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第4章
SSTの基本的順序
1. SSTの基本的順序
 SSTには基本的な指導の順序があります。これは個人SSTでもグループSSTでも同じです。もちろん、一人ひとりの生活目標、対人能力は違いますし、一つ一つのグループもそれぞれ違いますので、これはあくまでも基本的順序に過ぎません。
 
 以下の順序を参考にして下さい。
1:職員のチームを組み、全力をあげて寮生の指導にあたります。他の職員の協力は、SSTの花を咲かせるための水と太陽。一人ではエネルギーも枯れてしまいます。
 
2:職員は寮生との間に信頼関係ができるように、暖かい声かけをします。寮生のできない点、問題ではなく、出来ているところ、行動上の長所を一生懸命観察して、見つけます。
 
3:職員は個別に面接し、退寮までの更生計画、具体的な生活目標などを、本人と一緒に考え、明確にします。これはこれからの寮生活を導く「契約」や「約束」なので、そこからSSTの練習課題が導きだされます。
→3週間以内に職を見つけて退寮できるようにしたい、という本人の希望であれば、その長期目標に向かって、互いに協力して取り組んでいく「約束」ができ、そこからSSTで「就労のスキル」を学ぶ短期目標ができ、とりあえず「仕事を探す」という当面の練習課題がはっきりしてきます。
 
4:これからの生活に必要となる行動練習のために、SSTの時間が寮にあることを本人に伝え、動機づけます。これまでにSSTが役にたった「先輩」のことも具体例として伝えて励まします。第1回目は見学だけでもいいと伝えましょう。能力の高い寮生には、本人の経験を活かして、他の人を助けてやってほしいと期待を告げます。
→54頁の「自信をつけてチャンスを活かすために学ぶ」という資料を渡しながら説明してもいいでしょう。
→「SSTの練習課題」のアンケートを渡して、説明もできます。その他、本人に役立つSST教材を見せて説明することもできます。
→グループSSTに参加を希望しない人にも「ひとりSST」ができることを伝えます。
 
5:本人の希望も勘案し、新しい生活に必要となる社会的スキルを考え、それを細分化し、練習できる小さな段階に分けておきます。大事なことは幼稚っぽいという印象を与えないために、理論的にも説明できるようにしておきます。
→一般的なコミュニケーションをとるためのスキル、就労のためのスキル、金銭管理のためのスキルなどを参考のために細分化し、資料を添えてあります。
 
6:グループで集まってSSTをやる時はリラックスした雰囲気になるように、ウオーミングアップ活動を取り入れたり、世間話をしてから始めるといいでしょう。職員はあくまでも練習のサポーターです。「グループメンバーが互いに助け合う」ところが一番の治療教育力です。
→ウオーミングアップ活動についてはこちらに述べてあります。
→グループでSSTをするときの効果と課題についてはこちらに説明してあります。
 
7:本人が希望する練習課題を取り上げたり、本人が必要とする練習課題を提案したり、時にはグループ全体で同じ課題を練習したりします。ポイントは役に立つ練習をすることです。これがきまると80%は成功です。
→練習課題については第12章に述べています。
 
8:他の寮生に協力してもらい、よい練習ができるように、順序よく、暖かい雰囲気で、てきぱきと指導を展開します。指導者はなるべく、話を短くし、一人でも多くの人が、具体的な行動が学べるようにします。みんなが興味を持って、他の人の練習についてくるように、メンバー同士の相互作用を活発にしながら、指導します。
(1)練習課題を本人と確認します
(2)練習の場面を作ります
(3)相手役を本人に選んでもらいます
(4)必要ならば他の人のお手本を見ます(モデリング)
(5)本人が実際にやってみます
(6)よくできたところをほめます(正のフィードバック)
(7)さらに良くするところを決めます
(8)もう一度練習します
(9)よくなったところをほめます
(10)実際場面で実行するチャレンジ課題をきめます
 
9:会の終わりに感想をいってもらうほかに、別の機会をとらえるなりして、一人ひとりのSSTに対するフィードバックをもらうように心がけます。
→次頁にフィードバックをもらうための評価表の例を紹介しました。参加者にくばり、無記名で□をつけてもらうだけです。指導者には参考になるいい資料となります。
 
10:寮生の生活のなかで、SSTの効果があがっているか、どうかを注意深く観察します。寮生のための新しい練習課題をいつも探し、指導を工夫します。
 
自分の気持ちにぴったりの言葉をまるく、線で、かこってください。いくつも選んでもけっこうです。
すぐにやれそう・本当に役に立つのか・次回も楽しみ・もうやりたくない・イヤな気分・退屈・元気がでた・仲間に入っている・刺激をうけた・緊張した・ためになる・やれそうもない・つらい・落着いていれた・子どもっぽい・つかれた・満足・何だかわからない・仲間はずれにされた・面白かった・リラックスできた







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