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第2章 国民保護措置の実施に係る平素の備え
第1節 武力攻撃事態等に備えた活動体制の整備
1 平素からの活動体制の検討及び整備
○海上保安庁の所掌事務に係る武力攻撃事態等への対処等に関する主な事務分掌については、第6章第2節の「海上保安庁国民保護計画における業務と担当部課」を基本とし、各部課の長は、平素からの庁内における連携協力を図りつつ、国民保護措置を的確かつ迅速に実施するために必要な活動体制の検討及び整備に努めるものとする。
 
2 参集に関する体制の整備
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃事態等への対応のための職員の呼集及び参集に関する基準をあらかじめ定めておくものとする。
 職員の参集基準を定めるに当たっては、交通の途絶、職員又は職員の家族の被災などにより職員の参集が困難な場合があることも考慮するものとする。
 
3 職員の派遣
○長官及び管区本部等の長は、政府、都道府県、市町村等の対策本部等が設置されたときに当該対策本部等に派遣する職員をあらかじめ指定するなど、速やかに職員を派遣できる体制を整備するものとする。
 
4 備蓄等
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃事態等への対処機能を果たしえるよう、庁舎の安全性の確保、非常用発電機及び燃料の確保、並びに食料、飲料水等の備蓄等に努めるものとする。
 
第2節 船艇・航空機等の整備
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃事態等における住民の避難に関する措置、避難住民等に対する救援の支援、武力攻撃災害への対処措置等国民保護措置を的確かつ迅速に実施するために、船艇・航空機、情報通信施設、装備・資機材等の整備等に努めるものとする。
1 船艇・航空機
○以下の能力を強化した船艇及び航空機の整備に努めるものとする。
・指揮能力(船舶に限る。)
・情報収集能力
・夜間捜索監視能力
・曳航能力(船舶に限る。)
・消火能力(船舶に限る。)
 
2 情報通信施設
○以下の情報通信施設の整備に努めるものとする。
・専用通信回線
・携帯無線機、多重通信装置、携帯ファックス等の通信機器
・情報通信施設用非常用電源
・有線・無線系、地上・衛星系等による情報伝送路の多ルート化及び関連装置の二重化
・ヘリコプター撮影画像伝送システム等画像情報の収集伝送システム
・一般加入電話の優先回線
・防災相互通信用無線
・防災業務の総合的かつ計画的な実施を確保するための海洋情報システム、沿岸海域環境保全情報システム等
・船舶観測データ集積・伝送システム
 
3 装備・資機材
○以下の装備・資機材の整備に努めるものとする。
・排出油等防除資機材(オイルフェンス、油回収装置、油処理剤、油吸着材等)
・NBC対応資機材(防護服、放射線測定器、検知チケット、ガス検知器、防除装置等)等
 
4 補給
○長官及び管区本部等の長は、国民保護措置の実施に備え、平素から、動員する職員及び船艇、航空機等における食糧、清水、医薬品、燃料等の補給体制を確保するよう努めるものとする。
 
第3節 協力体制の確立、訓練等
1 生活関連等施設等の把握及び安全確保に関する助言
(1)生活関連等施設等の把握
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃災害への的確かつ迅速な対処のため、生活関連等施設及び危険物質等の取扱所のうち臨海部にあるものについて次に掲げる項目の把握、整理に努めるものとする。
・施設の種類
・名称
・所在地
・管理者名
・連絡先
・危険物質等の内容
・施設の規模
・その他必要な事項
(2)生活関連等施設の安全確保に関する助言
○長官及び管区本部等の長は、生活関連等施設の所管省庁、都道府県知事若しくは当該施設の管理者の求めに応じ、又は当該施設の周辺の状況、治安情勢等を勘案し、自ら必要と認めるときは、安全確保措置の実施に関して必要な助言を行うものとする。
 
2 協力体制の確立
○長官及び管区本部等の長は、これまで関係機関との間で防災等に関して締結した相互応援協定のほか、国民保護措置に関しても、必要に応じて協定を締結する等、相互の協力体制の確保、強化に努めるものとする。
 
3 住民の避難の検討
○海上保安部長等は、市町村が作成する避難実施要領のパターンの検討に当たり、平素から市町村、都道府県、消防機関、都道府県警察、自衛隊等の関係機関と緊密な意見交換を行うほか、管内における市町村が実施する避難住民の誘導に関する措置の把握に努めるものとする。
○海上保安部長等は、火災や地震等への対応に準じて留置場における収容者等の避難誘導を適切に行うため必要となる措置の実施に備えるものとする。
 
4 広報・記録体制の整備
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃事態等における適時適切な広報・記録を円滑に実施するため、次に掲げる事項の整備に努めるものとする。
・広報・記録を実施する要員の指名及び教育訓練体制
・広報・記録の実施に必要な情報の伝達及び部内連絡調整体制
・報道機関、パソコンネットワーク・サービス会社等との連携・協力体制
 
5 訓練
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃事態等における対処能力の向上を図るため、次に掲げる訓練を個別に又は組み合わせ、あるいは防災訓練に組み込む等により行うよう努めるものとする。
 訓練の実施に当たっては、NBC攻撃等による被害の発生等武力攻撃事態等に特有な具体的条件を設定し、参加者自身の判断や対処が求められる実践的な内容も盛り込むよう考慮するほか、訓練後の評価を実施し課題等を明らかにするよう努めるものとする。
・本庁及び管区本部に対策本部の設置が決定されたとき等における職員への情報伝達及び呼集連絡並びに参集等に関する訓練
・警報、避難措置の指示等の伝達及び船艇・航空機等の動員手続き等に関する訓練
・避難住民の誘導、消火活動、被災者の救助・救急活動、水路の確保、人員又は緊急物資の運送等に関する訓練
・NBC攻撃による災害等に対処するための物資及び資機材の取扱いに関する訓練
・広報・記録の実施に関する訓練
○長官及び管区本部等の長は、関係機関との連携を確認し、協力体制の強化を図るために、関係機関に対し訓練への参加を要請するとともに、国及び関係機関が実施する訓練にも積極的に参加するものとする。
 
6 教育及び啓発
○長官及び管区本部等の長は、所属の職員に対し、次に掲げる武力攻撃事態等への対応に関する基礎教育を行い、個々の対処能力の向上を図るよう努めるものとする。
・放射性物質、化学剤、生物剤等に関する知識及びその対応に関する知識
・国民保護法、事態対処法及び災害関係法令並びにその運用に関する知識
・警報の発令、避難措置の指示等国が実施する国民保護措置の内容
・海上保安庁が講ずべき国民保護措置の具体的な内容
・情報の収集、分析及び伝達に関する内容
・使用する物資、資機材、装備等の使用方法
・その他国民保護措置の実施に関し必要な事項
○長官及び管区本部等の長は、国民及び関係事業者に対して、武力攻撃災害の兆候を発見した場合の通報や武力攻撃事態等において執るべき船舶等の対応に関し、次により啓発を行うよう努めるものとする。
・講習会等における国民保護措置に関する説明、資料の配布等
・巡視船艇職員等による船舶への立入検査又は訪船指導の際の国民保護措置に関する説明、資料の配布等
 
7 専門家の育成強化
○長官及び管区本部等の長は、特に特殊警備隊、特殊救難隊、機動防除隊、潜水士、機動救難士等の専門部隊等に対し、より安全かつ的確な業務遂行を目的として、高度な研修等により、専門家として必要な知識、技能を修得させる等、育成強化に努めるものとする。
 
8 調査研究等
○長官及び管区本部等の長は、国民保護措置を総合的かつ効果的に実施するため、次に掲げる資料等を収集、整理し、予想される災害の規模、人的・物的被害の程度及びその対応策の検討を行うほか、必要な調査研究を行うものとする。この場合、海外を含む研究機関の研究成果を活用することはもとより、関係機関との連携に努め、かつ、関係機関への情報提供等を推進するものとする。また、有害物質等に係る的確な防災対策に資するため、海上を漂流する有害物質等の漂流予測技術の向上を図るものとする。
・生活関連等施設等の状況
・避難港及び避泊地等の状況
・船艇が住民の避難や救援を実施する際に必要となる水深や岸壁等の状況
・武力攻撃災害への対処のために使用される当庁以外の船舶、航空機、資機材等(種類、数量、配備場所等)
・避難住民及び緊急物資の運送を実施するための設備・施設(道路、港湾、飛行場、臨時ヘリポート等)、輸送能力及び輸送地点(トラックターミナル、卸売市場等)の状況
・離島における住民避難のための運送手段等(運送経路、受入施設、運送体制)
・防災に関する専門家
・災害の発生状況及び防災上の教訓
・関係機関の防災関係設備(消防艇等を含む)の配備状況
・関係指定行政機関及び地方公共団体が作成する国民の保護に関する計画並びに関係指定公共機関が作成する国民の保護に関する業務計画
・総合的な防災情報を網羅した図面等の作成に必要な自然情報、社会情報等
・放射性物質、化学剤、生物剤等の特性、その対応に関する情報


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