日本財団 図書館


■フィリップス水道(Phillip Channel)からバツ・ベルハンティ岩に至る海域(図II-8参照)
 シンガポール海峡フィリップス水道からバツ・ベルハンティ岩に至る海域は、マ・シ海峡通峡船舶にとって最も危険かつ困難な海域である。この海域の東航航路内には、深喫水船やVLCCが通航する深喫水航路が設置されているが、その深喫水航路の最狭部はタコン・ブイ付近であり、航路幅は僅かに600m弱程度となっている。また、航路内といえども、水深が21.5mや21mの浅瀬があり、これらの浅瀬を避けて航行する必要がある。
 
II-8 フィリップス水道からバツ・ベルハンティ岩に至る海域
 
タコン・ブイ
注:深喫水航路の最狭部であり、手前のブイから奥の島までの距離は約600mである。島にはタコン灯台が見える。ブイの右側の海面は少々白っぽくなっており、強い潮流があることをうかがわせる。
 
バッファロー・ロック灯標
 
■ベドック灯台沖(Bedok Lighthouse)(図II-9参照)
 シンガポール海峡のベドック灯台沖の東航航路内に水深16.7m〜19.1mの浅瀬がある。
 
II-9 ベドック灯台沖
 
■ルメニア・ショール(Rumenia Shoal)(図II-10参照)
 シンガポール海峡の分離通航帯の東側出口付近は遠浅の海域であり、東側出口の北側には、最小水深5.2mのルメニア・ショール(Rumenia Shoal)がある。更にその北東側にも最小水深6.4mイースタン・バンク(Eastern Bank)がある。また、ホースバーグ灯台の南側海域は、水深10m代の浅瀬が点在している。
 
II-10 ルメニア・ショール
 
船底下に定められた余裕水深
■国際海事機関(IMO)が採択した国際ルール(マラッカ海峡及びシンガポール海峡の通航に関する規則)では、常時3.5mの船底下余裕喫水を保つ必要がある。
 
II-11 船底下余裕喫水(UKC)
 
■シンガポールは、当初、2.6mのUKCを主張し、インドネシアは、4.6mを主張した。1970年代当時、シンガポールは既に世界第3位の石油精製基地になっており、マ・シ海峡経由でどの程度の原油が当該精製基地に輸送されてくるのかが非常に大きな関心事であった。シンガポールとしては、できるだけ大きな原油タンカーを通航させることに利益を見出し、2.6mの主張を行った。一方、インドネシアは、事故の潜在的可能性を憂慮し、4.6mの主張をした。このような主張の対立は、両者が譲歩するかたちで、1977年のアセアン・マニラ会合の機会を利用した沿岸3カ国外相会談において3.5mに決着した。
 
 マラッカ海峡の最狭部においては強い潮流が観測されており、これにより、高さが4〜7m、長さが250〜450mのサンドウェーブ(Sand Wave)が海底に発生します。
 
サンドウェーブ(Sand Wave)
■サンド・ウェーブとは、流れの強い海域の海底に、海底の砂粒が流れによって運ばれ堆積する現象で、海峡部では海峡中心部の流れの強すぎる所では存在しないが、海峡両端入り口付近などの、強い流れから比較的弱い流れに変る海域の砂の海底に発達し、砂州や砂堆の上にも大小さまざまな砂の波として存在することや移動・変形していくことが知られている(海上保安庁水路部)。
 
 太平洋戦争中に沈められた商船や軍艦、海難事故により沈没した船舶がいまだに放置されており、航路障害物となっているものもあります。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION