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マラッカ海峡利用者がマレーシアに海賊対策援助を申し出
 オーストラリアやほかのマラッカ海峡の利用者が、同海峡における海賊対策援助をマレーシアに申し出ている。
 海賊問題への取り組みが地域や多国間で試みられていること、海賊多発地帯であるインドネシアに対し同国海域内での違法行為の鎮圧に大きな役割を期待できないことから、このような申し出が出された。
 在マレーシアオーストラリア高等弁務官のジェームス・ワイズ氏は、オーストラリア政府が海賊対策援助を差し伸べる意志があることを明らかにした。
 「海賊問題は、越境犯罪が増加していることを証明する深刻な問題であり、オーストラリアももちろん懸念している。海賊や海上治安問題の解決に援助を差し伸べたいと思っている。こういった問題には、国家、地域、多国間で取り組む必要がある」とワイズ氏は述べた。
 この地域で最も多くの援助を差し伸べているのが日本で、最近の状況について日本も懸念を示している。在マレーシア日本大使館の古川博康二等書記官は、昨年20隻の(日本関連の)船舶が国際海域で海賊によるさまざまな被害に遭ったとしている。
 日本にとって、マラッカ海峡は、年間14,000隻の日本船主の船舶が通航する経済ライフラインである。マラッカ海峡を通航することで、日本の貿易業界全体で年間17億5千シンガポールドルに及ぶコストが削減されている。
(中略)
 マレーシア海事研究所(MIMA)のイスカンダー上級研究員は、政府だけでなく、海峡利用者も治安の向上を援助すべきだと述べた。
 「マラッカ海峡の治安に対して支払った国はいくつあるのか?これまで援助を差し伸べてきたのは日本だけである」とイスカンダー氏は述べた。
 2000年以降、海賊問題が深刻化するなか、日本は情報交換や沿岸警備隊の訓練など援助プログラムを実施している。日本海上保安庁の巡視船「やしま」が東南アジアの主要港に寄港している。今年は450万シンガポールが同プログラムに費やされる。
 「我々の主な目的は、日本海上保安庁とマレーシア海上法執行機関との協力を強化すること。一国で海賊問題に取り組むのは不可能、集合的な取り組みが必要である」と古川氏は述べた。
(2003年7月30日 シッピング・タイムズ)
 
マラッカ海峡で2件の海賊未遂事件が発生
海賊未遂事件(1)
状況:先週マラッカ海峡を航行中のばら積み船に、4名の武装した海賊が乗り込もうとしたが、船長が回避行動を取り、海上も荒れていたため、海賊の乗船を防げた。乗組員にけがはなかった。該船は、事件をIMB(国際海事局)海賊情報センターに通報した。目撃者によると、海賊船の船名はCakrac 2、船体は青色でインドネシアの国旗を掲げていた。
海賊未遂事件(2)
状況:海賊未遂事件(1)の2日後、マラッカ海峡を航行していたLPG運搬船がスピード・ボートに乗った海賊に襲われそうになったが、サーチライトで海賊船を照らしたところ、該船への乗船を放棄して、ほかの船を追った。
(2003年8月5日 シッピング・タイムズ)
 
マレーシア テロを阻止、海上・港湾の警備強化
 5日にインドネシア・ジャカルタのJWマリオットホテルで起きた爆弾テロ事件を受け、当局と観光業界がテロに対する警戒態勢を強めている。海上警察は海上パトロールと港湾に出入りする船舶の監視を強化。観光業界団体は旅行客から得た情報などを当局に報告することを決めた。
 海上警察のムハマド・ムダ本部長は6日、サラワク州クチンで開いた記者会見の席上、船舶については貨物だけでなく、船主と乗員についても厳格な監視を始めたと発表。輸出立国であるマレーシアの港湾は貿易船の自由な出入りを認めていることから、「テロリストの侵入があるとすれば、海上ルートの可能性が高い」と警戒感を表明した。
 ムハマド本部長は「テロリストが化学物質の運搬船を乗っ取り、それを使って港湾のふ頭を攻撃してくれば損害は計り知れない」と述べ、テロリストの攻撃を防ぐにはこれまでの警備のやり方を変える必要があると説明。「すべての港湾と海域は危険性が高いと認識すべき」とした。海上警備強化に当たり、海軍や海事局、税関局からは協力を確保済みとしている。
 ムハマド本部長は、「警察は常に国際刑事警察機構(インターポール=ICPO)からテロ情報を得ており、今のところ、テロ活動がマレーシアに上陸したとの情報はない」と述べた上で、「(テロが)過去に発生しなかったからといって、今後起きないということにはならない」としている。
(2003年8月8日 NNA)
 
インドネシア アチェ沖で海賊が台湾漁業母船に発砲 船長が負傷
事件発生日時:2003年8月8日(金)午後5時45分
事件発生地点:インドネシア アチェ沖
北緯5度43分 東経97度44分
被害船名及び詳細:Dong Yih号、漁業母船、Dong Suen Yih Ltd(台湾)運航、台湾人船長ほか乗組員は台湾人9名、中国人8名、フィリピン人13名、ベトナム人1名
状況:インドネシアのアチェ沖を航行していたところ、海賊が該船に向かって1時間近くにわたって自動小銃を乱射した。結局、海賊は攻撃を中止し、逃走した。この攻撃により台湾人船長(Lo Ying Hsiung)が膝を撃たれたほか、操舵装置も損傷。ほかの乗組員にけがはなし。該船は昨夜シンガポールのジュロン漁港へ入港する前に、ジュロン・ウエスト・アンカレッジでパイロットを乗船させる予定だった。負傷した船長がシンガポールで治療を受けるよう在シンガポール台北駐在事務所は手配したと伝えられているが、シッピング・タイムズの質問には回答がなかった。
 IMB海賊情報センターのノエル・チュン所長は、同海域では過去数ヶ月に海賊事件が増加しており、全ての事件で自動小銃が用いられていると述べ、アチェの反乱軍が事件に関与している可能性もあるとした。
(2003年8月12日 シッピング・タイムズ)
 
インドネシア人海賊がタンカーの船長を含め3名を誘拐
事件発生日時:2003年8月10日(日)午後1時半
事件発生地点:マラッカ海峡 マレーシア・クラン港沖約12海里
被害船名及び詳細:mt Penrider号、タンカー、マレーシア(ラブアン)船籍
全長54メートル、シンガポール発ペナン向け
燃料油1,000トン積載
状況:該船がシンガポールからペナンに向け国際海域を航行していたところ、10名の海賊に発砲された。海賊は漁船で該船に接近、AK47とM16ライフルで武装していた。海賊は船長(インドネシア人)に船を止めるよう命令、船が停船した後に乗り込み、船をインドネシア海域に向かわせた。その後、海賊は船長に船主に連絡をとるよう求め、船主は船を解放するよう話を付けたが、海賊は船長、機関長、二等機関士を人質にとり、現金1万マレーシアリンギと携帯電話、船内の書類の一部を奪ってインドネシアに向かって逃走した。二等航海士以下6名の乗組員はマレーシア海域に戻り、11日(月)午後4時50分にペナンに到着した。マレーシア海上警察は、インドネシア当局に事件を報告し、インドネシア当局と緊密に状況を監視しているところであると述べた。海賊は、身代金(10万米ドル)を船主に要求しているとのこと。該船が積載していた燃料油(17万米ドル相当)は無事だったほか、残りの乗組員にもけがはなかった。
(2003年8月13日 スター)
 
海賊事件の背後にアチェ反乱軍?
 8月10日にマラッカ海峡でタンカーが海賊に発砲され、船長のほか乗組員2名が誘拐された事件について、IMB(国際海事局)海賊情報センターのノエル・チュン所長は、人質をとって身代金を要求するケースであるとした。
 また、同所長は、数年前にマラッカ海峡北部で多発した自由アチェ運動(GAM)によるハイジャック・誘拐事件と手口は同様であるが、今回の事件がGAMによるものかどうかはわからないとした。
 同所長によると、普通の海賊はグレネードランチャーを持たないとのこと。また、今回の事件では海賊は貨物に興味を示しておらず、組織的な犯罪シンジケートによる犯行と異なっている。
 IMBは、マレーシア海域に近いマラッカ海峡で新たな海賊グループが活動を始め、ハイジャック事件に新しい動向がみられるのではないかと懸念している。
 インドネシア当局は現在、マレーシア海上警察と緊密に連携している。
 IMBは、マラッカ海峡を通航する船舶に対し、アチェ沿岸を避け、海賊対策の見張りを徹底するよう警告している。
 この警告は、過去4ヶ月間にアチェ沖で8件の海賊事件が報告されたことを受けて出されたもの。
(2003年8月14日 ロイズリスト)
 
Penrider号海賊事件はマレーシア海域で発生
 8月10日にマラッカ海峡で海賊に襲われたタンカーPenrider号(マレーシア船籍)について、該船の船主Syarikat Progresif Cekap Sdn Bhdは、事件はクラン港沖8.5海里のPintu Gudang近くのマレーシア海域で発生したと述べた。(当初の報道では、事件はインドネシア海域で発生したと伝えられていた)また、該船の乗組員は10名で、国籍はインドネシア人8名、ミャンマー人2名。
 誘拐された乗組員は現在もまだ捕われたままだが、解放するよう交渉しているところだと船主は述べた。
(2003年8月13日 マレーシア国営ベルナマ通信)
 
Penrider号事件に海運業界が注目
 マラッカ海峡でインドネシア人乗組員3名が誘拐され、身代金が要求されたマレーシア船籍タンカーPenrider号事件に海運業界の注目が集まっている。
 現地メディアの報道によると、P号船主が身代金20万リンギを支払い、乗組員は解放された。
 事件の発生した海域では過去にも海賊事件が多発しており、今回の事件の犯人が見つかればマレーシアだけでなく、マラッカ海峡を利用する国際海運業界にもプラスになるだろうが、犯人が見つからないまま、このような事件が新たな海賊事件の動向になるのではないかとの懸念の声もある。
 現在マレーシア警察が捜査を進めており、人質になっていた乗組員の事情聴取などから犯人の手かがりをつかんだとしている。海賊は14名のグループで、インドネシア人だったとのこと。また、このほかに4人が犯行に加わった。
 人質になっていた乗組員は先週末、メダンに近いタンジュン・バライ沖で解放された。
(2003年8月19日 シッピング・タイムズ、ストレート・タイムズ)
 
アチェでの海賊による襲撃は、保険業者から、「内戦」とみなされる可能性
 マラッカ海峡で海賊に襲撃された場合は、それがインドネシアのアチェ州からの反乱勢力によるものだとわかった時には、保険会社により、戦争リスクによるクレームと分類されるかもしれない。
 ここ数ヶ月において、ハイジャックや身代金目当ての誘拐を含めて,マラッカ海峡での船舶の襲撃が急増しており、それらはインドネシア国軍に対して独立戦争を戦っているアチェの反乱勢力の仕業だと考えられている。
 英国のP&Iクラブ、東南アジア支社長は、バンコクで、そのような襲撃は海賊によるものではなく、内戦の一部とみなされると語った。自由アチェ運動(GAM)のような反乱勢力は、軍資金を調達するために、民間人を襲ってきたとされている。
 GAMはアチェの海岸を運航する商業船をハイジャックするとも脅迫していた。同氏は、P&Iと船舶保険業者は共に、船主によるどんな保険のクレームも、戦争リスク保険に対するものとみなしうると述べた。
 例えば、船がハイジャックされたり、盗まれて発見されない場合、船員の死亡、船体の評価額がクレームの対象となる。でも、そのような襲撃の目標は、往々にして、戦争リスクカバーでさえ掛けていないかもしれない地方の小型の商用船である。今のところ、アチェの反乱勢力による海賊の襲撃事件が、戦争リスククレームとみなされたものがあるかどうかは明確ではない。
(2003年9月25日 マリタイムアジア)
 
海上でのテロ警戒で、シンガポールと協力=豪運輸相
 オーストラリアのジョン・アンダーソン副首相兼運輸相はこのほど、2001年9月11日の同時テロ事件以来、同国とシンガポール当局が、海上貨物がテロリストに悪用されるのを阻止するため、情報や技術交換などを通じて積極的に協力してきたと述べた。同運輸相は、テロに対する戦いにおいては「情報交換は極めて重要だ」と指摘。シンガポールがオーストラリアに先駆けて、テロ対策に伴う米国向けの貨物検査強化策「コンテナ・セキュリティー・イニシアチブ」(CSI)を受け入れていることから、特にコンテナ検査や封鎖方法、輸送の監視方法などの分野で情報交換を行っていると語った。
 両国を含む国際海事機関(IMO)の加盟国は、2004年7月までに同機関が設定した厳しいテロ対策基準「船舶および港湾の国際保安コード」(ISPSコード)に対応する必要がある。アンダーソン副首相は、オーストラリアが同基準に順守するために急いで準備を進めていると述べ、先週国会に海運保安関連の法案を提出したと説明。しかし、同法の成立までには国会での数回にわたる審議を必要とすると指摘し、厳しい期限内に同法が成立することを望んでいると述べた。
(2003年9月26日時事速報シンガポール)
 
海賊対策に数十億ドル、副首相が提唱
 アブドラ副首相は6日、ジョホール州タンジュンプルパス港(PTP)の機能強化などにより、東南アジア諸国連合(ASEAN)の貨物ハブを目指す立場として、「マレーシアは海の安全強化を最重要事項として認識しなければならない」との考えを示した。アジア海事物流会議に出席したチャン・コンチョイ運輸相が、副首相のコメントとして伝えた。マラッカ海峡で頻繁に起こる海賊問題の解決は周辺国の長年の大きな課題となっている。副首相は、「海路と港湾の安全確保に数十億ドルを充てる必要がある」と強調。具体的には、海賊に奪われた船籍の位置を追跡する「海洋電子高速テクノロジー」の導入などを指摘した。
(2003年10月7日 NNA)
 
マ海峡の安全確保には国際連携が不可欠=日本財団・曽野会長インタビュー
 日本財団が、マラッカ海峡協議会を通じてマラッカ海峡の航行安全確保のため、航路標識の設置・補修作業など、これまで総額120億円以上を支援していることはあまり知られていない。今月インドネシア政府への設標船引渡しのため、バタム島を訪れた曽野綾子・日本財団会長に話を聞いた。
−マラッカ海峡の航路安全確保に関する日本財団の活動は知られていないが。
 私はキリスト教徒なので、「右手のしていることは、左手に知らせるな」という自分がやっていることを人に知らせない美学はとても評価する。だが、それは日本政府の場合。日本財団は競艇の売上金の3.3%を資金源としており、これは日本の国民のお金とも言える。だから、1円たりとも無駄にせずに、日本のためになり、日本が胸をはれて、相手の国にためになることに取り組んでいるということを伝えるのに、広報は大事だと思う。
−海峡の安全確保に向けた国際的な連携の必要性について。
 国際連携なしでは、安全確保はできない。例えば、点検とか船の検査とか、シンガポールでやれるならシンガポールでやればよい。日本でなければだめなことは、日本でやるというようにワークシェアリングするべきだ。ただし、私はちょっとそれに愛国心を込めて欲しいと思う。愛国心というと、なぜか今の若者はすぐ戦争だと思ってしまうが、愛国心というのは鍋・釜と同等の必需品だ。子供の時代まで経済的にも政治的にも自由を保つには、愛国心を持つべきだと思う。1つ時代前の愛国心を狭量とすれば、愛国心というのは自分の国だけではなく、周り全体が良くなることで自分も良くなることだと思う。
−深刻化する海賊事件などの問題の根本原因について
 悪いことが起こる原因は貧困。それと教育が大事だと私個人は思う。日本財団は、どこかに工場を建てるという援助はできないが、全体のレベルが上がるようにして貧困がなくなれば強盗とか泥棒とか犯罪は起きなくなる。泥棒をなくすために、教育は大事だが、教育だけでは、私が一昨日まで行っていたアフリカの国々のような、貧困だからモノを盗むという状況は解決できない。貧乏というのは、今晩食べるものがないこと。今晩食べるものがなかったら、3つ選択肢がある。その1つはすきっ腹抱えて寝る、1つは物乞いをする、最後の1つは盗みをするというもの。それ以外の選択肢はない。
(2003年10月14日 時事速報シンガポール)
 
テロリストは海上での襲撃作戦に備えて、船員を誘拐し船の操縦法を習得
 イージス国防サービス社の最新の報告によると、自爆テロが船を襲撃するかもしれないし、テロリストが船をハイジャックし、港付近のオイル・タンカーに激突するかもしれない。
 今年3月26日のスマトラ海岸沖で起きた、ケミカル・タンカーのデウィ・マドリム号襲撃事件は、テロリストが船の操縦法を習得しようとするために企てたことだった。
 10人の海賊がスピードボートから船に乗船し、機関銃と刀で武装して、およそ1時間にわたって速度を変えながら、操船した。海賊は船長と一等航海士を連れて、その船から姿を消した。二人の男たちは、いまだに行方不明で、犯人から身代金の要求もされていない。イージス国防サービス社は、船員誘拐事件は、海賊が海上での襲撃作戦をしかけるための専門的技術を身に付けるのが狙いで行ったのではないかと見ている。それを物語る他の証拠として、アブ・サヤフ反乱勢力が誘拐した潜水インストラクターに、潜水法を彼らに教えるように要求している。
 何ら明らかな理由もなく、海賊たちがタグボードを強奪する事件がおよそ10件にも上がっている。
 イージス国防サービス社は、船舶の行き来の最も激しい航路の一つであるマラッカ海峡が、テロリストの標的になるのではないかと推測している。
(2003年10月16日 ストレート・タイムズ)


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