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(2)ヒアリング調査結果のまとめ
 視覚障害者及び聴覚障害者に対するヒアリング調査結果に基づいて、鉄道利用において想定される行動別に、情報入手の現状や問題点等について整理した。(ポイントと考えられる意見については下線で強調している。)なお、各対象者のヒアリング結果の詳細は、「参考資料−1 障害者ヒアリング調査の個人別調査票」に示すとおりである。
 
I. 外出前(外出計画時)の情報入手について
(視覚障害者)
 
○初めて利用する駅や区間の場合、駅構内の構造(階段の位置、改札口の位置等)、乗り換え方法、所要時間、運賃等の情報が必要であり、以下のような方法で入手している。
・利用したことのある人や近くに住んでいる人に確認する
・駅に直接電話して確認する
・インターネットやパソコンソフトで確認する  など
○事前に乗車駅に連絡を入れ、そこから乗換駅や降車駅にも連絡を入れてもらい、駅員に誘導してもらうこともある。
駅に電話した際に、駅員の対応が悪い場合、つながらない場合が多い。
 
(聴覚障害者)
 
○初めて利用する駅や区間の場合、乗り換え方法、所要時間、運賃等の情報が必要であり、インターネット、携帯、パソコンソフト、時刻表等で確認している。
○時刻表は改正版が出るため、常に最新のものに更新する必要がある。
○各駅においてFAXで情報提供をして欲しい。
携帯電話のメールなどで目に見える形で情報提供をやって欲しい。
 
II. 鉄道利用時(平常時)の情報入手について
a. 駅構内(改札口付近)
(視覚障害者)
 
○券売機や改札口の位置は、視覚障害者の他、お金の音や人の足音などで判断している。
券売機は様々な仕様のものがあり、違いを区別できないため、仕様を統一して欲しい。
・カード対応の機種と対応していない機種がある
・お札が使える機種と使えない機種がある
・定期券やカード購入専用の機種がある など
人が並んでいるとき、列の最後に並ぶのが難しい。並んでいても列の動きを把握するのが難しい。
○点字運賃表は、金額を確認することが難しいので人が並んでいる窓口に並ぶ場合がある。
○視覚障害者用の券売機は視覚障害者誘導用ブロックで案内されているが、人が並んでいたりして利用できない場合がある。
乗り換え切符を購入することが難しいため、初乗り運賃分だけ購入して後で精算したり、カードを使用することが多い。乗り換え切符を購入できる券売機が開発されると良い。
タッチパネル式の券売機が多くなっているが使えない。
○点字運賃表は、カードを利用することが多いため、使わない人も多い。
○鉄道会社によって点字運賃表を貼ってある場所が違うため場所がわかりにくい。また、イタズラではがされたり削られたりしている場合もある。
○券売機のテンキーは必要である。
○券売機の音声案内のボリュームが大きすぎたり、小さすぎたりする。
<改札口>
○改札口の位置は、視覚障害者誘導用ブロックの他、誘導チャイム、人の足音などで判断している。
○改札口の位置の誘導は電子音だと聞き取りにくく分かり難いが、視覚障害者誘導用ブロックによる誘導は分かり易い。
自動改札機について、入口と出口が併用の場合や、時間によって進入方向が変わる場合があるため、明確に区分して欲しい。
乗り継ぎ用の改札口がわかるようにして欲しい。乗り継ぎをする場合に、乗り継ぎ用ではない改札に入ってしまい、切符が取られてしまうことがある。
 
(聴覚障害者)
 
<券売機>
○通常の利用は特に問題はないが、券売機を利用する際に故障等が発生した場合、券売機の横にあるインターホンを通して駅員と会話することができないため困る。呼び出しボタン等により直接駅員に対応してもらえるようにして欲しい。
<改札口>
○聴覚障害者等との筆談用として、筆記用具(紙とペン)があれば良いと考えている事業者もあるが、実際に筆談をお願いした際にすぐには見つからない場合が多い。
駅員が忙しくて筆談に応じてくれない場合もある。
○筆談器具がある場合や手話のできる人がいる場合は、その旨を表示して欲しい。
改札口の中に入らなくても、車両の運行情報やトラブル発生時の情報を確認できるように、改札口付近に可変式情報表示装置等を設置して欲しい。
窓口にFAXを設置して欲しい。(特に携帯メールの使えない地下鉄など)
○情報提供の文字は分かり易く、大きくしてもらいたい。
 
b. 構内の移動
(視覚障害者)
 
<階段・エレベーター・エスカレーター等>
○階段やエレベーター等の位置については、視覚障害者誘導用ブロックの他、音(ホームの放送等)や人の流れ(足音)で判断している。
○駅員や周りにいる人に直接聞いて案内してもらうこともある。
○階段手すりの点字表示は必要である。ただし、テープがはがされている場合があるので、金属板タイプなどにして、点字がはがされないようにして欲しい。
○エスカレーターについては視覚障害者誘導用ブロックで案内されていないが、視覚障害者にもエスカレーターを使えるようにして欲しい。
エスカレーターの上り下りがわからない(時間によって上りと下りが変わる時がある)
○通路からホームにおりるエレベーターについて、番線が書いていないものがあって不便である。
<トイレ>
○トイレの位置については、視覚障害者誘導用ブロックの他、トイレの水音で判断したり、直接人に聞いて確認しているが、トイレの男女別の区別はわかりにくい。
○駅員にトイレを案内してもらうと、なぜか車いす用トイレに誘導されてしまうことが多い。
○トイレの男子用と女子用の表示は、弱視者でも見えるようにして欲しい。(弱視者)
○水を流すときのボタンの位置が場所毎に異なっているので統一して欲しい。(弱視者)
<触知案内板>
触知案内板はあまり利用していない。
 
(聴覚障害者)
 
○階段、エレベーター、トイレ等の位置は、サインがあるため自分で探せる。
○階段の上り・下りの表示などが小さくて見にくい場合がある。
○移動中に何かトラブルが発生した場合(気分が悪くなった人を発見した場合など)、駅員に言葉で伝えることができない。筆記用具を携帯して欲しい。
○発券機、トイレ等の構内の配置は構内配置図、サインにより情報を得ている。
可変式情報表示装置では列車の種類だけではなく停まる駅なども表示して欲しい。
場内でアナウンスする内容は文字でも表示するようにして欲しい。
 
c. ホーム上
(視覚障害者)
 
<案内放送>
列車の運行に関する情報として、行き先、発車番線、発車時刻、各駅・快速・急行等の種別、停車駅、待ち合わせの有無などを案内して欲しい。(番線と出発する旨の案内だけでは怖くて乗車できない)
○アナウンスは近所に迷惑にならない程度に明確にして欲しい。
○列車が接近する際、特殊な音によりホームの人に接近を知らせる装置のついている駅が増えてきている。
駅や時間帯、到着列車の種別等によって、放送内容にレベル差がある。郊外の駅などでは、「電車がきます」という内容だけの場合があるが、到着なのか通過なのか判断できない。
駅員による放送は人によって内容が違う場合があるため、自動放送の方がわかりやすい。
○注意喚起(例:白線の後ろにお下がり下さいなど)などの放送は減らして欲しい。本当に必要な情報が確認できない。
○余裕をもって乗り換えができるよう、乗り換え案内の放送を充実して欲しい。駅員が案内する乗り換えに間に合わない場合もあるため、第2候補ぐらいまで案内してほしい。
列車の音と案内放送とが重なりあって聞き取りにくい場合がある。
列車が発車する際の効果音が、鳴り終わってからすぐ発車なのか、少し間があって発車なのかわからないので統一してほしい。
○ホームの両側から電車が発車する場合に、どちらが先発なのかわからない場合がある。
○始発駅などで、ホームに電車が停まっているかどうかわからず、発車ぎりぎりになって案内があり乗れない場合があるため、早めに案内して欲しい。
<乗車ドア位置・開閉>
○ドアの位置は、ドアの開く音や空気の流れ(エアコンの風等)、杖などで確認している。
○車両の編成によってドアの位置が変わる場合は、早めに案内して欲しい。
ホーム上の音や車内のクーラーの音で、ドアの開く音がわからない時がある。
○乗車する際に、降りてくる人とぶつかったり、乗車中にドアに挟まったり、盲導犬がドアに挟まったりすることがある。余裕を持って乗車することができるようにして欲しい。
○電車によって昇降口の高さが異なるため、統一して欲しい。
○ベンチの位置により、自分の乗車位置を確認している人もいる。(弱視者)
<ホームの構造>
○ホームと車両の間の隙間が危険である。どのくらい隙間があるのかわからない。
○ホームに柱がある場合、柱の外側を通行する場合は下に落ちそうな気がして大変危ない。柱はできるならホームの真ん中に作って欲しい。
○階段の位置がわかりにくい。
○列車が到着する際のドア位置の表示は分かり易くはっきり表示して欲しい。(弱視者)
○ドア位置の表示が、ドア位置の正面に表示している場合と左右に表示している場合があるが、左右の方が安全で使いやすい。(弱視者)
 
(聴覚障害者)
 
行き先、発車番線、発車時刻、各駅・快速・急行等の種別、停車駅、待ち合わせの有無などの運行情報を、可変式情報表示装置等により視覚的に案内して欲しい。
○情報の内容は、文章が長すぎるとわかりにくいため、簡潔にわかりやすく表示して欲しい。
ドア開閉のタイミングを視覚的にわかるようにして欲しい。(ランプ点滅など)
列車の接近を視覚的にわかるようにして欲しい。(ホームの端に警戒信号を点滅させるなど)
○色によって、駅や路線の区別がされているとわかりやすい。
ホームで放送している内容を可変式情報表示装置で案内して欲しい。
○ドア位置を案内するランプを設置して欲しい。
 
d.車両内
(視覚障害者)
 
<車内放送>
車内放送では、到着駅名、乗り換え案内、次駅等の情報を流して欲しい。
○車内放送を聞き逃すことがあるため、到着駅名については繰り返し案内して欲しい。
車掌の肉声による放送は、人によって聞き取りにくい場合があるため、機械による自動放送に統一して欲しい。
車内放送が、列車の音や周りがうるさくて聞こえない時がある。
○車内放送を聞き逃した場合などに情報を確認できるように、ドア付近などに情報を確認することができる自動音声案内装置のようなものがあると良い。
乗り換え案内を充実して欲しい。
・向かいのホームに待ち合わせの電車がある場合など、電車が待っていることをはっきり案内して欲しい。「お乗り換え下さい」という放送だけでは向かいのホームに電車が待っているのかどうかはわからない。
・乗り換え時に前後どの階段を利用すればよいのか案内してくれると助かる(特に地下鉄は階段によって行く方向が全然違う)
<ドア開閉>
ドア開閉位置の案内は、到着間際ではなく、余裕をもって案内してほしい。
○ドア開閉位置の案内については、「何駅まではどちら側」という案内ではなく、各駅で毎回必ず案内して欲しい。
○ドアの開閉時にチャイムがなる列車があるが、その音が一瞬なのでわかりづらい。
<号車番号等>
○新幹線や特急電車など中長距離系の電車では、席を立って他の車両に移動する場合もあるため、車両の号車番号や座席番号がわかるようにして欲しい。
<ドア番号等>
○ドア番号が号車毎に通しで付けられている場合と、向かい合ったドア同士で同じドア番号をつけている事業者があるが、後者が分かり易い。
<優先座席>
○優先座席の位置が分からないため、優先座席の場所に足さわりの違うものがあれば分かり易い。
 
(聴覚障害者)
 
到着駅名、乗り換え・接続、停車時間等の運行情報を確認できるように、可変式情報表示装置付きの車両を増やして欲しい。(居眠りをした場合など自分の居場所が分からなくなってしまう)
注意喚起の案内(車両が揺れる場合など)やトラブル発生時の情報についても、可変式情報表示装置等で流して欲しい。
○車両内において、必ずどこかに行けば情報を得られるような場所があると良い。
○車両内では、携帯電話のメールが情報入手ツールとして重要となっているが、携帯電話を使えない車両が多い。メールを使える車両があると良い。
 
e. 鉄道トラブル発生時(緊急時)の情報入手について
(視覚障害者)
 
○トラブル発生時は、案内放送に頼らざるを得ないので、トラブルの原因や、運転再開時刻、代替ルートの案内など、必要な情報を的確に放送して欲しい。
○案内放送で確認できない場合、駅員や周りにいる人に聞くなど人頼みになるが、トラブル発生時は駅員も周りの人も皆あわただしくしているため、なかなか聞くことができない。
○駅員の助けが必要な時に駅員に連絡の取れる呼び出しボタンのような装置があると良い。
○周りの人へ気を配るよう注意喚起の呼びかけをして欲しい。
○情報を確認することができる自動音声案内装置のようなものがあると良い。
○トラブル発生の際に、遅延証明書や他事業者への振り替え切符等を自分で入手することが困難であるため、駅員にきちんと対応して欲しい。
 
(聴覚障害者)
 
○トラブル発生時は、トラブルの原因や、運転再開時刻、代替ルートの案内など必要な情報を、可変式情報表示装置等により視覚的に案内して欲しい。
○現在では、緊急時の情報提供はほとんどが、放送により行われており、特に列車内では、聴覚障害者は情報を入手ができない。(車外の友人へ携帯電話のメールで確認している)
○駅員にもきちんと対応して欲しい。(筆談に応じるなど)
○トラブル発生時などに、携帯電話・端末に緊急情報を文字情報として送信してくれるシステムがあり、活用している。
 
f. 総合的な意見
(視覚障害者)
 
○機械化が進んでいることによって、配置されている人員が減っており、困っていることがあっても聞き難い状況なので、人を配置して聞きやすくするようにして欲しい。
困ったことがあったときは、人頼みなので、親切なサポートを受けられるような体制にしてもらいたい。
○今後新たな装置等を開発する際には、検討の初期の段階から、いろいろな立場の人(障害者、子供、高齢者など)の意見を取り入れるようにして欲しい。
○障害者のことは障害者自身が一番良く理解しているため、職員として障害者を雇うなど、障害者のアイデア・意見を積極的に取り入れるようにして欲しい。
 
(聴覚障害者)
 
○駅構内も車両内も、音声で情報提供が中心であると思う。可変式情報表示装置等により視覚的に情報を得られるようにして欲しい。
放送の内容を文字に変換して表示したり、携帯端末に送信するシステムがあると良い。
○手話アニメのようなものの導入も検討してみてはどうか。
○人身事故を減らす工夫が必要である。
○トラブルがあった場合の情報はリアルタイムで入手したい。(文字による情報提供への対応が遅い)
何処の駅にも改札口で可変式情報表示装置を付けて欲しい。







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