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4. EUの「認定された経済関連業者:標準と基準のガイドライン」
4.1 COMPACT枠組み
 EUの「認定された経済関連業者:標準と基準のガイドライン」27は、EU Regulation no.648/2005, Section 5a(2)及び関係規則に従って、AEOの地位(status)を受けるための要件を説明するものです。基準(criteria)は、関税規則に取り入れるために、リスク評価の要件(requirements)を規定する「COMPACT枠組み」28に基づいています。2002年に「Customs 2002 Project」が発足しました。これは、経済関係業者のリスク指標(risk indicator)を改訂し、「COMPACT枠組み」と称する経済関係業者のリスク評価に関するEU加盟国に共通の枠組み(common framework)を開発するのが目的です。
 
27 European Commission, Authorised Economic Operators: Guidelines on Standards and Criteria, TAXUD/2006/1450, Brussels, June 2006.
28 COMPACTは、Compliance and Partnership between Customs and Tradeの略語で、リスク評価に関するベスト・プラクティス及び経済関連業者(economic operators)の認定(accreditation)に関するCUSTOMS2002プロジェクトです。
 
4.2 セキュリティ認証基準の統合
 AEOの要件を開発するにあたり、WCO「SAFE枠組み」、海上運送/航空運送に関する現行のセキュリティ基準、およびISO/PAS標準2800129を研究し、できる限りこれらと統合することを考慮しました。欧州連合のセキュリティ規則の開発は、海上運送、航空貨物運送及び複合運送の関係業者に関する要件と不必要な重複を避けるために、関係委員会が一緒に作業を進めました。このようにして“end-to-end supply chain”のコンセプトの中で、関税法規とセキュリティに関する要件を確実にするため、関係当局がお互いに「セキュリティ認証」(security certification)を認識できるように、AEOの要件は矛盾なく共通するものとなっています。
 
 このガイドラインは、国際サプライチェーンの中で経済関係業者がそれぞれの担当分野における物流業務手順を考慮に入れて、意点のリストを提供するものです。関係業者のリスクの分析、管理、監視が、その後の手続として重要になります。各国の税関当局の法的権限が異なる点を考慮に入れて、EU加盟国は適切な情報収集を他の政府機関と協力して行う必要性を認識しなければなりません。究極的には、あるEU加盟国でAEOの地位が認定された場合、これが他の加盟国でも認められることができるということです。
 
4.3 サプライチェーンにおける関係業者の責任
 国際サプライチェーンは、物品の製造から、輸出及び輸入を含め、最終ユーザーへの物品引渡しまでのプロセスを表します。国際サプライチェーンの安全を確保するため、税関当局は自国向け貨物およびこれに関する監視を焦点に当てるだけでなく、サプライチェーン全体の安全確保を目指さなければなりません。サプライチェーンの安全確保を実現するための全ての努力は、より良い保護(protection)を提供するだけでなく、物品の円滑な流れを導く適正なビジネス・プロセスを向上させることになります。
 
29 IS/PAS28000シリーズ及びISO/PAS28001について、本報告書各論「第4章セキュリティ関連の各種規格と標準化動向」を参照して下さい。
 
 下図に示すように、サプライチェーンにおける異なる業者は、自社の占有下に置かれている物品の安全を確保し、AEOとしての“secure-status”を維持するために、自社の取引先のセキュリティ手順に依存しています。それ故、AEOは、必要な場合には、取引先に対してサプライチェーン・セキュリティの強化を要請し、契約によってこれを確実にすることができます。その代わりに、AEOは、国際サプライチェーンにおける自社の分担に係わるサプライチェーン・セキュリティを確実にする努力を文書によって立証しなければなりません。
 
 
 サプライチェーンにおいて、各当事者は特に以下のような点についてセキュリティ強化に努めなければなりません。
(1)製造業者:
・自社製品に関する安心・安全な(safe and secure)製造工程を確実にする。
・取引先に対する自社製品の安心・安全な供給を確実にする。
(2)輸出者:
・通商政策に関する法令等を含む関税法規に従って輸出手続を行う。
・物品の安心・安全な供給を確実にする。
(3)フォワーダー:
・関税法規に従って、法律で定められた運送手続を行う。
・運送手段及び運送貨物に無断で接近したり、危害を加えぬよう、物品の安心・安全な運送を確実にする。
(4)倉庫業者:
・物品が保税倉庫に蔵置されているとき、これが税関の監視外に移動しないよう確実にする。
・保税手続による物品の蔵置に伴う義務を遂行する。
・保税倉庫の認可に定められている条件を遵守する。
・保管場所に外部からの不法侵入を防ぐための適切な防御策を講じる。
・保管している物品への無断接近、代替物との置換、破壊などに対する適切な防御策を講じる。
(5)通関業者
・物品の通関を行うため、関税法規に従って必要な手続を行う。
(6)運送人
・運送手段及び運送貨物に無断で接近したり、危害を加えぬよう、物品の安心・安全な運送を確実にする。
・必要な運送書類を提供する。
・関税法に従って必要な手続をとる。
(7)輸入者
・物品の輸入に関連した関税規則に従って必要な手続を行う。
・無断で接近したり、危害を加えぬよう、物品の安心・安全な受領を確実にする。
 
4.4 税関の判断基準
 欧州委員会のRegulation No.648/200530の第5a条は、“Security Amendments of the Community Customs Code”と呼ばれており、同条第2項に定められている判断基準(criteria)を充たす信頼できる業者にAEOの地位(status)を与える旨を規定しています。AEOの地位は、EU加盟国の税関当局によって、ある条件の下で承認されます。
 
 AEOの地位を与える基準には次のものが含まれます。
‐税関が要求する法令遵守(compliance)の記録
‐経営(managing)、商取引(commercial)、および適切な場合には、輸送(transport)に関する記録のシステムで、税関による監視が可能なもの
‐適切な場合には、支払能力(financial solvency)証明書
‐適用可能な場合には、適切な安全確保標準(security and safety standards)
 
 なお、AEOのモデル申請書の調査項目、危険の種類、意点については、EUの「Authorised Economic Operators; Guidelines on Standards and Criteria」を巻末に付録として添付しましたので参照して下さい。
 
30 OJL 117, 4.5.2005, p.13.


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