◆儀礼の食事とサケ
サケは、年夜や刈り上げといった特別の日にしか食べることができなかった。特別な日の食事について紹介する。
年取り魚の分布図
本間 より転載(一部改変)
年取り魚とサケ 年夜の食事に出される魚を年取り魚という。新潟市域では、年取り魚に塩引を食べる習慣がある。昭和10年代を対象時期とした調査によると、新潟県下はサケを年取り魚に食べる地域が多い。一方、西頸城以西及び佐渡では年取り魚にはブリを食べる。全国的な分布を見ると、新潟の中頸城以東、東北各県及び関東では年取り魚にサケを食べ、また新潟県西頸城以西、富山等北陸地方、近畿などではブリを食べる。特に日本海側で、年取り魚にサケを用いる東、ブリを用いる西という違いが顕著である。
刈り上げ祝いとサケ 稲の収穫を終えると、農村部では刈り上げ祝いを行った。刈り上げの料理にはサケが欠かせなかった。丸潟では10月下旬から11月中旬頃、浜の村から船にサケを積んで売りに来たという。刈り上げの時期になると、野菜の売買で付き合いのある町の衆が、サケを手土産に来ることもあったという。刈り上げではサケを焼漬にして食べた。サケ漁を行う津島屋では、豊漁祝いの時に焼漬けを作った。
鮭の塩引作り
サケの塩引は、信濃川や阿賀野川で取れたサケの内臓を取り、塩蔵(塩漬け)したものである。塩蔵により漁獲時期が限定されたサケを長期保存でき、漁獲地から遠方への流通を可能にした。塩蔵は身を熟成させ、豊かな風味を生じさせる。塩引は伝統的かつ優れた食品の加工技術である。松浜で塩引作りが盛んだったころ、新潟町の料亭にも塩引を納めていたという。
以下では、松浜で伝承されている塩引の作り方を紹介する。塩引作りは11月下旬から行う。オスメス両方とも塩引にできるが、オスはハラミが肉厚で塩引によいとされる。塩引にするサケは阿賀野川でその日獲れた、鮮度のよいものを使う。
朝獲れたサケを使う。
えらを取り、腹を割いて内臓を取り出す。
よく洗い、ぬめりや血・内臓を丁寧に取る。
塩をすり込む。目を丁寧に、しっかり。
塩を全体にすり込み、腹腔やエラにもよく塩をする。
箱にサケを重ねて漬け込む。
松浜では頭を上にして干す。
【作り方】
(1)真水でよく洗ってぬめりを落とす。
(2)マッキリ(漁師の使う刃物)を使ってサケをさばく。まず、えらから刃を差し込んで、あごとえらを切り離す。
(3)腹を裂いて内臓を手でこそげ出した後、背骨を断ち割ってメフン(腎臓)を取る。
(4)裂いた腹部をよく水洗いする。
(5)サケに塩をたっぷりすりこむ。表裏両面によくすり込んだ上で、腹に塩を詰める。
(6)片面4日、ひっくり返して4日、計8日塩に漬けておく。
(7)ころ合になったら、塩抜きする。ころ合は、硬く引き締まった手触りとカンで判断する。
(8)3日ほど水につけてひやかし、身が戻ってきたら、干す。2、3日で食べごろになる。
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