シンガポール海峡・インドネシア海域で海賊襲撃事件相次ぐ
国際海事局(IMB)海賊事件報告センターによると、シンガポールの港の東部境界線付近の海域で先週、タンカーがナイフなどで武装した海賊グループに襲われ、現金など貴重品が強奪される被害が報告された。24日には、インドネシアのバリックパパン港沖で、タンカーが、銃やナイフで武装した3人の海賊に襲撃される事件も報告されており、インドネシア、マレーシア、シンガポールの3カ国が国境を接する海域では最近、海賊被害が相次いでいる。
シンガポール海峡では今月初め、インド船籍のタンカーが海賊に襲撃され、乗組員全員が縛り上げられたことから、多くの船舶が行き交う同海峡で1時間にわたり無人状態で航行する事件が発生した。この事件発生を受けIMBは、同海峡で再び同様の事件が発生した場合に、周辺の環境に壊滅的な被害を与える可能性を警告していた。
(2003年11月28日 時事速報シンガポール)
インドネシアで発生した海賊事件、テロ行為と保険業者がみなす可能性も
保険業者トーマス・ミラーの東南アジア支部取締役ニコラス・サムソン氏は、混乱が続いているインドネシアのアチェ沖で船舶が海賊に襲撃された場合、海上保険業者は事件を海賊行為ではなくテロ行為とみなし、汚染や乗組員の負傷・死亡に関する補償の適用されない可能性があると述べた。
当初は海賊事件と思われたケースが、調査の結果テロ行為とされることもあり、船主は十分な補償があることを考慮する必要があると同氏は述べた。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、損保各社(またはP&Iクラブ)はテロ事件の場合は積荷や乗組員に関する補償が適用されないと設定している。
海賊行為は通常のP&Iクラブ保険の補償範囲であるが、テロ行為は戦争危険区分に入り、追加の保険料を支払わなければならない。
最近、アチェ沖で発生している海賊行為は、インドネシアからの独立を求める自由アチェ運動(GAM)による犯行であると疑われている。
過去数ヶ月間に油・ガスタンカーがアチェ沖で襲撃される事件が多発しており、マレーシア船籍のタンカーPenrider号が身代金目当てにハイジャックされる事件も発生した。
国際海事局(IMB)のムクンダン局長は、GAMが活動資金に充てるために海賊行為に関与している証拠が次々にみつかっており、事件を「政治的海賊」と分類している。
現在インドネシア海域は(マラッカ海峡を通航する船舶を除く)、船舶戦争保険対象地域になっているため、追加の船体保険料が課されている。テロ行為発生時の積荷、乗組員、汚染、沈船除去等の補償をカバーするには、戦争P&I補償が必要であり、結果、インドネシア海域、そしてマラッカ海峡でもテロ行為に遭った場合は、船体戦争保険と戦争P&I保険のカバーが不可欠ということになる。
サムソン氏は、大手運航会社は十分な補償があるが、沿岸船を運航している小規模の船主は追加の補償を付けていないと述べた。
インドネシア政府は、インドネシア船籍の船舶に乗船していたインドネシア人乗組員については補償プログラムがあるとしているものの、この補償がテロ行為にも適用されるかどうかは定かでない。
(2003年11月28日 シッピング・タイムズ)
シンガポールと日本の警察がハイジャックされた(と想定された)乗組員を解放
昨日シンガポールのイーストコースト公園沖で、重々しく武装したシンガポール警察沿岸警備隊の特殊部隊が、ハイジャックされた(と想定された)日本の貨物船に突撃した。シンガポール沿岸警備隊が日本の海上保安庁と合同訓練を実施するのは初めて。
両国から警察の精鋭人質救助部隊を含む総勢119名の職員が半日の訓練に参加し、ハイジャックされた(と想定された)乗組員を解放した。
訓練は、乗組員からの聴取と船内捜索を支援するため、日本海上保安庁の職員が空から貨物船に乗り込んで終了した。
昨日の訓練の成功を受け、海賊抑制や世界で広まるテロの脅威に立ち向かうため、今後より多くの海上訓練が予定されている。
シンガポール警察沿岸警備隊のジェリー・シー指揮官は、「今日の日本との合同訓練は、他の海上警備機関と訓練し、犯罪対策経験を共にするよい機会になった」と述べた。
シンガポール領海は安全であるものの、ロンドンに拠点を置くIMB(国際海事局)は、最新の海賊情報レポートで、マラッカ海峡やビンタン島沖の海域を含むインドネシアの一部海域で引き続き海賊事件が多発していると報告している。
日本にとっても、石油・原料・輸出品のほとんどがこの海域を通じて輸送されていることから、シーレーンのセキュリティは関心事である。
海賊やテロの脅威が拡大していることから、日本は2000年以降10隻の巡視船を東南アジア海域に派遣している。
これらの巡視船のなかには、過去数年間にシンガポールに寄港したものもあったが、昨日訓練に参加した「みずほ」は今回初めて海上訓練に参加した。
「みずほ」の下川宏船長は、「今回の訓練を通じて、シンガポール警察沿岸警備隊と日本海上保安庁が今後より緊密に協力するための強い基盤ができたと実感している」と述べた。
(2003年12月5日 ストレート・タイムズ)
シンガポール警察沿岸警備隊(PCG)と日本海上保安庁(JCG)の合同部隊は昨日、シンガポールの東海岸沖で海賊対策合同訓練を実施した。
2時間にわたる訓練には、PCGの9隻の巡視艇とJCGの巡視船「みずほ」(5,300トン・ヘリコプター2機搭載)が参加した。PCGの発表によると、今回の合同訓練の目的は、相互協力の強化と海上セキュリティに関する両者の理解を深めることである。
訓練は、ハイジャックされ、行方不明になったと報告されていた日本の貨物船が発見され、PCGとヘリコプターによるJCGの部隊が乗り込むという想定で実施された。
シンガポールが日本と合同訓練を実施するのは初めてだが、日本は2000年以降東南アジアの国々と合同訓練を繰り返しており、これまで10隻の巡視船を派遣している。
「PCGは、海上強盗・海賊対策に深く関わっている。海上強盗や海賊は海上セキュリティに対する脅威であり、我々はこのような活動を許容しない」とPCGのジェリー・シー指揮官は述べた。
PCGの発表には、「海上強盗やテロ対策には地域の協力が重要であると強く認識している」と記され、インドネシア等の地域各国と定期的に合同訓練を行っているとしている。
シンガポール領海内で最後に海賊事件が発生したのは1990年7月25日のことで、貨物船RAIGAD号が襲撃された。シンガポールに近いインドネシア領海では引き続き海賊事件が多発しており、2週間前にはチャンギ海軍基地の南側にあるイースタン・ポート・リミット付近でも海賊事件が発生している。
(2003年12月5日 シッピング・タイムズ)
日本の海上保安庁とシンガポール警察沿岸警備隊は4日、「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づき、海賊対策に向けた連携訓練を実施した。両国が同様の提携訓練を行うのはこれが初めて。5日付ビジネス・タイムズなどが伝えた。
シンガポールの東海岸沖で実施された訓練には、両国から精鋭の人質救出チームを含む計119人、巡視船10隻が参加した。日本からは巡視船みずほ(総トン数約5万3,000トン)が派遣された。
訓練では、シンガポールの領海で船舶がシージャックされたというシナリオを想定。日本側の巡視船をハイジャック船に見立て、巡視船、ヘリコプターによるシージャック犯の捕そく・制圧訓練、被害者救出訓練を行った。
「アジア海賊対策チャレンジ2000」は、2000年にアジア地域15の国・地域が参加して開かれた海賊対策国際会議で、今後の海賊事件への取り組み指針として採択されたもの。日本は2000年以来、マレーシアやフィリピン、インドネシアなど東南アジア10カ国と同様の連携訓練を実施している。
(2003年12月8日 NNA)
事件発生日時:2003年12月1日午後4時頃
事件発生地点:マラッカ海峡北部 スマトラ沿岸(アチェ)沖90海里
被害船の詳細:補給船MV Sea Panther号、ベリーズ船籍、1,132GT、
乗組員14名、所有会社Trinity Offshore、運航会社Agensea
状況:該船は11月30日にシンガポールを出港し、インドのムンバイに向け航行していた。12月1日午後4時頃、4名の武装した海賊がスピードボートで該船に接近し、停止するよう命令した。船長がこれを無視したところ、海賊は該船の操舵装置とフィリピン人乗組員Bato Mary John(27歳)に向かって発砲した。報告によると、当時デッキを清掃していたJohn氏は、胸部に銃弾を受け死亡した。その後、海賊は逃走し、該船はペナンに向かって、地元当局に事件を通報した。該船の所有会社及び運航会社は共にシンガポールに事務所があるが、両社のスポークスマンはコメントを避けている。
IMB(国際海事局)海賊情報センターのチュン所長は、事件は公海上で発生したことからマレーシア海上警察が事件を追う可能性は低いとし、IMBは状況を通知するため、インドネシアに情報を伝えたと述べた。もし今後同様の発砲事件が発生した場合には、IMBは正式な通達を出すとのこと。過去にはIMBからの通達を受け、インドネシア海軍が巡視船を派遣し、一時事態が収拾したこともあった。
IMBは、これまでに何度も商船に対しアチェ付近の海域に近づかないよう警告している。
(2003年12月11日 シッピング・タイムズ)
シンガポールのトニー・タン副首相兼首相府調整相(安全保障・国防担当)は21日、メガワティ・インドネシア大統領との会談後の会見で、深刻化する東南アジア海域での海賊襲撃事件に対し、共同での海上パトロールを強化するなど、両国の協力をさらに緊密化させる考えを明らかにした。
同副首相は、両国間のこれまでの共同パトロールが、両国国境付近の海上の海賊襲撃防止に効果があったと述べる一方で、海賊事件の報告件数が増加しているだけでなく、機関銃を用いるなど襲撃の手口が凶悪化していることを指摘。海賊の襲撃事件でタンカーから石油が流出した場合には深刻な自体を招くに恐れがあると指摘した。同副首相はさらに、航路の安全確保のためには、日本が主導し東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国が参加する多国間の海賊対策プログラムにも、両国が積極的に協力していく方針を示した。
(2003年12月22日 時事速報シンガポール)
港・周辺海域の警備強化=米のテロ警戒レベル引き上げ受け
米当局がテロ発生の可能性に対する警戒レベルを引き上げたことを受けて、シンガポール政府は、同国の港および周辺海域の警備を強化している。しかし、これまでのところ、警備の強化で船舶航行への影響は出ていない。
海事港湾庁(MPA)によると、2001年9月11日の米同時テロ事件以来、同国港周辺の警備が強化されているが、最近の一連の動きを受けて、さらに警戒を強めている。警備の内容については政府関係当局が定期的に見直しを行っており、必要となれば警備内容をさらに厳しいものにする考え。
MPAが01年9月11日以来導入している警備強化策には、(1)重要施設周辺の海域航行の制限(2)フェリー、客船の航路の指定(3)海上パトロールの強化(4)シンガポール海峡での重要な商業船舶の護衛−などがある。MPAだけでなく、警察沿岸警備隊(PCG)も最近、港の警備レベルを一段階引き上げたもようだ。
一方、米国の港は、最近のテロに対する警戒レベル引き上げでも、港の閉鎖には踏み切らず、通常通り営業している。しかし、米沿岸警備隊は、米領海内の商業船舶に対する立ち入り検査や護衛などが拡充されることから、航行スケジュールに遅れが生じる可能性を警告している。
(2004年12月24日 時事速報シンガポール)
昨年8月のマ海峡でのタンカーハイジャック、犯罪組織が関与か?
昨年8月、海賊がマレーシア船籍のタンカーPenrider号をハイジャックし、乗組員2名が誘拐され身代金が要求された。これまでこの事件には、自由アチェ運動(GAM)の関与が疑われ、海賊自らがアチェ国軍であると名乗っていたと伝えられていた。
しかし、警察の調べで、事件は犯罪組織による犯行であることが明らかになった。
先週開かれた会議で、IMB(国際海事局)のムクンダン局長は、「Penrider号事件は、自由アチェ運動による犯行を装って行われた可能性がある」と述べた。
なぜ事件が犯罪組織による疑いがあるとされるのか、その詳細は明らかにされていない。インドネシアの情報筋によると、自由アチェ運動はアチェ解放を目指した政治的な活動に熱心で、海賊事件に関与するとは考えにくいとのこと。また別の情報筋は、警察の迅速な対応によって同様の事件の再発を防止できたとしている。
(2004年1月12日 ロイズリスト)
港内艇に海賊襲撃に対する警備強化を命じる=シンガポール海事港湾庁
シンガポール海事港湾庁(MPA)はこのほど、港内艇の運航会社に宛てた回覧書で、海賊襲撃に遭った場合の対応策を準備するよう命じた。MPAは、特にシンガポールの港の境界海域付近を航行する港内艇は、海賊に対する警戒を強めるよう警告。海賊襲撃への対応策としてMPAは、海賊の襲撃を受けた場合の乗組員の対応や、無線、警報の発信などを盛り込むよう指示した。
今回の回覧書発行についてMPAは、最近シンガポール海峡近くの海域で海賊襲撃事件が相次いでいるのを受けての措置ではないと述べている。
シンガポール領海内では海賊襲撃事件は報告されていないものの、昨年末にかけてシンガポール海峡近くのインドネシア領海内で海賊襲撃事件が連続して発生している。
(2004年1月15日 時事速報シンガポール)
事務所注:回覧書自体は以前に出されており、今回はその細部について変更があった。
マラッカ海峡・インドネシアで、海賊事件が昨年増加―手口も凶悪化
国際海事局(IMB)の2003年の海賊襲撃事件に関する報告書によると、マラッカ海峡で03年に確認された海賊襲撃事件は28件と、02年の16件を上回った。また最も海賊事件が報告された海域は前年に引き続きインドネシアで、インドネシア領海内では昨年121件の襲撃事件が発生し、世界全体の襲撃事件の27%を占めた。シンガポール海峡で03年に発生した海賊襲撃事件は2件だった。
世界全体では、03年に報告された海賊襲撃事件は445件と前年比20%増加した。03年の発生件数は、IMBが1991年に統計を取り始めて以来、2番目に高い数値。昨年は海賊の襲撃の手口もさらに凶悪化し、21人の乗組員が襲撃で死亡し、88人が負傷、行方不明の乗組員と乗客は71人に上った。02年に襲撃で死亡した乗組員は10人で、負傷者は38人だった。
(2004年1月29日 時事速報シンガポール)
被害船名及び詳細:Cherry 201号、総トン数640トン、インド船籍
状況:該船は今年1月5日にベラワン港に向かっていたところ、アチェ沖で武装した海賊に襲われ、乗組員13人が人質にとられた。海賊は身代金4億ルピアを要求することを船主に伝えるため、船長を解放した。
船主は、身代金を1億ルピアに値下げするよう交渉し、その後も話し合いを続け7,000万ルピアを支払うことを約束した。
しかし、1ヶ月以上経っても身代金が届かないことから、海賊は先週乗組員4名を射殺した。残りの9名は海に飛び込んで脱出した。
海賊は自由アチェ運動(GAM)の活動家と疑われている。インドネシア当局が事件の調査にあたっている。
(2004年2月12日 シッピング・タイムズ)
PSA管理下のシンガポール港、IMOの保安コードに対応
シンガポール海事港湾庁(MPA)は11日、政府系港湾管理会社PSAコープが管理するコンテナ・ターミナルが国内で初めて、国際海事機関(IMO)による「船舶および港湾の国際保安コード」(ISPSコード)のテロ対策基準を満たしたことを明らかにした。シンガポールを含むIMOの加盟国は、今年7月までにISPSコードに対応する必要がある。シンガポールは独自にISPSコードの順守期限を4月としている。
ISPSコードでは、船舶や港湾施設に対し、テロなどの危機に対し、スタッフを訓練し、包括的な警備対策を立案することが求められている。ISPSコードへの対応が義務付けられる国際航路の船舶を扱う国内の港湾施設は、今回認定されたPSAのターミナルのほか、クルーズ・センターや造船所、石油ターミナルなど120カ所ある。このうち10カ所がMPAに警備対策プランを提出しているが、ジュロン港を含む他の施設も今月末までに対策プランを提出する見通し。
(2004年2月13日 時事速報シンガポール)
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