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8月13日(金)
本日のスケジュール・内容
1)Dr. Sumana Baruaのハンセン病の講義
2)総括ミーティングI
3)総括ミーティングII
4)フィリピン出国、日本帰国
 
1)Dr. Sumana Baruaのハンセン病の講義
 今日は朝からBarua先生にWPROの図書館と売店に連れて行っていただいた。みんな売店でWHOグッズを買った。これはいい記念になりそうだ。
 その後ホテルヘ戻り、佐藤先生同席のもと、9日から延期になったWPROのLeprosy Elimination Programについての講義をBarua先生から受けた。先生はこの後に控えた総括ミーティングのことを考えて簡潔な講義をして下さった。
 先生はWPROのハンセン病対策プロジェクトについてと西太平洋諸国でのハンセン病の現状にプラスして、日本のハンセン病の歴史についても話して下さった。先生がおっしゃるには、ハンセン病に対するスティグマはアジアの国々でも依然として残っているが、日本はスティグマが一番強い国だそうだ。その理由として、日本では一度療養所に入ると実家に戻ることが難しいこと、ハンセン病に対する基本的な知識が不足していることを挙げられた。その原因には、佐藤先生も付け加えられたことだが、日本独特の文化的背景が根底にあるそうだ。その意味でもBarua先生は、ハンセン病とそのスティグマの歴史を勉強することが重要だとおっしゃった。 (文責:坂上)
 
Barua先生の講義
 
2)総括ミーティングI
【テーマA: 日本の援助は必要か、何のためにするのか】
 まず、3グループに分かれ上記の論点で40分間話し合った。その後30分間で各グループの代表者による発表(3分)、質疑応答を行った。
 
司会・進行:山道
1グループ:石井・遠藤・田名・名倉
2グループ:稲田・大渕・佐野・野中
3グループ:上原・坂上・坂口・土居・横田
 
【1グループ】
1. 援助が必要である理由
(1)日本の国益のため
・日本は他国への相互依存が強く、今後資源や人力が枯渇していくことを考えるとその必要性は増すと思われる。
・援助は予防外交にもなる。世界の秩序を守ることは自国を守ることに繋がる。
(2)日本が戦後に受けた援助を還元する必要性から
(3)人道的観点
 苦しんでいる人を見過ごせないのは人間として自然である。
(4)世界資源の平等性
 限りある資源は地球市民で公平に分配する義務がある。環境・人口・食糧問題など地球全体の共通の問題に立ち向かうためにも援助は必要である。
 
2. 援助が必要でない理由
(1)他国の文化・経済状況の破壊
(2)自国の経済事情
 日本は援助をするほど自国に余裕があるのか疑問である。
(3)現在の援助のあり方への疑問
・自助努力支援型援助のため、援助金の内容が世界に対して不透明である。
・日本の援助はアジアの近隣諸国に偏っている。→予防外交という視点に立てば周辺諸国へ重点的になるのは当然である。
・援助国数が多く、外交や政策、人事などに利用されている。
 
3. これからの援助のあり方
(1)心のベースは人道的観点で携わる
(2)外務省などの組織改善、GO・NGO・WHOの連携など援助のハード、ソフト面共に改善していく
(3)達成目標を明確にする
(4)プロジェクト終了後のsustainabilityを大切にする
 現地でのニーズやプロジェクト維持のためのコストも考慮する。
 
【2グループ】
1. 援助が必要でない理由
(1)現在の途上国への援助は大企業や政府とつながっている。援助金の多くが賄賂として消える事実があり、第3世界からの収奪という見方もできる。結果、相手国内の貧富の差や南北格差を拡大させてしまう。
(2)途上国に援助依存性が生じ、自助努力を妨げ、その国の経済発展を妨げる。
(3)援助を受ける国の文化を破壊する。また、本当に援助が必要とされているのかは分からず、幸せの押し付けになっている可能性もある。
 
2. 援助が必要である理由
(1)世界の国の一員として、人道的観点から必要である。
(2)日本は富を搾取している側であり、その関係は援助の有無によって変わらないだろう。途上国が自力で発展していくのは難しく、先進国との格差はますます拡大してしまう。Global economyに加わってしまえば、それを自覚せざるを得ない。
 援助は全員の幸福度を上げることで、搾取される側である途上国の人々の不満を和らげている。デモや先進国への反対運動、自国の内乱やテロといった形で不満が爆発しないためのガス抜きとも考える。
 その中で医療・保健の援助と言うのは‘健康’という人々に共通の大切な要素に関わるものであり、感謝もされやすい分野と言える。
 
3. 結論
 援助は必要である。しかし自助努力や自力更生、そして、持続可能な経済発展を目指していくべきである。
 
【3グループ】
結論:援助は必要である。
 人道的な観点から何らかの行動は大切である。その上で、より良いものにするために方法を考えていくことが重要である。
 
1. 現在の問題点
(1)本当に援助を必要とする貧困層からのニーズが得られていない。貧困層を支配する側からの要請による援助である。
(2)貧困層の人々は何が必要かを考える術や、声をあげる術を知らない。
 
2. 解決法(援助の目的と方法)
 貧困層の人々からニーズが生まれてくるようにする。援助が終わっても続くようなものにする。
→貧困層の人々自身が自分たちの生活をどうしたいのかについて考える機会を与える。
 ニーズをアピールする術を教える。
→貧困層に対する教育。
 内政干渉と言わせない強い意志をもった行動が大切である。
 
【質疑応答】
Q. グループ2に対して:貧しさへの不満がテロに結びついた例をあげて欲しい。その不満が全く関係のない他国に及ぶ形で爆発することはあるか。
A. 具体的にはフィリピンのNPAやペルーのセンデロ・ルミノソ、その他植民地での反乱やゲリラの活動など数多く見られる。また全く関係のない国、というのは現代社会で存在しないのではないだろうか。
 
Q. グループ1に対して:日本の援助がアジアに集中していることに批判もあるがどう考えているのか。
A. アメリカはアフリカ諸国へ、日本はアジア諸国へ、ヨーロッパはヨーロッパへというように、地理的な条件から援助先にある程度の住み分けができているのは良い面もあると思う。つまり、関わりの強い周辺諸国に対しての援助はその地域の秩序を保ち、結果的に自国の安全をある程度保証することとなる。それが援助する側の国益であり、発表では予防外交と表現した。
 
【Dr. Baruaからの総評】
 JICAのホームページなどを見て、援助の目的や現状といった政府の見方を勉強して欲しい。またNGO団体のホームページを見て、政府への批判的な見方も勉強して欲しい。このようにしてお互いが基本的なことを知った上で、議論をすると良いだろう。 (文責:野中)
 
熱い議論が繰り広げられた。


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