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新規範発見塾 Lecture Memo vol.27

 事業名 基盤整備
 団体名 東京財団政策研究所


中国が靖国問題で譲れない二つの理由
ですから、胡錦濤もA級戦犯と聞いた途端にピクッときた。
 A級戦犯というのは東条英機のことだろう。それを日本は否定して、新しい国になったはずである。周恩来以来、日本はもう新しい国になったのだから、戦争の賠償を求めるのはやめよう。東条一派はもう消えた。新しい平和日本の政権になっている。だから、過去は水に流して・・・とは言わないけれども、とにかく日本国民は被害者である。日本の国内に加害者がいた。これは絞首刑になっていなくなったんだ、と説明して今日ここまで来たのに、首相がA級戦犯の祀ってあるところへ行かれては困る。中国国民に説明がつかなくなる。
 小泉政権は東条の後をまだ続けているのか。日本が平和国家になったというのはウソだったのか。こう考えてぶつけてくるのが、先の「×C」なんです。
 したがって、孟子の放伐論までさかのぼって返事をしないとだめなのです。しかし、そういうことは教わっていないから、何も知らない。世の中にそんな極端なことを言う人がいるとは知らずに、では分祀論で、A級戦犯だけ別のところに祀ればそれでいいでしょうとか、いや私は個人の資格でお参りしましたとか。
 しかし、こういうのは向こうではあり得ないのです。帝王、皇帝というのは天の代表ですから、やっていることは全部政治で、それは全地球や全人類に及びます。右を向くのも左を向くのも、天に任された権力を使っての政治です。だから「今日は個人でお参りに来ました」なんて、そんなことは全くない。ポケットからお金を出したから個人だとか、そんな話は絶対にない。あんなことをしたって、中国に対する言いわけにも何にもならない、というあたりをわかっていない。だから効果がなかったですね。効果がある答は「日本は中国の支配下にはない独立国」だと分からせることしかありません。
 もう一つ胡錦濤には事情があります。江沢民、つまり昔の帝王がまだ死んでいないことです。まだ生きていて、自分の子供や親戚を要所要所に据えて、復活をねらっている。大金持ちで軍事委員長。するとやはりそちらになびく人がいる。放伐がまだ完成していない。胡錦濤もちょっと心優しかったんでしょうね。きちんと放伐していない。これに手を焼いています。それで「江沢民よ、いい加減にしろ」というのを日本にかこつけて言っている。「A級戦犯の復権や名誉回復は許さんぞ」と言っているのは、遠まわしに「江沢民よ、早く引退せよ」と言っているわけで、中国はみんなそういうふうに回りくどいのです。
 この二つが理由だと思います。
 ということは、日本は別に対策を打つ必要はない。原因は江沢民にあるのだから、江沢民が勝つか負けるかすればおさまる。日本の国益から言ってどちらが得か。江沢民に勝たせたほうが得ならそういう外交をし、胡錦濤に勝たせたほうが得ならば、そちらのほうに援助をやればいい。
 理論というのは、こういうことを考えるためにあるんです。新聞の社説を読んで右往左往するためにあるのではないのです。
 こういうことが、中国とは何ぞやです。
 
「許し」「寛容性」がある宗教とない宗教
 ですから、小泉さんがやったことは誤った対応です。八月十三日参拝なんていうのは答になっていない。個人の資格というのも駄目。
 相手は天の命を受けた独裁者ですから、「個人」などと言ってもだめです。「国民の心で祈る」というのもダメです。それは帝王に対する反逆になります。
 日本国民も納得しない。国民の心は多種多様であって、一つではありません。だから、国民の心で祈ったと言っても、みんな「建前だろう」と思うだけです。また、「これは祀るだけであって宗教ではない」という、この理屈は中曽根さんのときの有識者会議でそう結論が出た。靖国は宗教ではない。お祀りをする儀式である。これは民族の習慣なんだ、というようなことを言って、こう言えば中国はわかってくれるかと思ったが、しかし政治しか考えない人に、こんなややこしいことを言っても通じない。
 以上から結論らしいまとめをすれば、「許し」とか「寛容性」がある宗教と、ない宗教とがある。例えばユダヤ教はない。イスラム教もない。すべてはアッラーの神のみ心のままにですから。人間が勝手に人間を許してはいけない。人間には人を罰する権利もなければ、許す権利もない。それは、アッラーの神、あるいはユダヤ教ではエホバの仕事です。キリスト教もそうです。人間が人間に対して「水に流す」ということはないのです。
 かろうじて、見るところ日本の神道にはそれがある。
 それから不思議なことに、ブッシュ大統領にもあるんですね。ブッシュはある日突然キリスト教信者になりました。「私は人間が変わりました。今でも毎朝お祈りしています」と言っていますが、このキリスト教は、許しのある宗教です。
 イエスが生まれてきて、ユダヤ人ですからユダヤ教をちょっと変えた。どこをどう変えたかは別として、しかしこれはあまり広がらなかった。そこでパウロという弟子が、輪郭をハッキリして愛の宗教にした。「キリスト教は愛の宗教だ、みんな仲よくしろ」と言った。確かにキリストもそういうことは言っているのです。キリスト教に何でこんなに派閥がいっぱいあるのかというと、いろいろなことをあの人が言ったからです。たくさんのことを言っていますから、どこか一つだけとってくると派ができてしまう。だから教組になる人はいろいろなことを言っておいたほうがいい(笑)。
 さてパウロ派では、もうじき神様が天からおりてきて、最後の審判がある。だから、その前に隣人とのけんかを仲直りしておけと言う。最後の審判のときに点数がよくなるように、周りの人とのけんかは早くおさめてこいという教え。ブッシュはその信者になったんです。それなのに何で戦争をするのかというと、異教徒は別だからです。
 仏教も、日本に入って来た仏教にはある。インドの小乗仏教は、各自修行して悟りを開くのであって、ダメな人は来世は畜生に生まれる。仏様は、許してくれるなどということはない。修行が足りないと言われるだけです。これが仏教です。
 そんなわけで、今、国際社会をリードしていくのが日本とアメリカであるというのは、許しと寛容があるから他が入れるわけです。それが大きな理由の一つだと思います。
 ですから、中国はなれない。「中国が世界を統一する」という選択肢しかないからです。それが中華思想ですが、単に威張っているだけではないのです。根本からそうなっている。あと、道教の中国というのが別にあるのですが、時間がないから今日はここまでにしましょう。どうもありがとうございました。


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