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第5章 試験台上におけるNOx計測手順
 
5.1 一般
5.1.1  この手順はその試験場所がどこであるかに関わらず、それぞれの舶用エンジンの最初の承認試験に適用される。(2.1.2.1及び2.1.2.2で示される方法)
5.1.2  この章はNOx排出量の重み付け平均値を決定するために必要な定常状態での往復動式内燃機関(RICエンジン)からの排気ガス排出量の計測・計算方法を規定している。
5.1.3  排ガスの排出量を決定するためには、単一の計測値を得るのではなく、個々の計測の複雑な組み合わせの実施を必要とするため、下記の手順の多くは実験室における方法の詳細な説明である。このように得られる結果は、エンジンと試験方法に依存するのと同様に計測実施のプロセスにも大きく依存する。
5.1.4  この章には試験台上における試験の手順として、計測試験方法、試験の実施、試験報告が含まれている。
5.1.5  原則として、排ガス試験中にエンジンは、そのエンジンが船上で使用されるのと同等の補機器を装備していること。
5.1.6  本コードの適用範囲である多くの形式のエンジンにとって、運航時に装備されるであろう補機器は製造時あるいは認証時には判らないことがある。それ故、排ガスは1.3.13に示す軸出力を基準として表現する。
5.1.7  例えばエンジンと増減速機が一体となっている場合のように、5.2.3で規定する条件で試験することが適切でない場合、エンジンは他の補機器を装備した状態のみで試験してよい。この場合、動力計のセットは5.2.3と5.9により決定すること。補機器による消費は計測された出力の5%を超えないこと。5%を超える補機器による消費出力は事前に関係する主管庁の承認を得ること。
5.1.8  全ての体積と体積流量は273K(0℃)、101.3kPaにおける値であること。
5.1.9  他に規定されている場合を除き、この章において要求される計測結果、試験データ、計算結果を、5.10に従ったエンジンの試験報告書に記録しなければならない。
 
5.2 試験条件
5.2.1  エンジンファミリー承認のための試験条件のパラメータと試験の有効性
 係数faを下記により決定すること。
1. 自然吸気及び機械過給式エンジンでは:
2. 給気の冷却付き又はなしのターボ過給式エンジンでは:
 試験が有効と認められるにはfaは下記の値であること:
098≦fa≧1.02 (3)
 
5.2.2 給気冷却式エンジン
5.2.2.1  冷却媒体の温度と給気温度を記録すること。基準速度、基準出力におけるエンジン運転状態で冷却システムをセットすること。給気温度と冷却器圧力損失は製造者の仕様のそれぞれ±4K、±2kPa以内にセットすること。
5.2.2.2  船舶に搭載されるすべてのエンジンは、周囲海水温度25℃において、附属書VIの第13規則のNOx排出許容値内で運転されなければならない。2
 
5.2.3 出力
5.2.3.1  排ガス排出量の計測の基準は未修正の軸出力である。
5.2.3.2  エンジンに装備される可能性があるが、その運転に不要な補機器は試験時に取り外しても良い。5.1.5、5.1.6参照。
5.2.3.3  必須でない補機器が取り外されない場合、式(18)の未修正の軸出力を計算するた
めに、試験速度における補機器による消費出力を決定すること。5.12.5.1参照。
 
5.2.4 エンジンの吸気システム
 試験エンジンには、製造者が指定した運転条件において汚れていないエアクリーナに相当する製造者が指定した吸気抵抗を与える吸気装置を装備すること。また、吸気装置はそれぞれのエンジンの用途での最大空気流量を流せるものであること。
 
5.2.5 エンジンの排気システム
 試験エンジンにはその運転条件で製造者が指定した排気背圧を与える排気装置を装備すること。また、排気装置はそれぞれのエンジンの用途での最大定格出力が出せるものであること。
 
2 周囲温度25℃は、NOx排出制限値に適合するための参考周囲条件である。船舶に搭載した熱交換器により温度上昇がある場合は、例えば、低温度冷却水システムに対しては、検討が必要である。
 
5.2.6 冷却システム
 エンジンの冷却システムは製造者が指定する通常の温度を保持できる十分な容量を持つものを用いること。
 
5.2.7 潤滑油
 試験に用いた潤滑油の仕様を記録すること。
 
5.3 試験用燃料
5.3.1  燃料性状はエンジンの排ガス排出量に影響を与えることがある。それ故、試験に用いた燃料の性状は計測し、記録すること。基準燃料を用いる場合はそのコード又は仕様及び分析結果を提供すること。
5.3.2  試験用燃料の選定は試験の目的による。主管庁の合意があり、適切な基準燃料が入手できない場合を除き、ISO 8217(1996)に指定されているDM級の舶用燃料でそのエンジンの形式に適した燃料を用いること。
5.3.3  燃料温度は製造者の推奨によること。燃料温度は燃料噴射ポンプの入り口もしくは製造者の指定する箇所で計測し、計測値及び計測位置を記録すること。
 
5.4 計測装置
5.4.1  供試エンジンの排ガスのガス成分を、本コードの付録3に記載された分析器による方法により計測すること。
5.4.2  他のシステムあるいは分析計であっても、主管庁の承認があり、5.4.1の装置と同等の結果を与えるものであれば受け入れられる。
5.4.3  本コードには流量、圧力、温度計測装置についての詳細は含まれていない。その代わりに、排ガス試験に必要なそれらの装置の要求精度のみを本コードの付録4の1.3.1に記載している。
 
5.4.4 動力計の仕様
5.4.4.1  3.2に記載される適切な試験サイクルを実施するために適した特性を持つ動力計を用いること。
5.4.4.2  トルク及び速度の計測のための機器は製造者の指定した試験台上運転範囲に亘って軸出力を計測できるものであること。これに適合しない場合は、追加計算が必要であり、それを記録すること。
5.4.4.3  計測機器の精度は、本コードの付録4の1.3.1で与えられた最大許容値を超えないものであること。
 
5.5 排気ガス流量の計測
排気ガス流量を5.5.1、5.5.2もしくは5.5.3で示される試験方法のいずれかで計測すること。
 
5.5.1 直接計測方法
 この方法は流量ノズルもしくは両等の計測システムにより排気流量を直接計測するもので、国際標準と認められるものによること。
注:ガスの直接流量計測は難しい。排ガス排出量の値に大きな影響を与える誤差を避けるようにすべきである。
 
5.5.2 空気、燃料計測による方法
5.5.2.1  空気と燃料を計測することにより排気ガス流量を算定する方法は国際標準と認められるものによること。
5.5.2.2  本コードの付録4の1.3.1に定義される精度を有する空気流量計、燃料流量計を使用すること。
5.5.2.3  排気ガス流量は下記により計算すること。
 
.1 GEXHWGAIRWGFUEL (湿り排気質量流量) (4)
又は
.2 VEXHDVAIRDFFDGFUEL (乾き排気体積流量) (5)
又は
.3 VEXHWVAIRWFFWGFUEL (湿り排気体積流量) (6)
 
注:FFD及びFFWの値は燃料のタイプにより異なる。(本コードの付録6参照
 
5.5.3 カーボンバランスによる方法
 この方法は本コードの付録6に指定されている炭素と酸素の濃度バランス法により、燃料流量と排気中の成分の濃度を用いた排気ガス質量流量の計算を必要とする。
 
5.6 エンジン関連及びその他の必須パラメータの計測機器の許容ばらつき
 全ての計測機器の校正は国際標準として認められたものにトレーサブルであること。また本コードの付録4の1.3.1の規定に適合すること。
 
5.7 ガス成分の分析器
 ガス成分の分析器は本コード付録3に示された仕様に適合しなければならない。
 
5.8 分析器の校正
 本コード付録3に記載されるエンジンパラメータの計測に用いる各々の分析器を、本コード付録4に示された様にその都度必要に応じて校正しなければならない。







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