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環境教育テキスト 瀬戸内海?里海学入門

 事業名 瀬戸内海沿岸域における浜辺の観察教室による実践環境教育
 団体名 瀬戸内海環境保全協会  


6.6 環境ホルモンの影響 ―海の動物を襲う―
 環境ホルモンとは、環境中に存在する化学物質の中で、生物体内に取り込まれると内分泌系に異常を起こす物質のことで、正確には「外因性内分泌攪乱(かくらん)化学物質」と呼ばれます。環境ホルモンは生物の体内でホルモンのレセプター(受容器)にホルモンと誤認されて結合することで、生殖に関連する様々な異常を生じさせます。例えば、雄の体内に環境ホルモンが侵入すると、雌化・精子数の減少・生殖器の異常などを起こします。雌の場合もホルモンのバランスが崩れて、雌特有の病気の発生が助長されます。現在、TBT(トリブチルスズ)、ダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、ビスフェノールなどの人工化学物質約100種が環境ホルモンの働きをするとみなされています。
 かつて瀬戸内海を航行する船の船底には、カキなどが付着して船速が低下するのを防止する塗料として、TBTが大量に用いられていました。TBTはイボニシやレイシガイなどの巻き貝などの雌を雄化して、輸精管が輸卵管を閉鎖するため、生殖不可能にします。イボニシの場合、TBT濃度が海水1リットル当たり10億分の1グラムで影響が出ます。
 TBTは、食物連鎖を通じて巻き貝からムラサキイガイ、さらにスズキなどにも影響を与えます。そして魚を食べる人間にも様々な影響を与えることが懸念されています。1990(平成2)年にTBTの酸化物であるTBTO(塩化トリブチルスズ)の製造と使用が禁止されましたが、酸化物以外のTBTは依然として使用されていて、その影響が懸念されています。
 環境ホルモンによる海洋生物の被害としては、南カリフォルニアのチャンネル諸島で1960年代から1970年代にかけて、カモメの雄に比べて雌の数が異常に増えて、産卵数が激減し、その個体数が急速に減少したことが挙げられます。また、1988(昭和63)年には北海やバルト海で2万頭近くのゼニガタアザラシが斃死しました。直接の死因はウイルス感染でしたが、間接的には環境ホルモンを摂取したゼニガタアザラシの免疫力が低下したためであると言われています。
 
正常なイボニシの雄(左)、正常なイボニシの雌(中)、雄化したイボニシの雌(右)
(国立環境研究所、堀口敏宏博士提供)
 
6.7 底質 ―汚染物質を貯めこむ底泥―
 海底泥の性質を表す言葉が底質(ていしつ)です。海底泥中に含まれる泥の割合を示す含泥(がんでい)率は、その値が高いほど有機物などの汚染物質が蓄積されやすいことを示します。含泥率が高いということは、その場の海底上の流速が遅く、一端堆積した汚染物質が再び巻き上げられて、他の地点に輸送される可能性の低いことを表しているからです。例えば、有機物の多いことを示す高いCODの分布は、高い含泥率の分布とほぼ一致しています。
 
瀬戸内海の含泥率分布(せとうちネットより)
 
瀬戸内海の底質のCOD分布(せとうちネットより)
 
 瀬戸内海の底質中の全リン・全窒素濃度の高い海域は大阪湾奥、播磨灘、広島湾奥、周防灘西部などですが、これらの海域は赤潮の多発海域(6.3節)とほぼ一致しています。このことは、海底からのリンや窒素の溶出(ようしゅつ)が赤潮発生の一因となっていることを示唆しています。
 
瀬戸内海底質中の全リン濃度(せとうちネットより)
 
瀬戸内海底質中の全窒素濃度(せとうちネットより)
 
 陸からのリンや窒素の負荷を止めると、海水中のリン・窒素濃度は速やかに低下しますが、底泥中のリン・窒素濃度は容易には低下しません。そして、夏季に海底直上(ちょくじょう)の溶存酸素濃度が低下すると、底泥から溶出するリンや窒素が増加して、水中のリン・窒素濃度が上昇するのです。そのために、汚染した底泥の改善には長い時間が必要となります。
 
6.8 水質規制 ―海水をきれいにするための法律―
 1972(昭和47)年の播磨灘における大規模赤潮(漁業被害71億円)の発生を直接のきっかけにして、瀬戸内海における海洋汚染の進行をくいとめるために、議員立法として、1973(昭和48)年に「瀬戸内海環境保全臨時措置法」(通称「瀬戸内法(せとうちほう)」)が公布されました。5年後の1978(昭和53)年には、この臨時措置法は「瀬戸内海環境保全特別措置法」となって、恒久的な法律として現在に至っています。
 この法律の主な目的は
1)陸からのCOD負荷量を半減する、
2)沿岸の埋め立ては厳に抑制する、
というものです。
 1)に関しては大規模事業場からのCOD負荷量の総量規制が効果を発揮し、瀬戸内海に対するCOD負荷量は1968(昭和43)年当時約2,000トン/日あったものが、1979(昭和54)年には約1,000トン/日とほぼ半減され(6.1節参照)、赤潮の発生件数も1976(昭和51)年には299件/年だったものが、1988(昭和63)には117件/年と約1/3にまで減少しました(6.3節参照)。
 しかし、2)に関しては「公益性の高いものは例外とする」という規定があるため、この法律施行後も空港、港湾、廃棄物最終処分場などの埋め立てが続き、瀬戸内海の環境回復に悪い影響を与えています。
 
瀬戸内海における埋め立て免許面積の変化(せとうちネットより)
 
 この節の参考文献として
(社)瀬戸内海環境保全協会(2004)『生きてきた瀬戸内海−瀬戸内法30年』1200円をお薦めします。


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