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4. 主なコメディカル教育関連記事
a. 医療技術者養成機関における人体関連教育に関する実情調査
1997年10月(解剖学雑誌72巻5号475-480pp)
 
b. アンケート調査「コメディカル教育への参加・協力の現状」の集計結果について
1999年6月(解剖学雑誌74巻3号379-392pp)
 
c. 医療技術系学生は解剖遺体見学実習から何を学ぶか
―広島県立保健福祉短期大学3学科学生の実習後の感想文の分析から―
1999年12月(解剖学雑誌74巻6号643-647pp)
 
d. 千葉大学におけるコメディカル学生の解剖実習見学に対する意識調査
2002年12月(解剖学雑誌77巻4号77-80pp)
 
解剖学雑誌 第72巻 第5号 1997年10月
解剖誌72:475-480(1997)
寄書
医療技術者養成機関における人体関連教育に関する実情調査
外崎 昭1),小林 邦彦2),塩田 俊朗3),高木 宏4),渡辺 皓5)
 
1)山形大学医学部解剖学第一講座,2)名古屋大学医療技術短期大学部理学療法学科,3)帝京大学医学部解剖学第二講座,4)大阪市立大学医学部解剖学第一講座,5)山形大学医学部看護学科基礎看護学講座
 
はじめに
 近年,医療技術を学ぶ若者に対する国民の期待が高まり,多くの養成機関,大学・短大,専門学校が設置され,既に現実となった長寿化福祉社会に期待される優秀な人材が輩出されている.
 一方,医療技術に関するほとんど全ての教育分野において,人体に関する,あるいは人体そのものの構造を対象とする授業科目が含まれており,それらの円滑で効果的な実施のため,施設,設備,人材の確保等,教育現場にはさまざまな課題があると考えられる.
 この度,社団法人日本解剖学会並びに篤志解剖全国連合会の協力のもとに,「医療技術者養成機関における人体関連教育に関する実情調査」を計画し,実施することとなった.
 本調査の目的は,多様な設立趣旨をもつ医療技術者養成機関における解剖学を主とする人体関連教育の実情を調査することから,各養成機関が抱える課題を明確にし,さらに,これらの課題を総括し,将来の教育環境の整備に向けて関係当局に対し有効な提言を行うことにある.
 
I. 調査の概要
1. 調査実施主体
「医療技術者養成機関における人体関連教育(解剖学)に関する実情調査」研究班
2. 調査項目
(1)養成機関の属性(養成する専門職種を含む)
(2)人体関連教育の授業について
(3)解剖実習について
(4)人体関連教育の担当教員について
(5)解剖学教育に関する要望等
3. 調査対象機関と調査方法
 厚生省及び文部省で発行している医療技術者養成施設名簿に記載されている機関で,学科・専攻単位に2,361件(表1)を対象とし,調査票を郵送で依頼し,郵送で回収する郵送法を用いた.
4. 調査期日と回収状況
 調査期日は,平成9年1月下旬に発送・依頼し,平成9年2月中旬に回収した.回収された有効調査票は907件で,回収率は38.4%であった.養成する職種別,及び機関区分別の回収状況は表1の通りである.
5. 分析上の留意点
 調査結果を分析する際,ブロック(地域),及び養成する専門職種について次のように類型化している
 まず地域については,全国を「北海道・東北」(北海道,青森県,岩手県,宮城県,秋田県,山形県,福島県),「関東」(茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県),「中部」(長野県,新潟県,富山県,石川県,福井県,岐阜県,静岡県,愛知県,三重県),「近畿」(滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県),「中国・四国」(鳥取県,島根県,岡山県,広島県,山口県,徳島県,香川県,愛媛県,高知県),及び「九州」(福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県)の6ブロックに分類している.
 次に,養成する専門職種については,調査票では18職種にして記載して戴いたが,保健婦と助産婦を併せて「保健婦・助産婦」,視能訓練士と医療言語聴覚士を併せて「視能・医療言語」,臨床工学技士と義肢装具士,及び救命救急士を併せて「臨床・義肢等」,歯科衛生士と歯科技工士を併せて「歯科衛生・技工」,あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師と柔道整復師を併せて「はり・柔道整復」とし,「看護婦(士)」,「准看護婦(士)」,「診療放射線技師」,「臨床検査技師」,「理学療法士」,及び「作業療法士」の11職種に類型化した.
 
II. 調査結果
1. 対象機関・学科・専攻の属性
 調査対象機関の概要を明らかにするために,まず,機関の正式名称(学科・専攻),区分,就学年数,及び養成する専門職種を聞き,機関名称よりブロック(地域)を設定した.
 回収された907調査票をブロック(地域)別にみると,「関東」が22.1%と最も多く,次いで「中部」が18.4%,「九州」16.6%と続いている.
 対象機関の区分では「専門学校・養成校」が最も多く65.0%,次いで「短期大学」が14.4%,「大学」が11.1%であった.
 
表1. 養成職種別・機関区分別 回収状況
職種 配布状況 回収状況
大学 短大 高校 各種等 合計 回収数 回収率
看護婦(士) 46 84 52 485 667 233 34.9
准看護婦(士) 130 446 576 162 28.1
保健婦 44 15 45 104 49 47.1
助産婦 21 31 50 102 40 39.2
診療放射線技師 7 17 14 38 27 71.1
臨床検査技師 29 45 74 45 60.8
理学療法士 9 16 3 54 82 55 67.1
作業療法士 9 14 37 60 36 60.0
視能訓練士 2 9 11 5 45.5
臨床工学技士 1 2 12 15 11 73.3
歯科衛生士 11 125 136 71 52.2
歯科技工士 3 69 72 37 51.4
あん摩マッサージ指圧師
・はり師・きゅう師
1 2 25 28 16 57.1
柔道整復師 14 14 8 57.1
義肢装具士 4 4 2 50.0
救急救命士 3 3 3 100.0
医療言語聴覚士 14 14 7 50.0
看護学校(進学課程) 361 361 98 27.1
(回収調査票で不明分) 2
合計 140 221 188 1,812 2,361 907 38.4
機関区分別 回収数 101 131 84 591
回収率 72.1 59.3 44.7 32.6
 
 養成する専門職についてみると,多い順に「看護婦(士)」(36.5%),「准看護婦(士)」(17.9%),「歯科衛生士」(7.8%),「理学療法士」(6.1%)であった.
2. 人体関連教育の授業
 人体関連教育内容の実態を把握するために,主な授業内容,及び,科目毎の年間授業時間数(実習時間を含めた総時間数)を聞いた.
 
 
 人体関連教育の主な授業内容は,「肉眼解剖学(骨,脳解剖を含む)」が36.6%,「肉眼解剖学および組織学」が33.2%であり,「その他」との答えは24.6%あった(図1).「その他」の具体的な内容をみると,看護系では「解剖生理学」,診療放射線技師では「X線解剖学」と「画像解剖学」,歯科衛生・技工では「歯の解剖学」,助産婦では「生殖の形態機能」などであった.
 養成する専門職種との関係をみると,「肉眼解剖学および組織学」が多い職種は「臨床検査技士」(88.9%),「臨床工学技士・義肢装具士・救急救命士」(56.3%),および「歯科衛生士・歯科技工士」(49.1%)であり,「肉眼解剖学」が多い職種は「診療放射線技師」(63.0%),「あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師」(62.5%),「理学療法士」(58.2%),「作業療法士」(52.8%),「視能訓練士・医療言語聴覚士」(50.0%),および「看護婦(士)」(44.4%)である.また,「准看護婦(士)」と「保健婦・助産婦」では「その他」が多く,その具体的内容としては「解剖生理学」が大半であった.
 
 
 人体関連教育の年間授業時間数をみると,「肉眼解剖学」については72.1%の機関・学科・専攻で開講しており(図2),年間総授業時間数は「30時間以上60時間未満」と「60時間以上90時間未満」27.8%と最も多く,「90時間以上」も26.5%であった.
 「組織学」については35.1%の機関・学科・専攻で開講しており,年間総授業時間数は「15時間未満」が33.0%と最も多く,「15時間以上30時間未満」29.2%,「30時間以上60時間未満」28.3%となっている.
 「その他」の授業科目については40.2%の機関・学科・専攻が開講しており,年間総授業時間数は「60時間以上90時間未満」が28.2%,「30時間以上60時間未満」24.9%となっている.


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