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6.3.3 MATTS(Marine Asset Tag Tracking System: 海上貨物コンテナ―タグ追跡システム)実証実験
 6.3.1項の電子シールを使用した実証実験の結果として、米国DHS(Department of Homeland Security: 国土安全保障省)が以下の評価を行いました。
● 誤報率:40%超え(目標1%以下)、実用性がかなり低いとの結論でした。
● 日本側でも米国社製電子シールを使用した実験では、低い評価でした。
● 目的は既存技術の利用性の検討であったが、取りあえず電子デバイス関連のOSCでの検討は中止し、他分野への実用的な技術導入の検討に切り替えました。
● 電子デバイス関連の技術開発はDHS内のScience and Technology部門に委ねました(2003年)。
● 2006年初頭に所掌が明確化されS&T部門が実用化に耐えるデバイスの開発・製品化を担うことになりました。
 
 この評価を受けて、MATTSはDHSが中心となり、開発を進めている国際コンテナセキュリティの確保を行うシステムです。また、6.2項にて説明した輸送中にリアルタイムでコンテナの位置追跡を可能にできるシステムのインフラストラクチャの1つの例となると期待されています。
 
(1)日米海上コンテナ保安対策実証実験の概要:
 国土交通省は米国土安全保障省に協力し、横浜港で2007年3月から海上コンテナにICタグ(MATTSタグ)を取り付けて位置を追跡する実証実験を始めます。米国が導入を検討している保安システムで、二国間での実験は初めてです。有効性が確認されれば、この方式がコンテナ貨物管理の国際標準となる可能性があります。
 
 実証実験は、横浜港と米国西海岸間で実施します。海上コンテナ50-100個に全地球測位システム(GPS)機能付きの発信型ICタグを取り付け、5-7回に分けて輸送し、海上や陸上での位置を即時、且つ正確に把握できるか、また重ね積みしたコンテナの個別識別の可否、タグの耐久性などを調べることになっています。追跡期間は鉄道でシカゴに到着するまでの3-4週間です。
 
(2)MATTSの特徴:
◆位置確認
・蔵置コンテナにおける1コンテナ単位での位置認識
・世界の何処においても移動追跡可能
◆広域な情報ネットワークでの通信性確保
・グローバルな通信性
・両方向の通信
・ユーザー情報基盤へのデータ発信
◆モニタリング
・センサー機能(扉の開閉、温度、振動等)を有したACSD(Advanced Container Security Device)との連結
・データ蓄積機能と即時警告発信の機能
◆セキュリティ
・発信データのセキュリティ確保
・コンテナの真正証明機能
◆コストと持続性
・低コスト−MATTSとACSD合わせて
・電池駆動:最低3年間継続運転
 
(3)MATTSプロジェクト実証実験概要
■ 船舶
 洋上では、海上コンテナに付加されたACSDからコンテナの状況情報を標準通信方式(Zigbee: IEEE 802.15.4規格)により船舶搭載OBU機器で収集し、衛星回線を経由して地上のデータセンターへ収集されたコンテナ状況情報を伝達します。
確認項目:
● 船舶上に積み込まれた個々のコンテナの位置の確認
● 通信経路(無線LAN(Zigbee)→船舶搭載OBU機器→データセンター)の確認
 洋上(船舶)におけるコンテナ状況確認システム構成を図6-7(出典:iControl社”Marine Asset Tag Tracking Systemt”)に示します。
 
図6-7 洋上船舶におけるコンテナ状況確認システム構成
 
■ コンテナターミナル
 コンテナターミナルでは、海上コンテナに付加されたACSDからコンテナの状況情報を標準通信方式(Zigbee: IEEE 802.15.4規格)によりコンテナターミナル内の中継機器で収集し、WANを経由して、収集されたコンテナ状況情報をデータセンターへ伝達します。
確認項目:
● 積み上げられた個々のコンテナの位置の確認
● 船舶に荷揚げ中のコンテナの位置の確認
● 船舶に荷卸し中のコンテナの位置の確認
● 通信経路(無線LAN(Zigbee)→コンテナターミナル内中継器→データセンター)の確認
 
 コンテナターミナルにおけるコンテナ状況確認システム構成を図6-8(出典:iControl社”Marine Asset Tag Tracking Systemt”)に示します。
 
図6-8 コンテナターミナルにおけるコンテナ状況確認システム構成
 
■陸上輸送中
 陸上輸送中では、海上コンテナに付加されたACSDからコンテナの状況情報を標準通信方式(Zigbee: IEEE 802.15.4規格)によりトラック上のOBU機器で収集し、衛星回線を経由して地上のデータセンターへ収集されたコンテナ状況情報を伝達します。また、列車では、機関車上のOBU機器で収集し、衛星回線を経由して地上のデータセンターへ収集されたコンテナ状況情報を伝達します。
確認項目:
● トラック輸送中の個々のコンテナの位置の確認
● 列車輸送中の個々のコンテナの位置の確認
● 通信経路(無線LAN(Zigbee)→OBU機器→データセンター)の確認
 
 ZigBeeについては次にその概略を説明します。(出典:アットマーク・アイティ)(http://www.atmarkit.co.jp/index.html))
 
 陸上輸送中におけるコンテナ状況確認システム構成を図6-9(出典:iControl社“Marine Asset Tag Tracking Systemt”)に示します。
 
図6-9 陸上輸送中におけるコンテナ状況確認システム構成


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