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5. 望まれる教育担当者
 人体関連教科の教育を他機関所属の講師に依頼している場合,機関・学科・専攻における理想的な解剖学関連の教育担当についてどのように考えているかをみると,「将来的には,当該分野において人体関連教育できる人材を養成する必要がある」が40.5%と最も多く,専門的・系統的に指導できる人材養成の必要性を高く認識していることがみられるが,「従来通り,将来も大学医・歯学部出身の解剖学専門の講師が教えるのがよい」も33.1%あった(図7).
 
 
 養成する専門職種別にみると,「将来的には,当該分野において人体関連教科を教育できる人材を養成する必要がある」との認識の高い職種は理学療法士(56.8%)と看護婦(士)(53.1%)で,ともに半数以上となっている.また,「従来通り,将来も大学医・歯学部等出身の解剖学専門の講師が教えるのがよい」という考えが高いのは歯科衛生・技工(65.5%)と診療放射線技師(64.3%),視能・医療言語(57.1%),臨床検査技師(43.8%)であり,特に歯科衛生・技工と診療放射線技師では6割を超えている.
 機関区分別にみると,大学では「将来的には,当該分野において人体関連教科を教育できる人材を養成する必要がある」との認識が6割近く(58.5%)になっており,他の機関とにほぼ15ポイント以上の差がみられる.「従来通り,将来も大学医・歯学部等出身の解剖学専門の講師が教えるのがよい」が比較的高いのは専門学校・養成校(34.4%)であるが,他の機関とに大きな差はみられない.
6. 解剖学教育に関する意見・要望
 最後に,解剖学教育に関して,日頃考えている意見や要望などを聞いた.
 解剖学教育に対する意見・要望は363の機関・学科・専攻より寄せられた.これらの内容は全体的に次のように整理される.
(1)医学・歯学系教員に教育を依頼した場合,養成職種の求める教育内容と異なる教育が展開されている場合があると感じている.
(2)多くの養成機関(特に看護系,理学・作業療法士,診療放射線技師等)において,職種内で人材を早急に養成し,解剖・生理学等の教育を担当できるようになることを望んでいるが,当面は大学の医・歯学部の協力のもと,研修,講習,聴講が可能なシステム創り,施設の整備を強く望んでいる.
(3)養成職種により,体表解剖学,発生学,組織学,X線解剖学,画像解剖学など,教材,テキストを含め,それぞれ多少異なる教育内容の充実を期待している.
(4)生命の尊厳,人命の尊重を理解させるうえで,解剖実習教育は重要と考えている.
(5)解剖学教育は,人体をあつかう職種では重要な基礎教科と考えている.
 
考察
 本調査の結果から,人体関連教科の総授業時間数に違いはあるものの,すべての養成職種において解剖学関連の実習が行われており,実習を含む解剖学関連教育を重要なものと理解していることが確認された.このことから,実習用遺体及び標本の管理に関する規律を守るための原則を,今後さらに明確にするとともに,実習施設,場所,及び教育を担当する人材の確保も含めて,将来を見据えた見直しが必要であろう.


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