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3.3 現地確認
 3.2において、ヒアリング調査結果に基づいた情報提供の現状や問題点、留意点等を整理したが、ここでは、当事者と事業者とのニーズの相違点を探り、問題点、留意点等の内容についてフォローアップを行うため、実際の鉄道駅を対象として、当事者を交えて現地確認を実施した。
 
(1)現地確認の概要
(1)調査対象
 調査対象は、飯田橋駅を対象とした。飯田橋は、JR(総武線)、営団(東西線、南北線、有楽町線)、都営(大江戸線)が乗り入れている駅であり、地上部と地下部の移動について確認ができるほか、地下での移動についても確認ができ、総武線、東西線、南北線、有楽町線、大江戸線の乗り換え情報案内を確認する上でいくつか利点があると判断したためである。
(2)実施日程
 平成15年2月26日(水)13:00〜17:00
(3)実施内容
 確認は下表のスケジュールに沿って行った。
 
表3−8 確認のタイムスケジュール
13:00 集合(JR飯田橋駅東口改札口集合)
13:10 確認開始(JR線→営団東西線→営団南北線→都営大江戸線)
16:00 意見交換(会議室にて)
17:00 解散
 
○確認開始
 確認の対象となる情報案内に関連する施設・設備について、どの様な情報を頼りに移動、乗り換え等を行っているか、またどのような場面でわかりにくいと感じているか、参加者が自由に指摘し、指摘内容は調査票に記録した。なお、視覚障害者、聴覚障害者の確認は同時に実施し、基本的に当事者の方には事務局が付き添って指摘内容の記録を行った。また、必要に応じて写真、ビデオ等で記録した。
 
○確認終了
 会議室に移動し、確認箇所全体を通じた意見交換を行い記録を行った。また、意見記入用紙を配布し、後で気が付いた点、気になった点があれば郵送にてご意見を頂いた。
 
○実施後の結果とりまとめ
 現地確認後は参加者全員で意見交換を行い、事務局が確認結果の整理を行った。また、返信用の記入シートを配布し、後で気が付いた点、気になった点等の意見を後日送付して頂くこととした。結果のとりまとめについては委員長、事務局預かりとし、最終的なとりまとめは、報告書の最終案の段階で各委員に送付して確認していただくこととした。
 
○確認内容
 駅構内における情報提供の状況について下記の情報を参考に確認を行った。
 
表3−9 確認の内容
場面 情報の内容 情報提供の種類
出入口 駅出入口までの経路 サイン、音響・音声装置、案内放送 視覚障害者誘導用ブロック
駅の構造(構内案内) サイン、音響・音声装置、点字表示
駅周辺の主要施設の位置 サイン、視覚障害者誘導用ブロック、駅周辺図
券売機 券売機の位置 サイン、視覚障害者誘導用ブロック、音響・音声装置
乗車券の購入方法 (切符の種類、目的地までの経路・運賃、料金投入口の位置等) サイン、音響・音声装置、点字表示 (有人の場合も考慮)
窓口 総合的な案内 人的対応(筆談機等)、サイン、駅案内図
改札口 改札口までの経路 (改札口の位置) サイン、音響・音声装置、視覚障害者誘導用ブロック、点字表示
改札の方法 (自動改札での券投入方法) 音響・音声装置
列車の運行情報 (発車時刻、種別、乗り換え案内、行き先、停車駅、緩急列車接続等) 可変式情報表示装置、案内放送
事故等による遅延状況、運休、原因、運転再開時刻など 可変式情報表示装置、案内放送
通路 利用列車の確認 (発車番線、時刻等) 可変式情報表示装置、案内放送
ホームまでの経路 サイン、視覚障害者誘導用ブロック
階段 階段の位置 サイン、音響・音声装置、視覚障害者誘導用ブロック
階段の方向 (上り、下り) サイン、点字表示
エレベーター エレベーターの位置 サイン、視覚障害者誘導用ブロック、点字表示
エスカレーター エスカレーターの位置 サイン、音響・音声装置、視覚障害者誘導用ブロック
エスカレーターの方向(上り、下り) サイン、音響・音声装置
トイレ 便所・洗面所等の位置・施設配置 サイン、音響・音声装置、視覚障害者誘導用ブロック、点字表示
ホーム 乗車ドア位置 (列車の停車位置) サイン、視覚障害者誘導用ブロック
列車の接近、通過 可変式情報表示装置、音響・音声装置、案内放送
乗り換え案内 サイン、可変式情報表示装置、案内放送
列車の運行情報 (発車時刻、種別、行き先、停車駅、緩急列車接続等) 可変式情報表示装置、案内放送
事故等による遅延状況、運休、原因、運転再開時刻など 可変式情報表示装置、案内放送
 
(2)実施結果
 飯田橋駅の現地確認結果について、改札口付近、構内の移動、ホーム上、車両内といった場面毎に、視覚障害者、聴覚障害者それぞれの意見を整理した。(ポイントと考えられる意見については下線で強調している。)なお、各障害者の現地確認結果の詳細は、「参考資料−3 現地確認の個人別調査票」に示すとおりである。
 
a. 改札口付近
(視覚障害者)
 
<券売機>
JR中央線
○視覚障害者誘導用ブロックがあれば券売機への到達は問題ない。お金の音でもわかる。
○機種はボタン式に慣れているので、ボタン式にも誘導が必要。現状はタッチパネル式の機種にのみ誘導されている。ボタン式でさらにテンキー付きの機種はできないか。
※Suicaを利用するとモノレール乗り継ぎが60円引きになるが(券売機にシール表示あり)、視覚障害者にはそれがわからない。
営団東西線
ボタン式の方が慣れているので使いやすい。(タッチパネル式よりも)
○券売機への誘導については視覚障害者誘導用ブロックをたどることと機械の音でわかる。
○精算機は切符、定期券の投入口が左についているが、点字では「投入口」としか記載されておらず、何を入れたらいいかわからない。精算機は普段使わない。有人改札で全て済ませる。
都営大江戸線
○券売機は、点字キーはいくらの切符を購入すればよいかわからない。また、タッチパネル型の場合、乗り継ぎの切符も購入できない。
○券売機横の壁に貼られた券売機操作の点字案内は、壁に直接貼り付けてあるため、角度的にも内容的にも読みにくい。
点字運賃表は、読みやすいが少し探すのが大変かもしれない。(あ〜わ行になっている)
○精算機は有人改札を利用するので、基本的には使わない。
○乗車券の購入では、最低の値段を買うようにしているが、わからないので人に聞くことが多い。タッチパネル式は使うことが難しい。
○位置については機械の音でわかる。
全てタッチパネルで使いにくい。ボタン式が必要。
営団南北線
○券売機の位置が改札口と離れているため、視覚障害者誘導用ブロックがあってもわかりにくい。しかし、回りの人に聞けばいいので、そんなに困ったことはない。
 
<改札口>
都営大江戸線
○改札口付近の触知案内板だが、定期的に音声で触知案内板の位置を知らせているが、音が小さいため、わかりにくい。ただし、案内の内容は少々長いが、丁寧なのでわかりやすい。
○大江戸線には全駅触知案内板が設置されていると思う。出口や乗り換え口を探すのに利用している。
緊急時の掲示板が改札に一ヶ所だけでは困る。ここに来ないと情報が得られない。緊急時の払い戻しの手続きや、遅滞証明書などについても、音声では案内があるようだが、情報が得られないので迷う。振替え輸送の情報もすぐに得られない。
営団南北線
○改札口付近の触知案内板の音声が小さくよく聞こえない。凡例が見分けにくい。
<窓口>
営団東西線
○有人改札のみ利用する。視覚障害者誘導用ブロックがあるので経路はわかる。
 
<精算機>
JR中央線
○有人改札の窓口を通過したところにパネルがあった。ぶつかってしまった。狭い駅なので仕方ないかもしれないが経路上には不適切ではないか。※精算機を利用している人とぶつかってしまうので、仕切を設けている(駅担当者)。
 
<出入口>
JR中央線
○視覚障害者誘導用ブロックを頼りに移動可能。
営団東西線
○JRからの乗り継ぎでは、右側通行だったものが営団構内では左側通行に変わる。しかし視覚障害者誘導用ブロックはJRから階段を降りていく方向でみると右側にのみ敷かれている。
都営大江戸線
○東西線からの移動経路では視覚障害者誘導用ブロックの分岐が多く大江戸線にたどりつくことはできない。階段への誘導があるが、深く、途中クランクもあるので非常に不便を感じる。エレベーターへの誘導をわかりやすくして欲しい。
 
<通路>
営団東西線
○店舗やコインロッカーがあるようだがまったくわからない。
○A2出口階段下では手すりに点字表示がついていなかった。地下鉄は出口がどこにつながっているのかが大事なので、全ての手すりに点字表示は必要である。
○左側通行だがエスカレーターは右側になっている。(東西線から大江戸線、南北線、有楽町線へ向かう通路)
○誘導は階段のみだがエスカレーターを使いたい。
都営大江戸線
○エスカレーター、階段を降りた後、音響・音声案内がないので、改札口までの経路が分からない。
○改札口までの経路で、改札付近に音響案内がないと、位置が確定しにくい。
○他線への乗り換えや、行きたい改札口の方面が全くわからないため、音声案内で案内してほしい。
営団南北線
触知案内板があるが音声は小さくほとんど聞こえない。点字の配列がわかりづらく触知しにくい。
 
(聴覚障害者)
 
<券売機>
JR中央線
○ディスプレイの内容は見れば分かるが、スピーカーが話していることはわからない。画面の内容と音声の内容が一致していればよいが、一致していない場合は困る。
○JRは障害者割引のボタンがない。(ゆりかもめの券売機ではビデオのようなものがあるようだ。)
○障害者手帳を見せることが必要であり、職員が声で対応してくれたとしても聞こえずに困る。
○新幹線の切符も今は券売機で買えるようになったが、障害者割引を利用する場合、やはり有人の窓口に行く必要がある。その時は自分でメモを書いておいて、駅員に伝えるようにしている。筆談ボードはあまり利用しない。自分からメモを書く。
○精算機に文字表示があると良い。
○精算機にインターホンが欲しい。
○券が出ない時にどうすれば良いか分からない。駅員を探しに行くとお金を取られてしまう。
券売機の場所で駅員とコミュニケーションできるようにしてほしい。
○声を掛ける窓が大きいと顔が見えるので良い。
営団東西線
トラブル時、「スピーカーでしゃべられてもお手上げ」である。
都営大江戸線
トラブル時、呼び出しボタンを押すと駅員が後ろから顔を出すなら、その旨の視覚的に分かる表示をしておいて欲しい。
○券売機のトラブル案内が分かるようにしてもらいたい。
 
<精算機>
JR中央線
○トラブル時、呼び出しボタンを押して、「スピーカーがしゃべり始めるとお手上げ」だ。駅員が来るかどうかわからない。駅員が来ることが分かる仕組みが必要である。
営団東西線
○操作がなかなか複雑である。
 
<改札口>
JR中央線
○改札を通る時に、子供ランプがつくのでやや恥ずかしさを感じる。
○改札入ってすぐあたりに、どの路線がどこのホームか、すぐ分かるような表示があるとよい。位置が高すぎても困る。当駅の改札入口前にある頭上の可変式情報表示装置は、気付きにくい位置である。
○足元に基本的な情報(入口、出口、何番線、行先など)があっても便利と思う。
○JRから東急に乗り換えるとき(菊名だったか)、券売機と精算機が似た様なもので、どちらがどちらか迷ったことがある。急いでいるときなど余計に慌てる。
営団東西線
○普段はフリーパスを利用しているが、途中の乗り換えで回数券を使おうとすると、改札が通れないことがある。駅員さんのところに行かなくてはならない。フリーパスと回数券のつなぎがスムーズにできず、面倒に感じることがある。この時の駅員の対応は、こちらの顔も知っていてか、良かった。
○当駅改札窓口にあった「筆談用具備え付け・・・」の掲示は、見づらい位置で気付かない。
○改札機の一部にオレンジ色のものがあり、行先によって使うところが変わるものであるが、これに関する音声情報は得られないため、きちっと表示をすることが大事。現状はわかりにくい。
○乗り換え案内が近くを見ればすぐあるように、たくさんあった方がよい。当駅はちょっと少ないと感じる。
都営大江戸線
○フリーパスを利用する場合、有人改札しか通ることができない。そのため時間がかかってしまうことがある。パスネットのようにどの改札も通れるようになると便利だ。
 
<窓口−改札>
JR中央線
○可変式情報表示装置に事故等の情報を出しているか、事故等の情報を出していないなら出して欲しい。
営団東西線
筆談用器具の表示がわかりにくい。「有人改札口に筆談用器具が必ず有る」ということが普及すれば、現状のものでも分かると思うが。
 
<窓口>
JR中央線
○電車の緊急時の対応が分からない。
 
<出入口>
JR中央線
○視覚障害者誘導用ブロックを頼りに移動可能。
営団東西線
○階段の下に矢印があればどっちに降りるか判断出来る。
都営大江戸線
○マイクの近くに文字表示がほしい。
音声案内と同じように文字表示してほしい。
○停電の時、緊急時対応はどうしたら良いか分からない。
営団南北線
○筆談機が用意されていると提示されているが、用意されているのが一般化すればこの様な提示の必要もなくなるだろう。
○エレベーター、インターホンが怖い。ホームドアの上の赤ランプの意味がない。
 
<通路>
営団東西線
○駅全般として、行先表示の掲示があっても、途中で見失うことがあり、どこにいってよいか分からなくなることがある。ちゃんと見失わないような位置にしてほしい。
電車のドアの開閉が分かるようにしてもらいたい。
都営大江戸線
○迷路という印象だ。
○当駅は、非常口のサインがたくさん設置されているが、どちらに行けば良いのか。どちらでも良いのか分かりにくい。
電車のドアの開閉がいつ閉まるか表示してほしい。







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