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15:45〜17:45 フリーディスカッション 〜国際協力、公衆衛生活動を中心に〜
座長:国立保健医療科学院院長  篠崎英夫 先生
パネルメンバー:
国立国際医療センター国際医療協力局局長  北井暁子 先生
厚生労働省大臣官房国際課国際協力室室長  福田祐典 先生
国立国際医療センター国際医療協力局派遣協力第一課課長  建野正毅 先生
国立国際医療センター国際医療協力局計画課課長  石川典子 先生
関東中央病院呼吸器アレルギー科(フェローOG)  吉川理子 先生
 
北井先生:
 現在日本が行っている国際交流プロジェクトはどのようなものか、ラオスでの活動を基に作成したビデオ資料を用いて説明された。日本の協力によりラオスでは2002年より、保健省など中央を包括的に強化し、省内のつながりを持つことで子供の保健サービス強化を狙うKids Smile Projectを開始。県・郡保健局で無線を用いた情報交換や巡回診療などのシステムを確立させた。また、小児疾患の診断技術向上を目指す取り組みや、小学校での保健教育を実施。その一方で井戸掘りなど水の確保、電気を引く活動を地域住民と共に行うことにより住民の健康に対する意識向上を図っている。こうした活動に対し日本はラオスに助言やサポートを心がけ、しかもラオスからも学ぶという関係を目指している。
 このように今年10年目となる国立国際医療センターは、国として国際協力を行う拠点施設に位置づけられ様々なプロジェクトを実施してきた。現在もアジア・アフリカ18カ国でプロジェクトを試行中とのことである。
福田先生:
 国際協力室はJICAを通じた2国間の国際協力やWHO、ILO等の国際機関を通じた多国間協力の国内セクターとしての部署で、現場の仕事がスムーズに施行されるよう計画を立て調整、進行管理の仕事をしている。
 WHOの説明としては、全ての人々が可能な最高の健康水準に到達することを目的とした国際機関であり、具体的な活動としては感染症・母子保健対策、医薬品・食品の安全対策、健康増進対策が中心。近年は生活習慣病対策も重要な使命である。その役割は政策・規制枠組み作り、技術支援の2点である。またJICAと厚生労働省の関係は、JICAの政策の大きな枠組みを決めるのが外務省・厚生労働省の役割であり、具体的な取組みはJICAが行うという関係にある。
 最後に、最近の国際協力は全体の大きなプランの中で皆が役割分担して協力し合い、途上国への支援を行うという流れになっており、相手のことを理解する能力、自身の専門性を発揮できる能力、適切なコミュニケーション能力に磨きをかけていく必要があると強調された。
建野先生:
 開発途上国を考える際に「日本の常識は途上国の非常識」という考えで望むことが重要。途上国の保健医療状況はその背後に様々な社会背景が関与していること、病気の背景に栄養不良、水質・劣悪な環境など医療では解決できない要素が多いという認識を持つことが大切。加えて途上国では保健医療協力のみではなく開発協力の概念が必要。今日では治療中心・研究中心から予防中心・PHC中心の協力への移行が見られ、従来の考え方では経済格差は縮まらないとして、貧困層に対する協力に焦点が絞られている。
 また日本のODAのあり方は特徴的で、技術協力は役務提供型(要請に従い解決)から自助努力サポート型(現地人が自身で解決するのをサポート)への転換に力を入れている。更に途上国の問題解決を、先進国を触媒として行う触媒型技術移転、つまり途上国で解決能力を持つ人々が、我々の協力により自国の問題に目を向け問題を解決するようになる事を目的とする方法へと変化してきていると述べられた。
石川先生:
 過日、ハーバード大学での研修を終えて帰国した。そこで学んだ公衆衛生大学院の講座「武見プログラム」について説明をしたい。このプログラムは毎年10名がリサーチフェローとして在籍。主な課題は「自国の保健医療資源の効率的な配分について」であり、各研究者は講義や専門家のアドバイスを基に自身の研究課題を解決し、自国に帰って実践で役立てていくことを目的とする。研究者はケニアや韓国、インドなど様々な国から集まっており、希望すれば如何なる専門家とも面識を持つことが出来る。非常に有意義なプログラムであるから、学生の皆様も心に留めておかれるとよいと述べられた。
吉川先生:
 フェローで何を得たのか、そして今どういう人間になっているか、8年後の姿の一例として参考にしてもらえるとよいと思う。得たことは大きく4つ。「異文化理解」「語学力」「専門性を持つ」「仲間を作る、コミュニケーション能力を持つ」であり、特に専門性に関しては絶えず自身の中で問いかけてきた。
 国際保健の世界に入るときには、まず興味を持って色々なプログラムに参加すること。次の段階では、それを専門にするかどうかを考えること。実際に国際問題に関わりたいならどのように関与するか、具体的な理想像を自身の中に描き出すことが必要だ。このフェローの特徴は実際に国際保健の現場で活躍している方々、OB・OGの生の声を聞けることだと思う。まずは青焼きでも自身の将来像を描き、そこに進むために不可欠なステップについてしっかり情報収集をすることが大切。けれどもその反面、国際保健とは行動力さえあればいつでも飛び込んでいける世界でもある。継続した興味と青焼きを持っておくことを念頭においてほしいと述べられた。
篠崎先生:
 これまでの話をまとめると、国際保健を考える際に第一に、言葉はかなり大きな要素になる。「読む・聞く・話す・書く」の順に、どの分野に行くにしても今から勉強しておくこと。それから進む分野も色々あるので自分の向いている分野を考えて選ぶのがよい。第2点として専門性を持ってからでも国際保健に入ることが出来ることだと述べられた。
 
質疑応答
「国際協力をする際に他国の機関との関わり方は?」
 日本単独で行うことも、他国と強調して国際協力をすることもある。他機関と情報交換を行い、現場の状況に応じてそれぞれの役割を決め活動を行うという形が、現在日本の取っている主なスタンスである。
 
「国際協力における資金と人力の配分は?」
 ODAで一定の方針に沿って決めている。つまり全体の大まかな政策、国別の政策、現場のセクターとしての対応、現地からの要請という包括的な計画書が基準になっている。予算の配分は後付けになり、偏りのないよう調整される。
 
「自助努力サポート型援助をする際に、内政干渉の問題は起こらないか?」
 どのように途上国に入っていくかが大切。異文化に入り込む際に、最初は警戒されるので、信頼関係を築くことから始める。信頼関係が出来れば内政干渉の問題は起こらない。
 
「プロジェクト実施中に、資源配分のチェックや見直し等は行われているか?」
 チェックは熟考して行っている。これまで何度も失敗を重ねてきたが、現在努力中である。欧米は大病院志向で次々と資金を出すのに対し、日本の自助努力型サポートは理解されにくく誤解や衝突を招くことが多い。しかし、数年経つと感謝されることがほとんどである。
 
「女性が国際協力をする際の利点と欠点は?」
 国際協力の現場では女性のhealth care problemが多いため、女性の目で見たほうが有利かもしれない。しかし男性、女性それぞれの切り口で国際協力の場に入り込んで、両方の見方を理解しないと相手国は変わらないと思われる。
 結婚、妊娠、出産は女性のほうが縛りは大きい。男性も同様だが、仕事とlife planningをある程度リンクさせないと悲惨。何を優先させるかの問題になる。 (文責:田名)
 
懇親会にて
 
8月3日 今日の一言
 
石井:国立国際医療センターでは、全国から集まった国際医療協力に興味のある医学生や看護学生と知り合えてとても嬉しかった。多磨全生園では国外研修の仲間と自己紹介し合い、仲良くやっていけそうな気がした。
稲田:待ちに待ったフェロー、目一杯学び、楽しみ、将来に活かしていきたい。
上原:多くの人に出会い、それぞれがどんなことを考えているかを知ることができてよかった。11日間みんなで楽しくやっていこう。
遠藤:こんなに魅力的なメンバーと出会えるとは想像していなかった。国際保健にいつも私が魅せられてしまうのは、そこにいつも素敵な人達との出会いがあるからなのかもしれない。
大渕:一日中聞き応えのある講義で少々飽和状態かもしれない。ちゃんと消化したい。
坂上:今日は、世界で活躍する先生方の話を聞いてモチベーションが高まった。参加者のみんなもすごくて、刺激を受ける旅になりそうだ。これからが楽しみ。
坂口:異なるバックグランドの人たちと一度にたくさん知り合いになれて、大きな喜びの一日となった。このプログラムを通じて、互いの持ち味を引き出し合いたいな。
佐野:本日は皆と初対面ということもあり、若干緊張していたが、すぐに打ち解けることができた。皆、アクティブで様々な考えを持っており感心した。自分の若い頃を思い返すと非常に恥ずかしい。
田名:国内研修第1日目。先生方の講演を聞き、「国際協力」の一言の中には、多くの人達が関与し、苦労して、成り立っているものだと知りました。国外メンバーも皆アツイ人が揃っていて、楽しくなりそう!初日から深夜まで語り合いました。
土居:"Think globally, act locally" 実際に職員の方から聞け、将来の指針にしたいと思った。日本人の品格についても考え直してその良さを再確認したい。
名倉:日付が4日に変わり、やっと1日目終了。みんなちゃんと英語ができるんですね。すごいです!私もこの11日間でがんばって英語力を伸ばします!!よろしくお願いしますね。
野中:国際協力のこと、自分の将来のことなど分からないことや迷っていることがたくさんあります。この研修を通じて、様々な生き方や考え方に触れ、これからにつなげていきたいと思います。今日はそれぞれの専門を持つ国際協力の第一人者の先生方からお話を伺い、‘専門’を持つことの重要性を痛感しました。
山道:今日の出会いが宝物になりますように。10日間しっかり磨いていくで!
横田:色々な先生方の貴重なお話を聞くことができた1日でした。一緒に11日間過ごすメンバーとの初顔合わせで少し不安だったけれど、楽しい人たちがいっぱいでこれからが楽しみになりました。


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