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第5 陸上(工場内)での接着試験
5.1 陸上での接着試験
5.1.1 実施目的
 接着剤利用の可能性を検討するために、実際の船舶で使用する電路布設と同様の材料を使用し、実作業と同じ作業姿勢で接着作業を実施し、作業状態の調査を行うとともに試験用サンプル208組と数組の予備サンプルを作成した。
 
5.1.2 実施日時
1日目:エポキシ樹脂系接着剤による接着作業
平成17年6月14日(火)10時00分〜17時00分
2日目:SGAによる接着作業
平成17年6月15日(水)10時00分〜15時00分
 
5.1.3 実施場所
墨田川造船株式会社(東京都江東区潮見2-1-16)第2工場内
 
5.1.4 実施者(敬称略)
接着剤調査研究委員会
出席委員
木船 委員長
磯部、北澤、藤吉、浜崎、光原、三宅、飯作、新田、杉崎、鈴木 各委員
日本船舶電装協会
関、荒木、三瓶、清水、東島、高松
接着作業実施協力者(墨田川造船(株)技術部及び製造部)
鈴木、伊東、岡本
 
5.1.5 部材及び母材
(表3.2 接着済み部材・母材の試験内容と試験数 参照
 接着試験用サンプルとして、部材と母材の組合せ及び2種類の接着剤の組合せにより、208組と数組の予備を作成した。
(1)フラットバー部材(アルミ合金、鋼、ステンレス鋼)
(2)L型フラットバー部材(アルミ合金)
(3)アルミ三角台部材(アルミ合金)
(4)縁付コーミング部材(アルミ合金)
(5)母材(アルミ合金、鋼、FRP)
 部材、母材の表面状態は次の通りであった。
・アルミ合金:表面処理なし、目につく汚れなし
・軟鋼:黒皮(スケール)、目につく赤錆や汚れなし
・ステンレス鋼:表面処理なし、目につく汚れなし
・FRP: 特別な表面処理なし、目につく汚れなし
 
5.1.6 接着剤
 接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤(ダイアボンドNo.2700H)とSGA(ダイアボンドSGA 380カートリッジ)の2種類を使用した。
 エポキシ樹脂系接着剤は、2液常温硬化形で、計量混合カップでヘラによる手動攪拌、ヘラによる塗布を行なった。
 アクリル反応形接着剤は、2液常温硬化形で、簡易式手動ガンとスタティックミキサーノズルによる自動混合により塗布を行なった。
 
5.1.7 接着剤試験作業
 「接着作業要領」に従い作業前に作業員に対し講義を行い、部材(フラットバー、コ型フラットバー、三角台、コーミング)を船体に見立てた母材(アルミ、鋼、FRP板)に接着した。
 母材は、あらかじめ垂直に、一部は天井面に固定し、実作業と同じ作業姿勢で接着作業を実施した。
部材及び母材は、試験前にアセトンで表面の埃や油等を拭き取った。
FRP母材は、試験前に接着部を#60のサンドペーパーでサンディングした。
圧締は、手で軽く押えテープで固定した。
 
5.1.8 作業時間
1日目:エポキシ樹脂系接着剤による接着作業
打合せ、講義を含め104組と数組の予備サンプルの作成に約6時間かかった。
2日目:SGAによる接着作業
打合せ、講義を含め104組と数組の予備サンプルの作成に約4時間かかった。
作業間休憩は、1日目よりかなり多く取った。
 
5.1.9 接着作業の記録
 各試験開始及び終了時の周囲温度、湿度及び作業時間を記録した。
1日目:作業開始時の温湿度 21℃/78%
(曇) 作業終了時の温湿度 25℃/68%
2日目:作業開始時の温湿度 19℃/90%
(雨) 作業終了時の温湿度 19℃/90%
 作業状況をデジカメで映像記録した。(写真5.1〜5.24)
 
5.2 陸上での接着作業に関するコメント等
(1)接着剤の塗布厚さは接着剤のタイプにかかわらず、100〜200ミクロンあればよい。厚く塗ればよいものではない。
(2)今回は、接着作業試験なので少し多めに塗布した。接着面が荒い場合も少し多めにする必要がある。
(3)接着剤の使用する際の温度は、5〜30℃としているが絶対的なものではない。使用時の温度は、硬化時間に影響を与えるものである。
(4)接着剤を使用する際の湿度は、90%未満としているが絶対的なものではない。使用時、接着面に結露がなければよい。
(5)接着直前に乾いた布で接着面を拭くのが望ましい。
(6)接着部材を垂直壁に接着させる場合には、部材がずれやすいので、より注意を払う必要がある。
(7)エポキシ樹脂系接着剤は、エポキシ主剤と硬化剤をきちっと計測して、所定の比率でよく混ぜなければならない。
(8)エポキシ樹脂系接着剤は、硬化に時間が掛かるため、圧締に配慮が必要である。
(9)SGAは、アクリル主剤と硬化剤を分けて充填したダブルのカートリッジを、簡易式の手動塗布ガンに装填し、その先に混合エレメント(ミキサー)を取り付けて、接着面に塗布する。
(10)エレメントのノズル先端の穴を大きくすることによりSGAの押し出し量を大きくすることができる。
(11)SGAは、塗布ガンのレバーを引くことにより、アクリル主剤と硬化剤が混合エレメント内に押し出されながら混ぜられ、接着剤として使用することが可能となる。
(12)硬化速度は温度に影響される。SGAは20℃程度であれば、30秒程度でゲル化が始まる。
(13)エポキシ樹脂系接着剤はSGAに比べ反応が緩やかで遅い。
(14)SGAの場合、接着作業に時間が掛かる時には、主剤と硬化剤が混ざり合ったものを捨てながら作業を進めることとなる。これを捨てショットと称している。
(15)接着剤は、のりしろの真ん中付近に厚く塗布し、圧締したとき接着面の脇からはみ出る程度がよい。
(16)垂直壁に接着作業する際には、多少の垂れを考慮し、接着剤は接着面の中央より少し上の方に接着剤を塗布することとする。
(17)接着剤を塗布するときは、片方から一回で塗布し、折り返しの塗布は、接着面の均一な塗布ができなくなる。(慣れが必要)
(18)はみ出した接着剤を掻き取った場合、硬化後の接着剤の収縮により接着不良の原因になることがあるので、はみ出した接着剤は掻き取らない方がよい。
(19)気温が20℃であれば、接着後24時間すれば、電線布設可能となる。
(20)気温が5℃以下の場合、接着作業はすべきではない。


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