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ZigBee
1 ZigBeeとその特徴
 ZigBeeは、ホームオートメーション、ファクトリオートメーションへの応用を狙いとして、2001年以降IEEE 802.15.4において、標準化された無線通信規格です。2003年には物理レイヤとMACレイヤが標準化されています。ユビキタスシステム実現への期待の盛り上がりとセンサネットワークとしての利用可能性の高まりとともに、2004年初頭から急速に目を集めるようになりました。Bluetoothの約1/3の速度ながら、低価格、低消費電力、設置が容易というセンサネットワークの要求に合致しています。
)IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineering):米国電子電気学会
 
 もともとホームオートメーション用に検討された経緯があるため、今後家庭内において、無線LANをバックボーン(幹線)、ZigBeeを支線とするホームネットワークの構成も考えられます。図1にZigBeeの利用イメージを示します。
 
図1 ZigBeeの利用イメージ
 
 ZigBeeの特徴として以下が挙げられます。
 
(1)通信範囲は9〜69メートル(将来は100メートル)
(2)赤外線とは異なり、見通しが良い空間である必要はなく信号はドアも突き抜けます。
(3)電池によって数カ月から数年動作させることを想定しており、0.1%以下の低頻度で間欠動作させることによって省電力化が図れます(Bluetoothでは定期的に充電が必要)。
(4)30 m/秒程度で新しくネットワークに参加することが可能、15m秒程度でインアクティブ状態からアクティブ状態に遷移することが可能で、省電力化のための間欠動作を効率よく行うことができます(Bluetoothではそれぞれ3秒以上、3秒程度の時間が必要)。
(5)1つのネットワーク当たりの接続可能なノード数は最大65535(2の16乗―1)で、大規模なネットワークを簡単に構築することが可能です(Bluetoothは最大8)。
(6)ほかのシステムから受ける干渉を回避する仕組みがあります。
(7)オプションでQoS(帯域)を保証した通信が可能です。
(8)メッシュネットワークの構築が可能。メッシュリンクとスターリンクを組み合わせたマルチホップネットワークの構築も可能です。
 
2 ZigBeeの標準仕様概要と応用分野
 図2にZigBeeのプロトコル体系を示します。物理レイヤとMACレイヤは、IEEE 802.15.4を採用し、ネットワークレイヤとアプリケーションレイヤとセキュリティサービスプロバイダがZigBee Allianceによる仕様です。
 
図2 ZigBeeのプロトコル体系
 
APSDE-SAP: アプリケーションサポートサブ層データエンティティ―サービスアクセスポイント
APSME-SAP: アプリケーションサポートサブ層マネジメントエンティティ―サービスアクセスポイント
NLDE-SAP: ネットワーク層データエンティティ―サービスアクセスポイント
NLME-SAP: ネットワーク層マネジメントエンティティ―サービスアクセスポイント
MLDE-SAP: メディアアクセス層データエンティティ―サービスアクセスポイント
MLDE-SAP: メディアアクセス層データエンティティ―サービスアクセスポイント
MLME-SAP: メディアアクセス層マネジメントエンティティ―サービスアクセスポイント
PD-SAP: 物理層データ―サービスアクセスポイント
PD-SAP: 物理層マネジメントエンティティ―サービスアクセスポイント
 
 IEEE 802.15.4は、低速度の無線PAN用の無線方式で、低コスト、低消費電力を追求しています。ZigBee Allianceではこの特徴を生かすことができるように上位層を設計しています。ネットワーク層におけるルーティングについては、クラスタツリーとAODV(Adhoc On-demand Distance Vector)の2つの方式を採用しています。
 
 ネットワークを構成するデバイスについては、ZigBee論理デバイスタイプとIEEE 802.15.4物理デバイスタイプの2つの規定があります。ZigBee論理デバイスタイプは、ZigBeeネットワークの中で担っている役割によりデバイスを分類するもので、ZigBeeコーディネータ、ZigBeeルータ、ZigBeeエンドデバイスの3種類があります。IEEE 802.15.4物理デバイスタイプは、ZigBeeのハードウェアプラットフォームのタイプを分類するもので、IEEE 802.15.4 で規定されているFFD(Full Function Device)とRFD(Reduced Function Device)の2種類があります。
 また、IEEE 802.15.4では、FFDをそれらが担う役割により、コーディネータとPANコーディネータという名前を定義しています。コーディネータは、ほかのデバイスが接続することを許可するFFDのことであり、ZigBee論理デバイスタイプのZigBeeルータに相当します。PANコーディネータは、コーディネータの中で特にネットワークを管理する機能を持ったFFDで、ZigBee論理デバイスのZigBeeコーディネータに相当します。
 ZigBee製品はこれら3種類のタイプの組み合わせにより表現することができます。ただし、3タイプのすべての組み合わせが許されているわけではありません。ZigBee論理デバイスタイプの分類であるZigBeeコーディネータ、ZigBeeルータはIEEE 802.15.4物理デバイスタイプとしてはFFDである必要があります。ZigBeeシステムを設計するときには、これらのデバイスタイプの組み合わせを、許された組み合わせの範囲内で設計者が選択することができます。システムを構成する機器の役割や要求される機能を考慮してデバイスタイプの組み合わせを決めることになります。図3にZigBeeのネットワークモデルを示します。
 
図3 ZigBeeのネットワークモデル
 
 ZigBee Allianceでは、2004年12月にZigBee V1.0仕様を承認しました。ZigBee V1.0では、アプリケーションとして、ホームオートメーション用照明制御のアプリケーションプロファイルをすでに規定しています。現在、これ以外のアプリケーションとして、ビルオートメーション、HVAC(Heating, Ventilation and Air Conditioning)、ホームコントロール、プラントモニタリングの4つのプロファイルを規定中です。
 
3 ZigBeeをめぐる動向
 ZigBee標準化は、上記のようにネットワークレイヤ以上は業界団体であるZigBee Allianceが推進しています。ZigBee Allianceには、2005年9月現在200以上の企業が参加している。ZigBee Allianceは、仕様の策定の一環として相互接続性や拡張性に関する仕様検証、準拠製品の認定、普及活動を行っています。
 日本では、ZigBeeの国内での普及促進に向け、2005年中にZigBee SIGジャパンが発足しました。ZigBee SIGジャパンでは、ZigBee普及を目的とする共同マーケティング、日本国内のユーザーに対する技術教育やアドバイス、日本市場におけるZigBee仕様に対する要求の調査・研究、ZigBeeに関する法令規則などの調査・研究、ZigBeeに関する出版ならびに普及などの活動を行っています。


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