13:30〜14:00 Tobacco Free Initiative
Mr. Burke Fishburn Regional Coordinator, Tobacco Free Initiative
Mr. Fishburn
タバコは人を殺す。中毒を引き起こす。多くの疾患の原因である。貧困層のタバコ中毒者はタバコを買うために貴重な生活費を削るため、一層貧困になる。そのため途上国の人の健康に特に影響を与える。受動喫煙は特に若い人の健康に大きな影響を与える。環境にも負荷を与える。
しかし、タバコは合法的なものである。世界中で合法的に、のまれ、売られ、輸出入され、そして、宣伝されている。これが問題だ。また健康への悪影響が10年後、20年後に現れることも、タバコの害についての認識が広まらないことの原因である。タバコの害は現在、先進国から途上国にシフトしている。
タバコの健康への害を抑えるために、重要なのはタバコの供給を抑えるよりも、タバコの需要を減らすことだ。供給サイドヘの取り組みとして有効なものは密輸の取り締まりだけである。以下では需要サイドヘの対策を挙げていく。その中で特に効果的なのが、価格を上げることと、タバコの助長を抑えること、の2点である。若者に対しても以上の2つの対策が効果的である。
1. タバコ税を大幅に増やし、価格を上げる。特に若い世代におけるタバコの価格弾力性は大きいので、有効な政策だ。韓国ではこの政策が功を奏し、タバコによる税収が上がった上に、喫煙者数は減った。
2. タバコの宣伝や助長を完全に禁止する。
3. Second Hand Tobacco Smoke(受動喫煙)の対策をする。タバコを自由に吸える雰囲気を変える。多くの人に受動喫煙の危険性を認識してもらう。「タバコはCool」という認識を変え、タバコを吸わないことが当たり前の世の中にしなければいけない。
4. タバコのパッケージに、強い印象を与える、図を使った、大きな注意書きを書く。
5. 禁煙しようとする人への支援を充実させる。依存を治すために、カウンセリング、ニコチンReplacementなどある。
6. 最後に考えられるのが教育である。タバコを売る機関、宣伝する機関、政府に対する教育が重要だ。個人個人にタバコを吸わないよう指導する教育は費用対効果が悪くあまり意味が無い。
パッケージの一例
14:30〜15:00
Malaria, Other Vectorborne and Parasitic Diseases
Dr. Kevin Palmer Regional Adviser, Malaria, Other Vectorborne and Parasitic Diseases
学生の質問に耳を傾けるDr. Palmer
マラリアを中心にVectorborne Diseasesのお話を伺った。Vectorborne Diseasesとは動物を介して人間に感染する病気のことである。
1. マラリア
蚊が媒介する。感染者が多く、死亡者も多い。Vectorborne Diseasesの中で最も重要な病気。マラリアは治療可能であり、予防も可能だ。
マラリアをコントロールする上で特に重要なのは、迅速な診断、適切な治療、偽のマラリア治療薬を排除すること、の3点である。
i)迅速な診断の上では、顕微鏡の改善や顕微鏡師の育成が重要。顕微鏡が使えない地域では、臨床診断からマラリアであることを確定するためのネットワーク整備も必要だ。
ii)治療法としてはArtemisinin Combinations療法がある。Artemisinin単剤療法はやめなければならない。治療が上手くいっているかIn-vivoでモニタリングすることも大切。
iii)偽のマラリア治療薬を排除しなければならない。本物に酷似した偽薬がメコン川流域地域で氾濫している(下の写真参照)。この薬を飲んでいて死んだ場合、何が原因で死んだのかわからない。また、何人死んだのかもわからない。このように偽薬は、マラリアの実態を把握する上でも障害となる。国家が偽薬工場を発見し、閉鎖する必要がある。
2. デング熱
蚊が媒介する。発生する時は、一般的に大流行する。治療法は無く、ワクチンも無い。治療薬・ワクチンの開発の見込みも無い。病気の発生を防ぐ最も効果的な方法は、蚊をコントロールすることである。
蚊をコントロールする方策は2つある。一つは蚊帳である。3-5年使える物理的障壁なので便利である。使う前は嫌がる人も多いが、実際使ってみるとその有用性が認識される。もう一つは、蚊が繁殖するような水をできるだけ減らすことである。特に古タイヤに溜まった水は温かく暗いので、蚊が繁殖しやすい。
もともと、フィリピンの病気であったが、現在は熱帯全域に広がっている。また、都市部に多かったのだが、今は田舎にも広がっている。近い将来さらに感染地域が広がるかもしれない。
3. Soil-Transmitted Helminths(土壌媒介によるぜん虫)
世界中で20億人が感染している。内、3億人が深刻な障害を抱えている。汚れた指などが原因で感染する。子供においては、栄養不良、貧血、成長障害、認知障害などを引き起こす。
4. Schistosomiasis(日本住血吸虫)
カタツムリが媒介する。発展途上国における、公衆衛生上の重要な問題である。生殖年齢にある若者に障害を与える。Soil-Transmitted Helminthsとともに、もっとも発展が遅れている国々の最貧困層の人々に非常に多い病気。
5. Foodborne Trematodes
すべての患者を治療するMass Treatmentと食品の安全を確保することが重要。しかし、食習慣は簡単には変えられないのが問題だ。
6. Lymphatic Filariasis
蚊が媒介する。睾丸水腫を引き起こし、見た目を大きく変化させてしまう病気。アジア各地で流行している。Mass Treatment、衛生状態の改善、患者の教育が必要である。
夕方〜夜 学生主催パーティー
9月で本部へ異動となるDr. Galeaと
Barua先生は私たちが懇親会の準備をしなければならないということを気遣ってくださり、先生の講義は後日行うことになった。ホテルに戻り一致団結して短い時間ながら準備を整えた。
幸い多くの来賓の方が見えた。WPROで講義をしてくださった先生方、フィリピン大学の先生方や学生、フィリピン保健省の方、など多士済々の方々がお忙しい中わざわざ来てくださった。
フィリピン大学学生の幻想的なダンスに会場は静かに引き込まれた。私たちは、滝廉太郎の「花」の合唱、書道、騎馬戦を行った。幸い皆さん楽しんで下さったようだった。その後、遅くまで多くの先生や学生と歓談し、とても楽しい夕ベとなった。
(文責:内田)
学生、好きな漢字を書道で披露
フィリピン大学(UP)学生と
フィリピン保健省の方と
UP学生とともに騎馬戦
8月7日 今日の一言
齋藤:気が張りっぱなし、けれど素晴らしい経験の出来た日だった。WHOの分野ごとのレクチャーは、保健医療の分野からのアプローチだけでも様々な分野があり、それらを並行して活動するからこそ問題点が解決することを教えてくれた。
西:今日はここ最近で一番がんばった日だった。いつかWHOの職員として働ける日は来るのかなあ。数えてみるとのべ11回質問をしていたのでとても満足。国際機関の職員は高校の時にとても憧れていた。そして今もたぶん。尾身先生には会えず、残念。
内田:原さん、原田さんが引っ張ってくれた懇親会、成功っ!パソコンで伴奏を流してくれた齋藤さん、流石っ!Dr. Galeaと議論もできた。楽しい晩餐だった。
佐野:発展途上国において感染症だけではなく、“Non Communicable Disease−生活習慣病”と二重の疾病構造が問題として取り上げられていることを初めて知りました。Galea先生にThanksです。
白神:英語・英語・英語。WHOではなかなか大変な一日だった。もうちょっと英語ができればと感じた。夜のパーティーでは歌も書道も無事披露できたし、UPの学生とも友達になった。また明日会うのが楽しみ!
高谷:座学の大切さを再認識。知っていなければ見えないこともたくさんある。
田畑:先生方の講義は盛りだくさんで頭をフル回転。WHO/WPROの活動をじかに伺うことができ、今まで漠然としていた国際医療機関で従事することがイメージできた。尾身先生のご不在が残念だった。
舛岡:レセプションも思った以上にテキパキと準備が進みみんなさすがでした。乗せたフィリピン医学生が怖がっていた騎馬戦。鍛えているだけあって騎馬のあたりが強かった。
梶本:この日はホンマに英語力をもっと身に付けないといけないと思った。WPROにある食堂のパスタはゆですぎやろ、麺が柔らかすぎでメチャ太くなってたやん。
辻:WPRO、行って来ました!なんと言ってもガレア先生のNCDのお話に興味をそそられました。NCDが途上国でもこんなに大きな問題になっているなんて言われるまで考えたことがなかったかも。
中野:これまでの人生で一番英語を聞いた日。WHOでは興味深いお話をたくさん聞くことができました。夜は懇親会。今日の騎馬戦には勢いがあった!きっと雰囲気伝わったよ。
原:WHOの建物に入れたことに感激。工事中で、ベストスポットでの記念撮影はできなかったが。懇親会係として、夜のパーティーが無事終わったことにほっとした。
原田:WHO事務局訪問。テレビで報道されたSARSの現状と、WHOの働きは記憶に新しい。そこに関わった方々を目前にし、身が引き締まる思いがした。
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