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5.1 クロアチア造船業の将来に影響を与える経済要因
 以下のような様々な経済要因が、クロアチア造船業の将来に影響を与えることになろう。
 
◆ 世界経済の一般的状況。世界経済の大幅な落ち込みや持続的な減退は、クロアチアの市場経済への移行を遅らせることとなる。世界の経済予測家の現在の見方は、楽観を許さないものとなってきている。
 
◆ 各貨物の海上荷動きの動向。世界経済の状況と貿易自由化措置の実施状況などの国際貿易環境に左右されるであろう。
 
◆ クロアチア経済の状況。経済構造改革が完了すれば、金融制度の安定をもたらし、容易にまた、コストをかけずに資金調達が可能となり、また、海外投資家の造船業への投資を促進することとなろう。
 
◆ 為替レートの動向。これがクロアチアの国際市場における競争力を大きく左右しうる。種々の経済条件が整えば、予想されるEU加盟で、クロアチアも欧州単一通貨に加盟することになると考えられる。こうなれば、ユーロに対してクーナが変動することもなくなり、EU域内の競合相手を犠牲にしてクロアチアの競争力を高めうるクーナ切り下げの可能性もなくなる。もっと広い意味で見ると、他の造船国の通貨に対するクーナのレートについても同様のことが言える。クロアチア造船業は既に、プロダクトタンカーで韓国と、自動車運搬船で日本と競合している。(関連の為替レートの変動のグラフを添付資料Bに示す。)
 
◆ EU加盟に際して適用される様々な条件。クロアチア造船業は、雇用や環境規制など広範な事項に関するEUの法令に縛られることとなる。注52 しかしながら、反対にEU加盟で、西欧との経済関係の強化などの利点も享受できる。
 
◆ 旧東欧圏の経済回復のペースと度合い。経済相互援助会議連合の崩壊前は大きな新造船需要が存在しており、いくつかのロシア船主は、国内の経済問題を抱えながらも、クロアチアへの発注を続けている。
 
◆ 現クロアチア政権により築かれる新たな貿易関係。これにより、かつてクロアチア造船所に発注を行っていた中国やイランなどのいくつかの国々を含め、世界の幅広い可能性のある貿易相手とのネットワークが構築された。国内やバルカン半島に経済的安定が戻るまでは近隣諸国からも新造船発注の大きな伸びが期待できないことから、こうした貿易関係は重要である。さらに、クロアチアの小ささを考えると、経済の移行が完了しても、いくつかの造船所が提供している陸上エンジニアリング部門の国内需要も限られたものとなると考えられる。
 
◆ ある特定の船種に関する新たな規制の導入も、現存船の解撤率や新造船需要のレベル双方で、当該市場分野の将来に影響を及ぼすこととなる。








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