3. 解剖実習
次に,解剖実習の状況を明らかにするために,解剖実習の有無,実習内容,実習場所,及び科目毎の年間実習時間を聞いた.
解剖実習を行っているのは55.9%の機関・学科・専攻で,養成する職種別にみると作業療法士(100%),理学療法士(98.2%),あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師(91.7%)で多く,臨床検査技師も8割を占めている(図3).
図3. 解剖実習の有無
解剖実習の内容をみると,「解剖遺体の観察(見学)」が74.2%で最も多く,「人体模型による実習」が39.4%と続いているが,「動物の解剖」や「遺体解剖行為を含む実習」などは1割台と少ない.
解剖実習を行っている場所をみると,「非常勤の担当教員が所属する機関の実習施設」(46.4%)と「機関内の実習施設」(45.4%)に二分されているが,「その他の施設,資料館,博物館」も20.0%あった.
年間実習時間をみると,「肉眼解剖学の実習」では「15時間未満」(45.6%)が半数近くあり,「実習していない」は「無回答」と併せると2割近くあった.
「組織学の実習」では,「実習していない」が45.3%と半数近くあり,実施している時間数も「15時間未満」が27.9%,「30時間未満」が14.1%と少ない.
「その他の授業科目」も「組織学の実習」と同様,「実習していない」(49.0%)が半数であり,実習している時間数も「15時間未満」が15.1%となっており,少ない時間数となっている.
4. 人体関連教科の担当教員
人体関連教育を考える時,授業内容と同様に,教科を担当する教員も重要である.現在担当している教員の所属などを聞いた.
人体関連教科を担当する教員の所属をみると,「他機関所属の非常勤講師」が68.5%であり,「機関所属の教員」(41.6%)を大きく上回っている(図4).
図4. 人体関連教科の担当教員(N=907)
「他機関所属の非常勤講師」が具体的にどのような属性なのかをみると,「医学・歯科大学(学部)の教授」(30.1%),「医学・歯科大学(学部)所属の講師」(26.8%),「病院勤務医」(25.7%),「医学・歯科大学(学部)所属の助教授」(20.4%),「医学・歯科大学(学部)所属の助手」(20.4%)となっており,医学・歯科大学(学部)所属の現職者への依存が大きい(図5).
図5. 非常勤講師の属性
機関の区分別にみると,「機関所属の教員」が「大学」では94.1%であるのに対し,「短期大学」では69.5%,「高校」では42.9%と減少し,「専門学校・養成校」では26.3%である.逆に「他機関所属の非常勤講師」とする割合は,「専門学校・養成校」で80.7%,「高校」で63.1%であり,人体関連教科の遂行にあたっては他機関に依存している現実が浮かび上がる.
人体関連教科の授業を他機関所属の講師に依頼している場合の講師確保状況をみると,「講師確保は比較的容易」とする割合が40.3%と最も多く,「講師の確保は容易」(8.6%)と併せると約半数が「容易」と答えている.
また,「講師の確保はやや困難」と「講師の確保はきわめて困難」を併せると,「困難」とするのは3割未満である(図6).
他機関所属の講師確保が困難な理由としては「解剖学を指導できる人材不足」や「授業時間調整の困難さ」「地理的な問題」,「講義時間の多さ」,「講師料の安さ」,及び「国公立医療機関の兼業制限」などが挙げられている.
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