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5.2 高潮統合モデルの適用
 高潮統合モデルの代表港湾への適用例として、熊本県八代海の松合を選定し高潮による浸水計算を行い、再現性の検討を行った。
 
5.2.1 浸水計算の前提条件
 本来の高潮統合モデルの適用では、高潮計算の水位上昇、計算領域内の水位の地域差、到達時刻のタイムラグ等を引き継いで計算を実施する。しかし、前項までの検討結果から、高潮による水位の上昇が対象地域の痕跡調査等から推定された潮位に達せず、また、船溜まりなどの護岸高(TP基準で3.1m前後)にも達しなかった。越波量についても、対象領域内には流入量としてほとんどなかった。
 したがって、浸水計算の適用では、第2章で収集した熊本大学の現地調査資料(有明・八代海域における高潮ハザードマップ形成と干潟環境変化予測システムの構築 第I編1.5)の推定潮位を参考に計算を行うこととした。なお、高潮推算において対象領域の東西で潮位に若干の差(2cm; 東>西)が見られたことから、この差についてはモデルに引き継いだ。
 
5.2.2 計算条件
(1)計算格子
 図5-2-1 計算格子に示すように、10m×10mとした。
 
図5-2-1 計算格子
 
(2)計算格子の標高
 計算格子状の標高を読み取り各格子点の標高とした。結果を図5-2-2に示す。
 
図5-2-2 計算格子の標高
 
 今回の検証事例とした高潮発生時の松合地区の地形の外洋は以下のとおりである。
(1)海岸線に沿った標高約5mの堤防上を国道が通っている。
(2)3箇所ある船溜まりへの出入り口には防潮用の水門などの設備はなく潮位の影響が直接伝わる。
(3)国道は以後は海抜以下の窪地となっている(上図赤、桃色の領域)。また、人家も建っている。
(4)現国道と県道(松合地区の東西端で国道から分かれ町内を通過している道路)に挟まれた地域は船溜の護岸高より低い地域が集中している。
 
(3)計算対象領域のモデル化
(1)盛土・開口部
 現地踏査の結果、道路による盛土は、国道(堤防部)のみ対象とした。開口部は3箇所の船溜まり部であるが、今回の計算では、船溜まり護岸に潮位を一様に与え、護岸を境に陸側に越流する設定とした。
(2)粗度係数
 粗度係数は、「氾濫シミュレーションマニュアル(案)」に基づき以下のとおりとした。
農地等:0.060
道路:0.047
その他:0.050
(3)高潮潮位
 前述の熊本大学資料から以下の潮位を3箇所の船溜まりの境界潮位として与えた。
 
表5-2-1 計算潮位(m; TP)
計算
時間
仲西・山須
船溜境界
和田船溜
境界
0 2.80 2.78
300 3.04 3.02
600 3.30 3.28
900 3.55 3.53
1200 3.80 3.78
1500 4.05 4.03
1800 4.30 4.28
2100 4.50 4.48
2400 4.05 4.03
2700 3.80 3.78
3000 3.30 3.28
3300 2.80 2.78
3600 2.50 2.48


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