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2.5 干潟環境の現状
 盤洲干潟、小櫃川河口域で確認された生物は、植物約350種、野鳥128種、魚類60種、底生動物約40種、特に今や地球上でこのアシ原のある局地的な場所にしか棲息しない昆虫(キイロホソゴミムシ)も発見され、学術的にも貴重な財産といえる(千葉県環境部の調査報告書による)。
 
(1)植生
 図1.7に河口干潟周辺の植生の生育状況を示す。後浜干潟は、主に葦原であり、前浜との境界付近にハマヒルガオ、コウボウシバ、ハママツナ、シオクグなど様々な植物が生育している。
 一方、千葉県自然環境保全学術調査書(1996 年)によれば、盤洲干潟(小櫃川河口干潟)には、海浜性植物群落、塩湿地性植物群落、ヨシ・アイアシ群落、草原性群落、人里植物群落、木本性群落などがあり、ハマヒルガオ、ハママツナ、シオクグなど41 科145 種が確認されている。
 
図2.7 干潟の植物分布
(拡大画面:174KB)
出典:小櫃川河口干潟ガイドブック(干潟まつり実行委員会発行)
 
 
図2.8 河口干潟によく見られる植物
 
ハママツナの紅葉
 
ハマヒルガオ
 
テリノイバラ
 
葦原が広がる後浜干潟
 
シオクグ
出典:小櫃川河口干潟ガイドブック(干潟まつり実行委員会発行)
 
(2)動物他
 また、後浜にはアシハラガニ非常に多く生息している。前浜干潟には、コメツキガニ、ヤマトオサガニ、マメコブシガニ、ウミニナなどが見られ、干潟の土中にはアサリ、バカガイ、ハマグリ、マテガイやゴカイ類、ニホンスナモグリなどが生息している。また、コアマモ場がかつて広がっていたが、最近では減少してしまった。生息する生き物の状況を図2.9に示す。
 
図2.9 干潟の生き物
(拡大画面:252KB)
出典:成田篤彦 千葉県木更津市周辺の潮干狩りの生物 うらべ書房
 
図2.10 コアマモとウミニナ(現地撮影)
 
 また、盤洲干潟(小櫃川河口干潟)において、千葉県自然環境保全学術調査書(1996 年)によれば、鳥類が1990年6月から1995年5月の5年間に、コアジサシ、ハマシギ、カワウなど128種が確認されており、このうち普通に観察されるものが年間100種いる。魚類はヒメハゼ、トビハゼ、アカエイなど64 種の海水および汽水性のものが確認されている。底生動物はアサリ、ウミニナ、アシハラガニなど129種が確認されている。昆虫類は54科129種が確認されており、その中で河口性、海岸性、海岸砂地性などの種が生息している。特に重要なものとしては、オサムシ科のゴミムシ類が7 種あり、中でもキイロホソゴミムシは世界でここが唯一の生息地といわれている。(木更津市環境基本計画H15より)
 
図2.11 干潟で観察できる主な鳥
 
カワウ
 
スズガモ
 
ヨシガモ
 
オナガガモ
 
シロチドリ
出典:成田篤彦 千葉県木更津市周辺の潮干狩りの生物 うらべ書房
 
(3)水質(木更津市環境基本計画)
 小櫃川のBODの平成13年度の各調査地点の測定結果は、概ね環境基準を満たすものであったが、一部の調査地点では環境基準値を超えていたこともあった。各調査地点のBODの年平均値の推移をみると、上流部から下流部まで大きな変化はなく、多少の増減はあるもののほぼ横ばい傾向である。
 平成13年度の環境基準達成率は全体としては高いものの、全窒素の達成率が、環境基準値の厳しい北東部の海域で低い。CODの各調査地点の年平均値の推移をみると、平成11年度を除くとほぼ横ばいの傾向である。
 
(4)水辺環境と市民(木更津市環境基本計画より)
 小櫃川の河口には盤洲干潟(小櫃川河口干潟)があり、春〜11月には毎月1回干潟観察会、毎年春と秋に干潟クリーン作戦(干潟の清掃と野鳥の観察会)が開かれている。
 鳥居崎から牛込にかけての海岸は干潮時には沖合数百メートルまで自然干潟が続き、3月中旬から8月にかけて潮干狩りの場となっているほか、沖合いでは、張りめぐらした竹の簀のなかに追い込まれた魚を手づかみにしたり、タモですくったりする簀立て遊びが行われている。
 木更津港から潮浜公園〜木材港にかけての防波堤は釣りの場として多くの人が利用しているほか、潮浜公園は海岸沿いに散歩道が整備されている。
 また、木更津市環境基本計画書において、優れた景観として、「盤洲干潟(小櫃川河口干潟)は塩性湿地植物群落などを背後にもった干潟で、水鳥や他の動物の種類も多く、東京湾岸の自然をうかがうことのできる数少ない場所」であると評価している。
 
2.6 干潟域の環境保全をめぐる動き
(1)木更津市基本計画
 木更津市では、その基本計画(総合5ヵ年計画2000〜2004年)において、盤洲干潟周辺の海岸域を次のように位置づけている。
 市の自然環境として、特に小櫃川河口干潟を挙げ、「小櫃川河口干潟に代表されるように豊かな自然環境を有しています。特に、河口干潟には、希少性の高い、学術的にも貴重な動植物が生息しています。」として、課題として、「東京湾に残された唯一の自然干潟である小櫃川河口干潟をはじめ、恵まれた自然環境を次世代に継承していく必要」があることをあげている。
 このような、現状・課題の認識に基づき、「身近な自然環境を大切にする意識を醸成し、自然環境の保全・維持を推進」し、「自然海岸線については、保全整備を進めるとともに、市民の憩いの場、教育の場としての活用」を図ることを基本方針とした。具体的には、
■自然環境の保全
・河口干潟の自然環境保全地域指定に向けての各種関係団体との調整を図ること。
・河川、海岸の保全整備や、雨水利用、生活排水対策等による保全の推進
・市民の環境保全意識の啓発、市民との協力・連携による自然環境の再認識
■自然の活用
・自然環境との調和を図りながら、観光・レクリエーション面における活用を推進する。
・自然とのふれあいを通じてボランティア活動による身近な自然環境の維持・継承を図る。
 一方、沿岸に関連する漁業の施策として、観光漁業の推進を上げ、潮干狩り、すだて等の既存の観光漁業の振興を図り、アクアラインを活用した新たなレジャー・レクリエーションとしての観光漁業を検討するとしている。


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