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環境教育テキスト 瀬戸内海?里海学入門

 事業名 瀬戸内海沿岸域における浜辺の観察教室による実践環境教育
 団体名 瀬戸内海環境保全協会  


6.3 赤潮(あかしお)の発生 ―海水の変色―
 赤潮(あかしお)とは、海水中で増殖した植物プランクトンによる海水の変色現象を表しますが、赤潮を起こすプランクトンの種類によって海水は赤色、桃赤色、褐色、緑色など様々な色に変色します。
 
 通常、海面近くには多くの種類の植物プランクトンが、それぞれ数個体〜数十個体/ml程度生存しています。ところが、赤潮状態になるとわずか1種類のプランクトンのみが優占的に増殖し、その個体密度も数千〜数万個体/mlに達します。瀬戸内海で最初に注目された赤潮は、1957(昭和32)年に周防灘北部の徳山湾で発生した渦鞭毛藻類(うずべんもうそうるい)ギムノデイニウム・ミキモトイによる赤潮で、湾内の魚介類の斃死(ヘいし)を伴ったことで社会的な事件となりました。
 
ギムノデイニウム・ミキモトイ
 
シャトネラ
 
 赤潮の中にはきれいなピンク色になるヤコウチュウ赤潮のように、周囲の生物に何ら悪い影響を与えない赤潮もありますが、多くの赤潮は魚の鰓(えら)の粘液細胞を破壊したりして、魚を斃死させて、養殖漁業などに大きな被害を与えます。1972(昭和47)年に播磨灘で発生したラフィド藻類シャトネラ赤潮は、養殖ハマチの大量斃死を起こし、その被害金額は71億円にも達しました。(この赤潮が、瀬戸内海環境保全臨時措置法(1973(昭和48)年)制定のひとつのきっかけになりました)。
 
 赤潮は、基本的には海水中の窒素やリンといった栄養塩の濃度が上昇して、富栄養化することにより発生します。瀬戸内海における赤潮の発生状況をみると、1976(昭和51)年の299件までは年々増加の傾向にありましたが、それ以降は減少しています。しかし、現在なお毎年100件前後の赤潮の発生が確認されており、2002(平成14)年にも89件の赤潮発生が確認されました。
 
瀬戸内海の赤潮発生件数(せとうちネットより)
(拡大画面:42KB)
 
 瀬戸内海における赤潮の発生海域の変化は下図に示すようです。
 
昭和50年の赤潮発生海域(せとうちネットより)
 
平成14年の赤潮発生海域(せとうちネットより)
 
 1975(昭和50)年と比べると、2002(平成14)年の発生海域はかなり狭くなっていますが、大阪湾、播磨灘、周防灘は依然として赤潮発生海域で、紀伊水道や豊後水道に発生海域が広がっていっていることが注目されます。
 
6.4 貧酸素水塊(ひんさんそすいかい) ―貝や魚を襲う死の海水―
 夏季、瀬戸内海で成層が安定している時期に、上層で植物プランクトンが増殖すると、植物プランクトンは死滅後デトリタス(生きていない懸濁有機物(けんだくゆうきぶつ))として、下層に沈降します。下層に沈降したデトリタスは、バクテリアにより溶存酸素(ようぞんさんそ)(海水中に溶け込んでいる酸素)を消費しながら分解されます。上層での基礎生産が多いほど、下層への懸濁有機物沈降量は多くなり、下層での溶存酸素消費量は多くなります。
 一方、発達した成層構造は、上層の豊富な溶存酸素の下層への輸送を妨げます。下層には光が届かないので、植物プランクトンは光合成が出来なくて、溶存酸素は生産されません。したがって、有機物の分解に伴って下層の溶存酸素濃度は減少を続け、やがて、生物の生息に不適な2.5ml/lより低い濃度となります。このような状態を貧酸素と言い、貧酸素となった水の塊を貧酸素水塊(ひんさんそすいかい)と呼びます。
 貧酸素水塊の中では、海洋の遊泳生物は生存できませんし、貧酸素に比較的強いと言われる底生生物(ていせいせいぶつ)も長期間その中にとどまると死滅してしまいます。
 貧酸素化がさらに進むと、やがて溶存酸素濃度が0ml/lである無酸素水塊(むさんそすいかい)が発生します。無酸素水塊中では有機物の分解に海水中の硫酸が利用されるようになり、いわゆる硫酸還元(りゅうさんかんげん)状態となります。硫酸還元によって生物にとって有害な硫化水素が発生しますが、この硫化水素を含む底層の無酸素水塊が風などにより浅瀬に湧昇してきて、海水が青白く見える現象が「青潮(あおしお)」です。
 青潮は、夏の終わりに東京湾や三河湾で多く発生しますが、瀬戸内海の大阪湾北部でも時々発生します。青潮が発生すると、海水中の溶存酸素がないために砂浜の貝や小魚が斃死します。
 
瀬戸内海の底層の溶存酸素濃度分布(永井、1996)IVである貧酸素水塊が大阪湾奥、播磨灘北部、広島湾奥、周防灘南部、別府湾奥に発生しています
 
6.5 透明度(とうめいど)の変化
 ―透明度の低下は藻場を消滅させる―
 きれいな海水は透き(すき)通っていますが、汚い海水は濁っています。水の透き通った度合いを表す指標が「透明度(とうめいど)」です。透明度は直径30cmの白色の円盤を海中に沈めて海上から見えなくなった深さで定義されます。視力の良い人と悪い人では観測された透明度の値が異なるなどの問題はありますが、簡単に観測出来るので、古くから多くの観測データが蓄積されていて、海域環境の水質の歴史を知るには良い指標としてよく用いられています。
 透明度は、海水中に懸濁物質が多い場合にはその値が小さくなるので、海水中の濁りの多さの指標となります。
 植物プランクトンが光合成を行うためには光が必要です。透明度が減少した海域では植物プランクトンが光合成できる水の深さが浅くなり、有機物の生産量が少なくなります。通常、植物プランクトンは海面の光量が1%になる深さまで光合成が可能で生息可能です。したがって、この水深は「補償深度(ほしょうしんど)」と呼ばれています。透明度のおよそ3倍の深さが補償深度となります。
 瀬戸内海の透明度は大阪湾奥などでは2m程度になることもありますが、豊後水道や紀伊水道では15mもあります。赤潮などで植物プランクトンが増殖すると、透明度は1m以下になります。また透明度は、植物プランクトンが増殖する夏季に低下し、植物プランクトン密度が低下する冬季に上昇するという季節変化をします。
 透明度が減少すると、海藻などが成育できる海域が狭くなります。近年の瀬戸内海における藻場(7.10節参照)面積の減少には、瀬戸内海全域における透明度の減少が影響していると言われています。
 水産用水基準によると、「魚類その他の水産生物の正常な生息と繁殖を保持し、漁業が支障なく行われる環境の透明度は年間平均5m以上で、最低でも2.5mは必要」とされています。
 
瀬戸内海の赤潮発生件数と平均透明度の経年変動


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