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同灯浮標の北東ほぼ半海里の同海峡中央部北方には、水深35フィートと39フィートの個所が存在している。NOAA海図の同号には、“NA”灯浮標のところに、水深36フィートの浅所が存在することが示されている。“NA”灯浮標を過ぎたのちは、ゲイ・ヘッドとカッティハンク島の近辺を除くと、水深は60フィートを超すようになる。カッティハンク島の2海里半南方、即ち、ヴィンヤード海峡の南西端には、60フィートの等水深線が描く曲線状の輪郭の中に、水深39フィート以下の岩礁が存在している。QE2が激突したのは、実測水深39フィート地点の東方450から825フィートのところでであった。この岩場と浅礁とは、NOAA版海図及びBA版海図に記載されている。カッティハンク島南西端の南南西ほぼ1海里半には、ソー・アンド・ピッグス礁から延びる30フィート等水深線の輪郭の中に、実測水深29フィートの浅所が存在していた。これは、上記した実測水深39フィートのところから北方約1海里半の地点である。(本報告書中のNOAAとキューナード海運株式会社との討議のための実験と研究の項参照。)

沿岸河口海洋学会NOAA支部は、ゲイ・ヘッド潮流信号所で事件発生海域の潮汐について最も確実な予告を出していると発表していた。その海域とは、ゲイ・ヘッドの西北西ほぼ5.5海里辺りである。NOAAの1992年南、北アメリカ東岸沿岸潮汐表によれば、ヴィンヤード島ゲイ・ヘッドの8月7日の高潮は、15時59分でMLLW上3.2フィート、低潮は、23時55分でMLLW上0.7フィートとなっていた。

発表されている潮汐表を用いて、沿岸河口海洋学会NOAA支部は、事件発生直前の1992年8月7日21時54分における予測潮高をMLLW上(+)1.08フィート、発生直後の同日22時00分における予測潮高をMLLW上(+)1.04フィートと計算した。実際の潮汐は、事件発生地点から北西方約12海里にあるサコネットのサコネット・ヨット・クラブの潮汐計で計算された。事件発生時(21時58分)の実際の潮高は、MLLW上(+)0.77フィートであった。

注16 MLLWは、当該沿岸地域で使用される海図に記載される(該当地点の)水深を示すための資料で、一日二回の低潮のうちの低い方の平均値である。変動する潮汐であるが、航海者は、少なくとも、航海用海図に記された水深を見ることができる。

潮汐表は、航海用海図と同じ様な使用のされ方をする。

 

水先人によれば、かってヴィンヤード海峡を通過した船舶で、32フィートもあるQE2並みの喫水を持った船舶は、一隻もいなかった。また、水先人は、喫水20から26フィートの船舶が、平均して毎年3、4隻、ヴィンヤード海峡を通過すると述べている。多数の喫水15から19フィートの測量船が、ウッズ・ホール海洋研究所に向かっている。同海峡を通過するその他の船舶は、喫水15フイート以下の小型旅客船や漁船、あるいは、春の終わりころから夏場杯、それと秋の始まるころにかけての、多くのモーター・ボートとかヨットとかである。

 

 

 

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