間を60秒としましたが、この制限時間を実用的な観点で修正したいと思います。実際の駅では《ブロック種別》や《線のついた側》を確かめるのにこれよりも時間がかかるようでは使い物にならないという観点で基準を設けるとしたら、制限時間はどのくらいが適当だと思いますか?」
(3)識別線の向き
 「混合ブロックを鉄道駅ホームの縁端に敷設するとしたら、識別線は線路側とホーム内側のどちらに位置するのが良いと思いますか?」
(4)その他、自由意見
 「今日の実験に関してお気づきになった点やご意見・ご感想があれば、お聞かせください。」
 
3.3.2.11 制限時間
 同定実験と識別線検出課題において回答の所要時間を計測した際、制限時間を60秒とし、これを超えても回答が無い場合はその試行を打ち切ることにした。このように制限時間を長く設定したのは、試行の打ち切りによってデータの欠損値が増えることを防ぐためであり、その代わり、実験終了後に各被験者に対して「制限時間はどのくらいが適当か?」と質問し、その回答をデータ解析の際に参考として用いた。
 
3.3.2.12 ビデオによる記録
 同定実験と一対比較実験の様子をビデオカメラで記録し、解析作業の補助として活用した。







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