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第3 接着させる部材(被着材)の選定
3.1 接着剤利用の可能性の検討と接着部材の絞り込み
 電装工事に接着剤を使用する例として、フラットバーの取り付け、コーミングの取り付け、ケーブル脚の取り付け、電線管の取り付け、電子機器台の動揺止め、電線固定金具の隔壁への布設、電線管の接続、ボルト・ナットの緩み止め、電線保護材の貼り付け、小型スイッチ取り付け台(三角台)の10部材のアイデアプランを当協会の会員へ示し、どの利用例が会員にとって最も有益なものかアンケート調査したところ、すべてのものが有益であるが中でも、次の部材について、重要性が高いことが認められた。
 1フラットバーの取り付け、2小型スイッチ取り付け台(三角台)、3コーミングの取り付け、4電線固定金具の隔壁への布設の順で重要性が高いと指摘されているので、これらの部材を中心に調査研究をすすめることとした。
 
3.2 接着させる部材の選定
 上述の接着部材の中から「接着剤利用の可能性が高く、また使用価値の高いもの。」という観点から接着部材の選定を行うこととした。
 接着部材の絞り込みについては既に、昨年の接着剤分科会において議論が進められており、前年度の議論を踏まえ、「これが可能であれば他にも利用できる。」と思われるフラットバーを中心に、各種の試験を実施するものとした。また、使用頻度が高いと予想されるL型フラットバー、小型スイッチ取り付け台(三角台)及びコーミングの4種類を合わせて選定した。
 なお、電線固定金具の隔壁への布設については、フラットバーの取り付けとほぼ同様の試験であるから、また、ボルト・ナットの緩み止めについては、特に課題もないので、これらについては、実部材を用いた接着作業試験は省略することとし、他の部材と同様に、接着作業要領に纏めることとした。
 これらの接着部材の寸法、材質、重量、取付け場所、使用環境、作業環境、接着させる母材及び表面処理等の検討については、前年度の議論を踏まえ実施することとした。
 また、鋼船だけでなくアルミ船、FRP船も考慮し、接着部材は鋼(SS400)、アルミを、接着される母材としては鋼(SS400)、アルミ、FRPとすることとした。
 
3.3 接着作業等に関する事項
(1)本調査研究では、接着の作業姿勢を実際の船舶に合わせて、垂直壁面と天井下面に接着部材を取り付けることとした。作業用の治具等については、鈴木委員(墨田川造船(株))に作成を依頼することとした。
(2)作業時の気温、作業姿勢、熱硬化性の接着剤の場合には熱の加え方、圧締の方法等、様々な接着作業条件については、特定の条件下で実施することとし、この結果から他の条件の場合を予測する程度にとどめた。使用する接着剤は2種類とすることとした。
(3)試験部材を用いた接着作業要領は、磯部、北澤両委員(接着剤工業会)が作成し、両委員の指導の下に鈴木委員(墨田川造船(株))の協力を得て、同社において接着作業を実施することとした。
 接着作業を実施するまえに、磯部、北澤両委員の指導の下に接着作業に慣れるための練習をすることとした。
(4)実船での接着作業は、光原委員(山陽船舶電機(株))と浜崎委員((有)浜崎電機工業所)の協力を得て、接着作業を実施することとした。
 この場合においても磯部、北澤両委員が作成した接着作業要領に基づいて実施することとした。
 接着作業用の部材はそれぞれの担当委員が調達することとし、実船に接着作業を実施するまえに、接着剤工業会の指導の下に接着作業に慣れるための練習をするすることとした。
(5)接着試験済みの部材は製品安全評価センターにおいて試験することとし、その評価の方法は「4.3 接着剤の評価方法」とすることとした。
 
3.4. 接着済み部材・母材の試験方法と接着部材数
 試験部材を用いた接着済み部材・母材の試験方法は、次の通りとした。
 フラットバーを中心に接着済み部材・母材の試験を実施する。フラットバーについては、冷熱サイクル試験、振動試験、塩水噴霧試験、日照試験を実施することとした。それぞれの試験の後、引張り試験を実施することとした。
 コーミングについては、塩水噴霧試験の後、引張り試験を実施することとした。
 その他の部材については引張り試験に止めることとした。
 接着済み部材・母材の試験内容と試験数量は「表3.2 接着済み部材・母材の試験内容と試験数」の通りとした。
(1)冷熱サイクル試験
 フラットバー24組を対象に試験を実施した。
 70℃から-25℃までの温度を繰り返し、それぞれの温度で30分保持した。
 温度の上昇、下降は1℃/1.5分とするため、1サイクルを6時間とし、10サイクル実施した。
(2)振動試験
 フラットバー24組(8組(または7組)ずつに分けて3回)を対象に試験を実施した。
 振動数と振幅  5〜13.2Hzでは±1mm、13.2〜100Hzでは、それより小さくなる。実際には試験物の共振点で実施するが、共振点がなければ、30Hz、0.7Gで、3方向それぞれ2時間実施した。
(3)塩水噴霧試験
 フラットバー24組とコーミング6組を対象に試験を実施した。
 8時間塩水噴霧した後、16時間休止これを3日間繰り返した。
 塩水噴霧は、湿度95%温度35℃に保ちつつ、約5%の塩水を噴霧した。
(4)引っ張り試験
 フラットバー146+4組、L型フラットバー20組、三角台10組及びコーミング32組を対象に試験を実施した。 引っ張り速度50mm/min 最大加重:50kN、クロスヘッド速度:0.05〜500mm/min、クロスヘッドストローク:11,000mm(チャック無し)
 フラットバー24組は(日照試験実施分)は年度の終わり頃実施することとした。
 
3.5 接着試験部材の数量等
(1)フラットバー
アルミフラットバー×母材SS400 17組×2種(接着剤)
アルミフラットバー×母材アルミ 22組×2種(接着剤)
アルミフラットバー×母材FRP 17組×2種(接着剤)
SS400フラットバー×母材SS400 22組×2種(接着剤)
(2)L型フラットバー
アルミL型フラットバー×母材アルミ 5組×2種(接着剤)
アルミL型フラットバー×母材FRP 5組×2種(接着剤)
(3)小型スイッチ取り付け台(三角台)
アルミ三角台×母材アルミ 5組×2種(接着剤)
(4)コーミング
アルミコーミング×母材アルミ 5組×2種(接着剤)
アルミ(FRP)コーミング×母材FRP 5組×2種(接着剤)
 
表3.1 接着部材・母材の材質等
接着部材 材質 寸法等 母材材質 備考
フラットバー アルミ 50×3t L=300 SS400
アルミ
FRP
SS400 50×3t L=300 SS400
L型フラットバー のりしろ有り アルミ アルミ
FRP
三角台 アルミ 三角台足つき アルミ
コーミング 縁有り アルミ 50φ×3t×100 アルミ
縁有り アルミ(FRP) FRP
 
 表面処理については、接着前の表面処理に工数がかかる場合溶接に比べてコスト高となる可能性もあるので、FRPについてはサンディングを、アルミ、鋼については何も行わないこととした。
 
表3.2 接着済み部材・母材の試験内容と試験数
総計 208組
(拡大画面:26KB)
組:部材・母材の組数 2種:接着剤2種類(エポキシ、SGA)
天井:天井に向かっての接着作業 無表示:垂直壁に向かっての接着作業


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