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第4 試験に用いる接着剤の選定
 平成16年度接着剤分科会作業部会において、電装工事における接着工法適用対象についての細部議論を行い、当面の検討対象部材として(1)フラットバー、(2)L型フラットバー、(3)三角台、(4)コーミングを選定し、同年接着試験を実施した。この試験結果を受けて、平成17年度の試験を実施するに当り前年度の試験実績および前年度データとの比較の必要性を踏まえ、平成17年度の試験実施部材および試験接着剤を下記とした。
 
4.1 試験実施部材
(1)フラットバー
(2)L型フラットバー
(3)三角台
(4)コーミング
 
4.2 接着剤の選定
 平成16年度接着剤分科会において、現状の金属用接着剤としてエポキシ樹脂系接着剤、第二世代のアクリル接着剤(以下SGA)、嫌気性、ポリイミド系、シリコーン系、シアノアクリレート系の各成分系接着剤が報告され、このうち嫌気性、ポリイミド系、シリコーン系は用途的に特殊な分野で今回の適用対象には不適当であるとの結論を得た。また、シアノアクリレート系については、作業性は良好であるが耐久性に不安があり、振動や衝撃が予想される上記適用対象にはこれも不適当との結論を得た。
 性能的にバランスが取れており耐久性等にも実績のある接着剤はエポキシ樹脂系接着剤、SGAになるが、当面の適用対象の接着継手形状、表面状態、作業性などを考えた場合、エポキシ樹脂系接着剤が最も適していると思われる。平成16年度は2液常温硬化形エポキシ樹脂系接着剤及びパテ材(ダイアボンドNo.2700、コニシ水中硬化パテ)で試験を実施した。
 エポキシ樹脂系接着剤は、金属用接着剤として最も広範に使用されており、その安定した接着力に期待が持たれたが、期待通り良好な接着性を示し十分な成果が得られた。
 平成17年度については、冒頭に述べた通り前年度実績および前年度データとの比較の必要性上同じエポキシ樹脂系接着剤を選定した。また、平成16年度作業で速硬化の必要性を感じたためクリアランスや接着バラツキに不安はあったが、新たにSGAを追加選定した。
 なお、前年度の経験からエポキシ樹脂系接着剤についてはスランプ性の必要を感じたため、No.2700にダレ防止を付与したダイアボンドNo.2700H(ノガワケミカル(株)製)を試作し、試験に供した。また、SGAは、簡易式ハンドガンを使って簡単に混合塗布が出来るダブルカートリッジタイプのダイアボンドSG380カートリッジ(ノガワケミカル(株)製)を選定した。
 なお、ダイアボンドNo.2700Hのポットライフ(PL)及び硬化時間は次の通りである。
 
温度 PL(100g) 硬化時間
5℃ 90〜120分 72時間
10℃ 60〜80分 36時間
20℃ 30〜40分 24時間
30℃ 15〜20分 12時間
 
 上記数値は目安値であり、低温時は非常に硬化が遅くなる。冬季はNo.2700Hの冬タイプ(硬化促進タイプ)が必要になると思われる。
 
4.3 接着剤の評価方法
 接着剤の評価は大変難しいが、本調査研究においては、エポキシ樹脂系接着剤及びSGAを用いて接着した部材に、環境試験を実施して接着強度を確認することとした。
 環境試験として、冷熱サイクル試験、振動試験、塩水噴霧試験及び日照試験を行い、それぞれの試験後に引張り試験を実施し、接着剤がどの環境において劣化が進むかを確認することとした。
 接着作業済み部材・母材と各試験の組み合わせは次の通りとした。
(1)フラットバーについては、
(a)冷熱サイクル試験の後に引張り試験を実施する。
(b)振動試験の後に引張り試験を実施する。
(c)塩水噴霧試験の後に引張り試験を実施する。
(d)日照試験の後に引張り試験を実施する。
(e)常態での引っ張り試験を実施する。
(2)コーミングについては、塩水噴霧試験の後に引張り試験を実施する。
(3)L型フラットバーと三角台については、常態での引張り試験を実施する。
 なお、本調査研究では環境試験の項目が多く、各試験のサンプル数を多くすることが難しい。このため、それぞれの環境試験の後に行う引張り試験で得られた引張り強度については、破断荷重の平均値ではなく、最も低い破断荷重の数値を参考に接着剤の評価をすることとした。
 
 フラットバーの引張り試験では、接着面を垂直に引張ることが難しいので、ここではフラットバーの中央部に引張りのための治具を掛けて、引き上げる方法を採用した。この試験方法では接着面に垂直な引張り力だけでなく、剪断力等の複合力が同時に加わることとなる。これは純粋な引張り試験とは言えないが、本研究の趣旨からは充分であると考えられる。
 適正に電装工事が終了した後、フラットバーに加えられる力は電線等の荷重だけであるが、実際の電装工事の現場では時に種々な事柄が起こる。「フラットバーに物を掛けてはいけない。」「引張ってはいけない。」としていても、時に作業員が自身の安全フックを掛けることがあるかも知れない。また、作業員が作業中に誤ってバランスを崩しフラットバーにつかまっても、安全であると思われる強度は確保する必要がある。
 これらの理由から、100kg(982N)程度の引張り強度を持っているかどうかが、接着剤使用の可能・不可能の判断の基準になると考えられる。


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