5 新生児聴覚検査試行的事業実施要項 (平成12年10月20日)
1. 事業の名称:新生児聴覚検査
2. 事業の位置付け:試行的事業として実施し、その間にマス・スクリーニングとして最適な方法を検討する
3. 事業主体:都道府県・指定都市
4. 検査対象:出産後、入院中の新生児
5. 検査方法:AABRまたはOAE
6. 関係機関等の連携:関係機関による協議会の設置
7. 周知徹底:関係機関への周知徹底と保護者の同意
8. 療育の実施
9. 費用の支払い:実施主体が医療機関に費用を支払う
10. 実施協議:事前に国に対して協議を行う
11. 事業結果の報告:実施主体は実施結果を国に報告する
千葉県でも2003年11月から千葉県新生児聴覚検査専門部会が発足し検討中。
しかし、新生児聴覚スクリーニングが、わが国の診断、療育状況のなかで聴覚障害を持つ児の予後改善に本当に有効か?また、新生児聴覚スクリーニングは、聴覚障害を持たない児の過度の負担とならないか?など解決すべき問題も少なくない。このためには、スライド6に示すような点からの検討が必要である。
6 新生児聴覚スクリーニングは、聴覚障害を持つ児の予後改善に有効か?
新生児聴覚スクリーニングは、聴覚障害を持たない児の過度の負担とならないか?
マススクリーニングの必要条件 (松田一郎、1979)
(1)放置すれば進行して難治の疾患となる
(2)発生頻度がある程度高い
(3)スクリーニングで発見される時点では症状はほとんどないので、本人もまわりの者も気がつかない
(4)発見方法にfalse negativeがない
(5)治療法もしくは生活を管理することで、十分に対応できる
(6)cost benefitをみるとbenefitの方が大である
このなかで(1)放置すれば進行して難治の疾患となる。(2)発生頻度がある程度高い。(3)スクリーニングで発見される時点では症状はほとんどないので、本人もまわりの者も気がつかない。の項目については、スライド7、8、9、10に示すように問題が少ない。
7 聴覚障害の発見時期と生後36カ月で修得している言葉の数
Marion Downs National Center for Infant Hearing. 1997
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8 聴覚障害の頻度
1、米国での調査では、中等度以上の聴覚障害は、1000出生中1〜2人
2、1998年から2001年の約20000例を対象としたわが国の調査でも中等度以上の両側聴覚障害の頻度は、約0.15%
3、当院の1998年8月から2005年3月までの10313例を対象としたスクリーニングでは、両側聴覚障害の頻度は、0.15%(片側17例を加えると0.31%)
9 新生児マススクリーニングで異常が検出される頻度
10 全米調査による、全出生児スクリーニングを実施しない場合の難聴の診断・療育開始時期
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疑い |
診断 |
補聴器 |
療育 |
軽度〜中等度難聴 |
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ローリスク児 |
15か月
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22か月
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28か月
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28か月
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ハイリスク児 |
8か月
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12か月
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22か月
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18か月
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重度難聴 |
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ローリスク児 |
8か月
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13か月
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16か月
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16か月
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ハイリスク児 |
7か月
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12か月
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15か月
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16か月
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しかし、(4)発見方法にfalse negativeがない。(5)治療法もしくは生活を管理することで、十分に対応できる。(6)cost benefitをみるとbenefitの方が大である。などの項目については、スライド11、12、13、14に示すように体制の不備もあり問題が残る。
11 refer検出後の援助体制 日本産婦人科医会調べ
12 精査施設を受診した児の実態アンケート 1
産科施設でのスクリーニング実施状況 対象者
13 精査施設を受診した児の実態アンケート 2
産科施設でのスクリーニング実施時の状況 承諾書の有無
14 精査施設を受診した児の実態アンケート 3
産科施設でのスクリーニング実施状況 事前の説明
一方、われわれの施設での検査の件数、同意率の推移をスライド15に示すが、保護者の関心は高く、同意率も90%近くに上っている。
15 新生児聴覚スクリーニング同意率の変化
1998年8月から2003年6月まで 山口病院
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