2)試験・観察項目別の結果
(1)物理条件
表II.5.2-10には、物理条件各項目の計測結果を示した。
処理海水量は、スリット部流速40m/sで1時間当たり約20m3弱である。また、圧損は0.9MPa弱であった。
表II.5.2-10 |
IMO排出基準対応システムの試験における物理条件各項目の計測結果 |
試験名 |
回数 |
測定日 |
スリット幅
[mm] |
注入
オゾン量
[g/hr] |
海水
流量
[m3/hr] |
スリット部流速
[m/s] |
スリット圧損
[kPa] |
圧損
係数 |
オゾン1mg/L(1) |
1st |
10月12日 |
- |
20.53 |
16.0 |
- |
- |
- |
オゾン1mg/L(2) |
2nd |
10月12日 |
- |
20.53 |
15.7 |
- |
- |
- |
オゾン1mg/L
+スリット(幅0.3mm)(1) |
1st |
10月12日 |
0.3 |
20.53 |
18.8 |
38.52 |
868.8 |
1.137 |
オゾン1mg/L
+スリット(幅0.3mm)(2) |
2nd |
10月12日 |
0.3 |
20.53 |
18.2 |
37.28 |
877.5 |
1.226 |
オゾン2.5mg/L(1) |
1st |
10月24日 |
- |
49.56 |
15.9 |
- |
- |
- |
オゾン2.5mg/L(2) |
2nd |
10月24日 |
- |
49.12 |
16.1 |
- |
- |
- |
オゾン2.5mg/L
+スリット(幅0.3mm)(1) |
1st |
10月24日 |
0.3 |
49.38 |
18.5 |
37.83 |
872.4 |
1.184 |
オゾン2.5mg/L
+スリット(幅0.3mm)(2) |
2nd |
10月24日 |
0.3 |
49.10 |
18.4 |
37.63 |
823.7 |
1.130 |
オゾン5mg/L(1) |
1st |
10月14日 |
- |
95.44 |
15.0 |
- |
- |
- |
オゾン5mg/L(2) |
2nd |
10月14日 |
- |
95.92 |
15.2 |
- |
- |
- |
オゾン5mg/L
+スリット(幅0.3mm)(1) |
1st |
10月14日 |
0.3 |
97.83 |
17.8 |
36.39 |
834.6 |
1.224 |
オゾン5mg/L
+スリット(幅0.3mm)(2) |
2nd |
10月14日 |
0.3 |
98.39 |
18.5 |
37.97 |
780.0 |
1.051 |
オゾン5mg/L(スリット部流速:約30m/s)(1) |
1st |
10月26日 |
- |
83.13 |
11.7 |
- |
- |
- |
オゾン5mg/L(スリット部流速:約30m)(2) |
2nd |
10月26日 |
- |
82.87 |
12.2 |
- |
- |
- |
オゾン5mg/L
+スリット(幅0.3mm)(スリット部流速:約30m)(1) |
1st |
10月26日 |
0.3 |
84.46 |
13.6 |
27.81 |
564.1 |
1.417 |
オゾン5mg/L
+スリット(幅0.3mm)(スリット部流速:約30m)(2) |
2nd |
10月26日 |
0.3 |
83.22 |
14.3 |
29.32 |
559.4 |
1.264 |
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但し、「-」はスペシャルパイプの処理せず、或いはオゾン注入せず。
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(2)水質
水質メーターによる水質測定結果は、巻末 参考資料2.に収録した。なお、オゾンの分解に影響する未処理原水の有機物量は、溶存有機炭素(DOC)が1mg/L前後(0.9〜1.2mg/L)、粒子状有機炭素(POC)がいずれも検出限界以下(0.5mg/L以下)であった。
水質測定結果の中で、特徴的結果は溶存酸素の変化である。オゾン濃度1.0mg/ 、スリット部流速40m/sの試験での溶存酸素量は、処理直後から処理1日後まで増加し、その後、処理3日後には低下した。この変化は、オゾンを注入することで直後の水中の溶存酸素量を増加させ、その後は、植物による光合成活動が行われない暗条件下での貯蔵のため、時間経過と共に減少することを表している。この溶存酸素の変化はオゾン濃度2.5mg/ 及び5.0mg/ 、スリット部流速40m/sの試験でもみられた。
その他の項目では、処理直後のサンプルに関して、スペシャルパイプで処理しないコンロトールの方がスペシャルパイプで処理したサンプルよりも濁度が高い傾向が見られた。この理由は、スペシャルパイプで処理した場合には、その粒子粉砕力により粒子が全体的に小型化し、光が透過し易くなったためと考えられる。
(3)溶存オゾン濃度
溶存オゾン濃度の測定は、注入時のオゾン濃度5.0mg/ 、スリット部流速40m/sの試験を対象に2回行った。表II.5.2-11には、測定結果を示した。
2回目の測定は、1回目の試験における0〜10分後のオゾン減衰が大きかったため、その10分間での減衰状況を再度調べるために行ったものである。この試験から、本システムにおけるオゾン溶解性能が低く、オゾン注入直後でもオゾン濃度が低いこと、及び水中のオゾンは最初の30秒間で大きく減衰することがわかる。
表II.5.2-11 |
IMO排出基準対応システム試験における溶存オゾン濃度測定結果 [mg/L]
(注入オゾン濃度:5.0mg/L) |
計測日 2004/11/16 |
計測日 2004/11/17 |
1回目 |
2回目 |
オゾン注入後の経過時間
[分] |
溶存オゾン濃度
[mg/L] |
オゾン注入後の経過時間
[分] |
溶存オゾン濃度
[mg/L] |
0 |
0.28 |
0 |
0.46 |
10 |
0.05 |
0.5 |
0.04 |
15 |
0.06 |
1 |
0.01 |
20 |
0.05 |
1.5 |
0.03 |
30 |
0.01 |
2 |
0.04 |
35 |
0.02 |
2.5 |
0.04 |
45 |
0.05 |
5 |
0.07 |
60 |
0.03 |
8.3 |
0.01 |
90 |
0.04 |
|
|
120 |
0.02 |
|
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(3)貯留タンク内の気相オゾン濃度
表II.5.2-12には気相オゾン濃度測定結果を示した。
貯留タンク内の気相のオゾン濃度は、注入したオゾンの濃度に関わらず測定結果が同じであった。これは、貯留タンクに規定量を貯留してから約5分後に測定したため、既に分解あるいは気相への散逸が進み明確な差が現れなかったためと考えられる。
なお、別途試験で貯留直後に測定した場合には、検知管の測定上限を超える濃度であった。この結果は、本システムのオゾン溶解性能が低いこともあり、極短時間で多くのオゾンが気相に散逸していたことを示している。この結果からも、今後の改良点は、オゾンの溶解性能向上にあると考えられた。
表II.5.2-12 |
IMO排出基準対応システム試験における貯留タンク内の気相オゾン濃度測定結果 |
試験条件 |
注入時
オゾン濃度 |
コントロール水 |
スペシャル
パイプ処理水 |
スリット幅:0.3mm
スリット部流速:40m/s |
1.0mg/ |
0.05 |
0.05 |
5.0mg/ |
0.1 |
0.1 |
|
“コントロール水”とはオゾンが注入されスペシャルパイプで処理されていない海水をいう。 “スペシャルパイプ処理水”はオゾン注入後スペシャルパイプで処理された海水を表す。
測定は貯留タンク貯留後約5分後に行った。
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