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6.3 実証実験
 RFIDタグを使用した貨物の可視化の実験が国内および日米間で、複数のスキームで行われました。また、過去の実証実験の結果を受けて、新たな実証実験も予定されています。本節では、国際海上コンテナに目した、RFIDタグの実証実験を紹介します。
 
6.3.1 日本・米国間トレードレーンにおける電子シール活用実証実験
(1)目的:
・国際物流の現場作業における、コンテナの電子的な施錠証明によるコンプライアンス確保の実効性検証
・日本における物流セキュリティ対策の課題抽出、今後の発展性の検討
・物流の可視化(ビジビリティ)の向上
・日本における実証実験評価結果と、米国セキュリティ政策との整合性検討
(2)実施期間:平成18年1月〜3月
(3)実験フィールド
日本側:広島県 三菱重工江波工場(専用埠頭)
大阪府 大阪南港ターミナル(内航船から外航船への積み替え)
米国側:ワシントン州 エバレット港
ボーイング社 エバレット工場
(4)電子シールシステムの概要:
 GE社製の電子シール(コンテナセキュリティデバイス 2.45Ghz)
 実証実験は以下の物流フローに沿って、各拠点において電子シールを読み取り、その情報をシステムに登録することにより実施されます。
 
 実証実験実施フローを図6-5(出典:平成17年度国際コンテナ物流実証実験報告書)に示します。
 
図6-5 実証実験実施フロー
 
(5)実証実験システムの概要:
 実証実験用システムにおいて管理する情報は、以下の通りです。
・コンテナ番号
・ボルト型シール番号(従来のシール)
・バンニング時のコンテナ封印者情報
・電子シールの状態確認時の時間情報
−国内工場出荷時(バンニング時)→コンテナ封印
−外航船仕出港での電子シール状態確認時(積替時)
−仕向港での電子シール状態確認(荷卸時)
−受荷主工場搬入時(デバンニング時)→コンテナ開封
・電子シールの状況確認時のコンテナ・ステータス情報
−ドア → Open/Close
−安全状態 → Armed/Tampered
(6)実証実験(電子シールシステム)にて検証された結果
−不正貨物探知の実効性
・電子的に施錠されることで、扉の不正開封がその時間も含めて記録される点が確認されました。
・セキュリティ情報が関連する事業者(荷主、運送業者、ターミナル業者、船社)の全てで共有されるため、特に貨物を預ける荷主にとってのメリットが期待されます。
−物流可視化の向上
・貨物の位置情報及び状況がリアルタイムで正確に把握できる仕組みが確認されました。
 
6.3.2 RFIDアクティブタグ標準化実証実験
 経済産業省は、電子タグの国際標準化機関(EPCglobal)と共同して、国際物流において幅広い活用が期待されているアクティブタグ(読取距離の長い電池付きの電子タグ)を標準化し、導入効果や課題の検証を目的とした実証実験を実施しました。
 
6.3.2.1 RFIDアクティブタグ標準化実証実験の概要
(1)目的:
・国際物流で活用される電子タグの国際標準化の促進。
・国際標準化機関(EPCglobal)で検討中のアクティブタグに求められるビジネス要件について、導入効果および課題の明確化。
(2)実施期間:平成19年1月〜2月
(3)実施フィールド
 香港から日本への海上コンテナ輸出貨物にアクティブタグを貼り付けて実施。
香港側:リーボックインターナショナル(送荷主港湾倉庫)
日本側:リーボックジャパン(受荷主倉庫)
国際物流業者:DHL、マースクロジスティクス、日本郵船、シュナイダー、シェンカー
ITベンダ:MTI、野村総合研究所等
システム構築:NTTコムウェア、IIJ、日本オラクル、日本ベリサイン、凸版印刷、トッパンフォームズ等
(4)電子タグ:日米を代表するメーカーの提供する2種類のアクティブタグ
(5)実証実験概要:
 香港・日本間の実際の海上輸送環境下において、海上コンテナに2種類のアクティブタグを貼り付け、香港と日本のIT企業が各々開発したネットワークシステム(EPCIS)を香港―日本間の実際の国際物流現場で相互に接続し、各ポイントで電子タグから読み取った物流情報を、国境を越えて関係者間でリアルタイムに共有し、その効果や有効性を検証します。
 
 参考図として、図6-6(出典:経済産業省「国際物流における電子タグの国際標準化」について)を示します。
 
図6-6 国際物流における電子タグの国際標準化
 
6.3.2.2 EPCglobal物流会合(TLS-IAG)の概要
 EPCglobalは、ユーザーの実ビジネスにおける要求事項を満たす電子タグの国際標準化を推進するため、世界的な流通業、物流業、IT企業等が参加して2003年に設立された非営利団体です。物流分野では既に企業単位で電子タグの導入が進みつつありますが、電子タグを活用した国際物流を拡大していくには、国際標準化が不可欠との考えから、2005年11月に国際大手物流業者(DHL、マースク、APL、日本郵船、シュナイダー等)を中心としてEPCglobalに物流会合を設立しました。年3回の国際会議と毎週の国際電話会議を通じて標準化の検討作業を進めています。
 物流会合には日本からも多数の企業が参加しており、特に日本郵船が部会の共同議長を務めるなど、日本が主導的な役割を果たしています。
EPC: Electronic Product Code
TLS: Transportation & Logistics Services
EPCIS: EPC Information Services
TLS-IAG: Transportation & Logistics Services Industry Action Group


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